近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が企業経営の急務となる中で、基幹システムであるERP(Enterprise Resource Planning)を従来のオンプレミス型からSaaS(Software as a Service)型へ移行する動きが急速に拡大しています。「2025年の崖」への対策や、テレワークをはじめとする柔軟な働き方に対応するため、クラウドERPの導入を本格的に検討されている担当者様も多いのではないでしょうか。
しかし、いざリプレイスや新規導入を検討し始めると、「オンプレミス型と比べて具体的に何が違うのか」「ランニングコストやセキュリティ面でのメリットは本当にあるのか」「自社の規模に合った製品はどう選べばよいのか」といった疑問や不安が生じるものです。SaaS型ERPは、初期投資を抑え短期間で導入できる点や、常に最新の法対応・機能アップデートを享受できる点が大きな魅力ですが、一方で業務プロセスをシステムの標準機能に合わせる「Fit to Standard」の考え方が求められるなど、導入成功のためには正しい理解が不可欠です。
この記事で分かること
本記事では、SaaS型ERPの基礎知識から、オンプレミスとの比較、導入のメリット・デメリット、そして主要な製品タイプの選び方までを網羅的に解説します。結論として、SaaS型ERPへの移行は単なるシステムの置き換えにとどまらず、リアルタイムなデータ活用による経営判断の迅速化や、部門間の壁を取り払う全社最適化を実現し、企業の競争力を高めるための強力な基盤となります。ぜひ本記事を参考に、自社のDXを成功させるための最適なERP選定にお役立てください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、企業の基幹となるシステム選びは経営戦略そのものと言っても過言ではありません。従来、多くの日本企業で採用されてきた「オンプレミス型」から、インターネット経由で利用する「SaaS型」への移行が進んでいます。本章では、SaaS型ERPの定義から、オンプレミスとの決定的な違い、そしてなぜ今、中堅企業がSaaS型を選択すべきなのかについて解説します。
まず、ERPとSaaSそれぞれの言葉の意味を正しく理解しておきましょう。
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれます。企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理し、経営状態をリアルタイムに可視化するためのシステムです。会計、人事給与、販売管理、生産管理などの業務アプリケーションが統合されており、データが部門間でシームレスに連携される点が特徴です。
一方、SaaS(サース/サーズ)は「Software as a Service」の略で、ベンダーがクラウドサーバー上で稼働させているソフトウェアを、インターネット経由で利用するサービス形態を指します。利用者は自社でサーバーやソフトウェアを所有せず、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用します。
つまりSaaS型ERPとは、インターネットを通じて利用できるクラウド完結型の統合基幹業務システムのことです。自社でインフラを構築・運用する必要がないため、迅速な導入と運用負荷の軽減が可能になります。
SaaS型ERP(クラウドERPの一種)と、従来のオンプレミス型ERPには、コスト構造や運用面で大きな違いがあります。それぞれの特徴を比較整理しました。
| 比較項目 | SaaS型ERP | オンプレミス型ERP |
|---|---|---|
| インフラ構築 | 不要(ベンダーが用意) | 必要(自社でサーバー調達・構築) |
| 初期費用 | 安価(ライセンス料・設定費など) | 高額(ハードウェア・ソフト購入費など) |
| ランニングコスト | 月額・年額の利用料が発生 | 保守運用費、電気代、設置スペース代 |
| カスタマイズ性 | 低い(標準機能に業務を合わせる) | 高い(自社業務に合わせて開発可能) |
| 法対応・保守 | ベンダーが自動でアップデート対応 | 自社で改修・更新作業が必要 |
| 導入スピード | 数ヶ月〜半年程度 | 半年〜1年以上 |
オンプレミス型は、自社専用のサーバーにパッケージソフトをインストールし、必要に応じてアドオン開発(追加開発)を行うスタイルです。自社の独自業務にシステムを完全に合わせることができる反面、初期投資が大きく、法改正時のシステム改修やサーバーの老朽化対応など、運用保守の負担が重くのしかかります。
対してSaaS型ERPは、ベンダーが提供する標準機能を利用する「Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)」の考え方が基本となります。過度なカスタマイズを行わないため、導入期間が短く、常に最新の機能やセキュリティ環境を享受できる点が大きなメリットです。
特に年商100億〜2000億円規模の中堅企業において、SaaS型ERPへの移行が推奨される背景には、いくつかの切実な理由があります。
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題でも指摘されている通り、レガシーシステムを放置することは、将来的なデジタル競争力の低下に直結します。SaaS型ERPへの移行は、単なるシステムの入れ替えではなく、経営基盤をモダナイズし、持続的な成長を支えるための重要な経営判断と言えるでしょう。
従来、中堅企業や大企業がERP(統合基幹業務システム)を導入する場合、自社サーバーにソフトウェアをインストールする「オンプレミス型」が主流でした。しかし近年では、インターネット経由で機能を利用する「SaaS(Software as a Service)型」への移行が急速に進んでいます。
経営環境の変化が激しい現代において、システムが足かせにならず、むしろビジネスの成長を加速させる基盤となることが求められています。ここでは、オンプレミス型と比較した際のSaaS型ERPの具体的なメリットについて、コスト、機能性、セキュリティの観点から解説します。
SaaS型ERPの最大のメリットの一つは、導入時の初期コストを大幅に抑制できる点です。オンプレミス型では、サーバー機器の購入や構築、ソフトウェアライセンスの買い切りなど、多額の初期投資(CAPEX)が必要となり、これが導入のハードルとなっていました。
一方、SaaS型はサブスクリプション方式(月額または年額課金)で利用するため、初期費用を抑え、利用料を経費(OPEX)として処理することが可能です。これにより、キャッシュフローへの影響を最小限に留めながら、経営リソースをコア業務へ集中させることができます。
また、自社でハードウェアを保有しないため、サーバーの保守点検や老朽化に伴うリプレイス費用、専任のIT担当者の人件費といった「見えない運用コスト」も削減できます。コスト構造の違いを整理すると以下のようになります。
| 比較項目 | オンプレミス型ERP | SaaS型ERP |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高額(ハードウェア購入、ライセンス一括) | 安価(初期設定費、月額利用料のみ) |
| 運用コスト | 保守費用、電気代、人件費が発生 | 利用料に含まれるため追加負担なし |
| 財務会計 | 資産計上(減価償却が必要) | 経費処理(全額損金算入が可能) |
| コスト予測 | 突発的な障害対応などで変動しやすい | 定額制のため予算化しやすい |
ERPを長期運用する上で大きな課題となるのが、システムの陳腐化と法改正への対応です。オンプレミス型で過度なカスタマイズ(アドオン)を行っている場合、インボイス制度や電子帳簿保存法といった法改正のたびに追加開発が発生し、多大なコストと時間がかかっていました。
SaaS型ERPでは、ベンダー側が定期的にシステムをアップデートするため、ユーザーは特段の作業をすることなく、常に最新の法規制に対応した機能を利用できます。また、AIによる分析機能やUIの改善など、最新のテクノロジーも随時反映されます。
システムが陳腐化することなく、常に最新のベストプラクティスを享受できる点は、変化の速い市場環境において競争優位性を保つための重要な要素です。
働き方改革やBCP(事業継続計画)の観点からも、SaaS型ERPは優位性を持っています。インターネット環境とブラウザさえあれば、場所や端末を選ばずにシステムへアクセスできるため、テレワークや出張先からのリアルタイムな承認業務、経営数値の確認がスムーズに行えます。
「クラウドに重要なデータを預けるのは不安」という声もかつてはありましたが、現在は状況が異なります。主要なSaaSベンダーは、世界最高水準のデータセンターを利用し、24時間365日の監視体制、多重バックアップ、高度な暗号化通信など、一企業が単独で構築・維持するには困難なレベルのセキュリティ対策を講じています。
災害時においても、データは堅牢なクラウド上に保管されているため、自社オフィスが被災してもシステムダウンのリスクを回避し、早期の業務復旧が可能となります。
SaaS型ERPは、初期コストの抑制や導入スピードの速さなど多くのメリットを中堅企業にもたらしますが、従来のオンプレミス型とは異なる特性ゆえの課題も存在します。導入後に「想定していた運用ができない」といった事態を避けるためには、デメリットを正しく理解し、事前の対策を講じることが不可欠です。
ここでは、特に経営層やプロジェクト責任者が留意すべき「業務プロセスとの適合性」と「インフラ環境への依存」という2つの側面から、具体的な課題と解決策を解説します。
SaaS型ERP導入における最大のハードルは、カスタマイズの自由度が低いことです。従来のオンプレミス型ERPでは、自社の独自の商習慣や業務フローに合わせてシステム側を改修する「アドオン開発」が一般的でした。しかし、SaaS型は複数の企業が同一のプログラムを利用するマルチテナント方式が主流であるため、個社ごとの大幅な機能変更は推奨されません。
そのため、SaaS型ERPの導入においては、業務プロセスをERPの標準機能に合わせて変更する「Fit to Standard(フィット・トゥ・スタンダード)」というアプローチが前提となります。
これらは一見デメリットに映りますが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からは、属人化した業務を刷新し、グローバルスタンダードな効率的プロセスへと転換する絶好の機会でもあります。過度なカスタマイズはシステムの複雑化を招き、将来的なバージョンアップの妨げとなる「技術的負債」になりかねません。
対策として重要なのは、現場任せの導入にしないことです。経営層が「業務をシステムに合わせる」という方針を明確に示し、全社的な業務改革(BPR)として推進することが成功の鍵を握ります。独自性が競争力の源泉となっている業務領域と、標準化すべき領域を明確に区分けし、差別化が必要な部分には別途専用システムを連携させるといった判断も有効です。
| 比較項目 | Fit to Standard (SaaS型) | Fit & Gap (従来型/スクラッチ) |
|---|---|---|
| 業務への対応 | 業務をシステム標準に合わせる | システムを業務に合わせて開発する |
| 導入スピード | 短い(設定ベースで利用開始可能) | 長い(要件定義・開発・テストが必要) |
| コスト構造 | 初期費用を抑え、運用費で平準化 | 初期開発費が大きく、改修費も発生 |
| システム更新 | 自動更新で常に最新技術を享受 | 老朽化しやすく更新コストが莫大 |
クラウドサービスであるSaaS型ERPは、インターネット経由で利用するため、ネットワーク環境に依存するという不可避な特性があります。回線障害やプロバイダ側のトラブルが発生すると、システムへのアクセスが遮断され、受発注処理や会計入力などの業務が停止するリスクがあります。
また、社内LANで完結していたオンプレミス型と比較して、大量のデータを処理する際や、月末月初などのアクセス集中時にレスポンスが低下する可能性も考慮しなければなりません。
これらのリスクに対しては、物理的なインフラ対策と契約面での確認の両輪で対策を講じます。特に中堅企業においては、本社だけでなく工場や拠点の通信環境も見直す必要があります。モバイル回線を利用したバックアップ手段の確保や、オフラインでも一部機能が利用できる製品の選定なども有効な対策となります。
セキュリティ面については、自社でサーバーを管理するよりも、世界トップレベルのセキュリティ基準を持つメガクラウドベンダーの基盤を利用する方が、結果として安全性が高まるケースが大半です。通信の暗号化や多要素認証の徹底など、適切なアクセス管理を行うことで、クラウド特有のリスクは十分にコントロール可能です。
SaaS型ERPの導入を成功させるためには、自社の企業規模や解決すべき経営課題にマッチした製品を選定することが不可欠です。市場には多種多様なERP製品が存在しますが、それらは機能の範囲や対象とする企業規模によって大きく分類できます。ここでは、製品選定の指針となる主要な分類と、近年注目されている導入戦略について解説します。
ERP製品は、カバーする業務範囲によって「統合型(オールインワン型)」と「業務特化型」の2つに大別されます。
統合型ERPは、会計、販売、在庫、人事給与、生産管理など、企業の基幹業務を網羅的にカバーするシステムです。すべてのデータが単一のデータベースで管理されるため、マスタの一元化や部門間でのリアルタイムな情報共有が容易になります。経営層が全社の状況を即座に把握し、迅速な意思決定を行う「経営の見える化」を目指す場合に適しています。
一方、業務特化型ERPは、特定の業界や業務(例:会計のみ、人事のみ、販売管理のみ)に特化したシステムです。特定の機能において深さや使い勝手を追求している点が特徴ですが、全社的なデータ連携を行うには、個々のシステムをAPIなどでつなぐ必要があり、データの一貫性保持に課題が残る場合があります。
それぞれの特徴を整理すると以下のようになります。
| 比較項目 | 統合型ERP | 業務特化型ERP |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 基幹業務全体を網羅 | 特定業務に限定 |
| データ管理 | 一元管理(リアルタイム連携) | 個別管理(連携開発が必要) |
| 導入目的 | 全社最適化と経営情報の可視化 | 特定部門の業務効率化 |
| 導入期間 | 比較的長い | 比較的短い |
DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からは、部門ごとの個別最適ではなく、全社最適を実現できる統合型ERPの採用が推奨されます。Excelや個別システムが乱立している状況を脱却するには、統合型への移行が効果的です。
ERP製品は、想定している企業規模によっても機能やコスト感が異なります。年商数千億円以上の大企業向け製品は、多言語・多通貨対応や複雑な組織構造への対応など、極めて高度な機能を備えていますが、その分、導入コストや運用負荷が高くなる傾向があります。
一方で、中堅・中小企業向け製品は、必要な機能を標準化して提供することで、導入期間の短縮とコスト抑制を図っています。年商100億~2000億円規模の中堅企業が、身の丈に合わない大企業向け製品を導入すると、機能を持て余すだけでなく、設定の複雑さから運用が定着しないリスクがあります。
中堅企業においては、過剰な機能を省きつつも、成長に合わせてモジュールを追加できる柔軟なSaaS型ERPを選定することが重要です。
海外拠点を展開する企業において、近年主流となっているのが「2層ERP(Two-Tier ERP)」という戦略です。これは、本社と海外拠点で異なるERP製品を使い分ける手法です。
かつては、ガバナンス強化のために本社と同じ重厚長大なERPを全海外拠点に展開する「シングルインスタンス」が理想とされました。しかし、この方法は導入コストが膨大になりがちで、各国の法規制や商習慣への対応に時間がかかるというデメリットがありました。
そこで、本社(Tier 1)には高機能なERPを維持しつつ、海外拠点や子会社(Tier 2)には、導入が容易で柔軟性の高いSaaS型ERPを採用するケースが増えています。
この2層ERP戦略を採用することで、グループ全体のガバナンスを効かせながら、各拠点のスピード感を損なわない経営基盤の構築が可能になります。グローバル展開を加速させたい中堅企業にとって、SaaS型ERPを活用したこのアプローチは非常に有効な選択肢となります。
多くの企業において、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は喫緊の経営課題となっています。しかし、既存の基幹システムが複雑化・ブラックボックス化している状態、いわゆる「レガシーシステム」が足かせとなり、データの有効活用が進まないケースが少なくありません。SaaS型ERPへの移行は、単なるシステムの置き換えではなく、経営のスピードと質を抜本的に変革する基盤作りとなります。
従来のオンプレミス型ERPや、部門ごとに散在した個別システムでは、経営層が数値を把握するまでにタイムラグが発生しがちでした。各部門からExcelでデータを収集し、手作業で集計・加工を行ってから経営会議の資料を作成するというプロセスでは、「過去の結果」を確認することしかできません。
SaaS型ERPを導入することで、販売、在庫、購買、会計などのあらゆるデータがクラウド上の単一データベースに統合されます。これにより、経営層は「今、会社で何が起きているか」をリアルタイムに把握できるようになります。例えば、製品別の利益率推移や、部門ごとの予実管理状況をダッシュボードで即座に可視化することが可能です。
データドリブンな経営判断を実現するためには、以下の要素が重要となります。
このように、SaaS型ERPは「守りのIT」から、経営戦略を支援する「攻めのIT」への転換を強力に後押しします。変化の激しい市場環境において、迅速な意思決定を行える体制を整えることは、企業の競争優位性に直結します。
中堅企業においてよく見られる課題の一つに、部門ごとの「個別最適」による弊害があります。営業部門は販売管理システム、製造部門は生産管理システム、経理部門は会計システムといったように、異なるシステムを利用している場合、部門間のデータ連携がスムーズに行われません。
その結果、受注データがあるにもかかわらず在庫引当が連携されておらず納期回答が遅れたり、請求書発行のためにデータを二重入力する手間が発生したりします。SaaS型ERPによる「全体最適」は、こうした部門間の壁を取り払い、業務プロセスを一気通貫で繋ぐ役割を果たします。
個別最適と全体最適の違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 個別最適(サイロ化されたシステム) | 全体最適(SaaS型ERP) |
|---|---|---|
| データ連携 | CSV出力や手入力による連携が必要 | マスタやトランザクションデータが自動連携 |
| 業務効率 | 二重入力や転記作業、確認作業が頻発 | データ入力は一度のみで後続業務へ流れる |
| 情報の整合性 | 部門間で数字が合わず、突合に時間がかかる | 単一のデータベースにより常に整合性が保たれる |
| 組織の動き | 部門の利益や都合が優先されがち | 全社視点でのリソース配分や判断が容易になる |
全社最適化が進むことで、バックオフィス業務の生産性が向上するだけでなく、顧客への対応スピードも上がります。また、SaaS型ERPは標準機能(Standard)に合わせて業務プロセスを見直す「Fit to Standard」の考え方が基本となるため、属人化していた業務フローを標準化・簡素化する絶好の機会ともなります。
部門横断的なデータ活用とプロセスの標準化こそが、DXを実現するための第一歩です。SaaS型ERPはそのための強力なツールであり、経営基盤を盤石なものへと進化させます。
一般的に、主要なSaaS型ERPベンダーは高度なセキュリティ対策と専門家による24時間体制の監視を行っています。自社でサーバーを管理しセキュリティ対策を講じる必要があるオンプレミス型と比較して、結果として高いセキュリティレベルを確保できるケースが多く見られます。
SaaS型ERPは基本的に標準機能を利用するFit to Standardの考え方が推奨されますが、設定による変更やアドオン開発が可能な製品もあります。また、API連携やPaaS基盤を利用した拡張開発によって、コア機能を保ちながら独自の業務要件に対応できる製品も増えています。
製品の規模や導入範囲によりますが、数ヶ月から半年程度で稼働できるケースが一般的です。ハードウェアの調達やサーバー構築が不要なため、オンプレミス型と比較して導入期間を大幅に短縮できる傾向にあります。
多くのSaaS型ERPにはデータ移行ツールやテンプレートが用意されており、移行プロセスは標準化されています。ただし、既存データの整理や形式の変換といった準備作業は必要となるため、ベンダーや導入パートナーの支援を受けて計画的に進めることが推奨されます。
はい、大きなメリットがあります。初期費用を抑えられる点や、IT専任者が不在でもシステムの運用保守や法対応をベンダーに任せられる点は、リソースに限りのある中小企業にとって非常に有効な選択肢となります。
本記事では、SaaS型ERPの基礎知識から導入のメリット・デメリット、そして自社に適した製品の選び方について解説してきました。SaaS型ERPへの移行は、単にサーバーをクラウドへ移すことだけを意味するものではありません。初期投資を抑えつつ、常に最新の法対応や機能アップデートを享受できる環境を整えることで、変化の激しい現代のビジネス環境において迅速な対応が可能となります。
特に、テレワークへの対応やセキュリティレベルの向上といった課題を解決し、DXを推進する基盤としてSaaS型ERPは最適です。導入にあたっては、業務プロセスをシステム標準に合わせる「Fit to Standard」の意識を持ち、自社の企業規模や業種、グローバル展開の有無などを考慮して最適な製品を選定することが成功の鍵となります。
リアルタイムなデータ活用による経営判断の迅速化や、部門間の壁を取り払う全社最適化は、企業の競争力を高める上で不可欠な要素です。SaaS型ERPは業務効率化のツールであると同時に、経営の高度化を実現するための重要な投資と言えます。
市場には多様なERP製品が存在しており、それぞれの強みや特徴は異なります。まずは自社の課題を整理し、どのようなERPが適しているのか、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。適切なERPの導入と活用は、貴社のビジネスを次のステージへと押し上げる大きな一歩となるはずです。