この記事で分かること
会社の将来像が描けず、日々の経営に追われていませんか?
本記事では、経営計画書の目的や事業計画書との違いといった基礎知識から、初心者でも実践できる5ステップの作り方、具体的な記入例、そして計画倒れを防ぐポイントまでを網羅的に解説します。
この記事を読めば、会社の羅針盤となる実用的な経営計画書を作成し、経営の方向性を明確にするための具体的な方法がわかります。
経営計画書とは、企業の将来あるべき姿を定義し、その実現に向けた道筋を体系的に明文化した文書です。 変化の激しい現代の経営環境において、企業が持続的に成長を遂げるためには、明確な指針が不可欠です。経営計画書は、その指針を示す「羅針盤」としての役割を果たします。具体的には、経営理念やビジョンといった企業の根幹をなす考え方から、中長期的な戦略、具体的な行動計画、そして売上や利益といった数値目標までを網羅的に記載します。 これにより、経営者はもちろん、全従業員が企業の進むべき方向性を共有し、一丸となって目標達成に取り組むための基盤を築くことができるのです。
経営計画書の作成目的は、社内と社外の双方に向けた複数の側面を持っています。社内に向けては、経営者のビジョンや戦略を全社で共有し、組織としての一体感を醸成することが最大の目的です。 企業の進むべき道が明確になることで、従業員一人ひとりが自らの役割を認識し、日々の業務に対するモチベーションを高める効果も期待できます。 一方、社外に対しては、金融機関や投資家、取引先といったステークホルダーからの信頼を獲得するための重要なツールとなります。 実現可能性の高い計画を示すことで、企業の将来性や安定性を客観的に証明し、円滑な資金調達や強固なパートナーシップの構築に繋がるのです。 このように、経営計画書は単なる努力目標を記した文書ではなく、企業の未来を切り拓き、内外の信頼を勝ち取るための極めて重要な経営ツールと言えます。
経営計画書と混同されやすいものに「事業計画書」がありますが、両者はその目的や対象範囲において明確な違いがあります。端的に言えば、経営計画書が「会社全体の進むべき方向」を示す全社的・中長期的なものであるのに対し、事業計画書は「特定の事業をどう進めるか」を具体的に示す事業単位・短期的なものです。 経営計画書という大きな地図の上に、個別の事業計画書という詳細なルートマップが描かれるイメージです。両者の違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 経営計画書 | 事業計画書 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社全体の方向性を示し、持続的成長を実現するための羅針盤 | 新規事業の立ち上げや既存事業の拡大、資金調達など、特定の目的を達成するための具体的な実行計画 |
| 対象期間 | 中長期(3年~10年程度) | 短期(1年~3年程度) |
| 対象範囲 | 会社全体(全事業を網羅) | 特定の事業やプロジェクト単位 |
| 主な読み手 | 経営者、全従業員、株主など | 金融機関、投資家、提携先の担当者など |
| 位置づけ | 企業の「あり方(Being)」を示すグランドデザイン | 具体的な「やり方(Doing)」を示すアクションプラン |
このように、経営計画書は企業の根幹をなす理念やビジョンに基づき、会社全体の未来像を描くものです。一方で事業計画書は、その経営計画で示された大きな方向性を実現するための、より具体的で実践的な計画書と位置づけられます。
経営計画書は、単に作成すること自体が目的ではありません。それは、企業の未来を切り拓き、持続的な成長を遂げるための「羅針盤」であり、経営の根幹を支える強力なツールとなります。経営計画書を策定し活用することで、企業は多くのメリットを享受できます。ここでは、経営計画書がもたらす5つの具体的なメリットを詳しく解説します。
経営計画書の最大のメリットの一つは、会社が進むべき明確な方向性を示し、それを組織全体で共有できる点にあります。経営者の頭の中にあるビジョンや戦略を言語化・数値化することで、抽象的だった未来像が具体的な「全社共通の地図」となります。
この共通の地図を持つことで、各部門や従業員は自らの役割と目標を正確に理解し、日々の業務に取り組むことができます。部門間の壁を越えた連携が促進され、「部門最適」の思考から「全社最適」の視点へとシフトします。結果として、組織全体が一つの目標に向かってベクトルを合わせることができ、企業としての一体感が醸成されるのです。
企業が成長を続けるためには、適切なタイミングでの資金調達が不可欠です。経営計画書は、金融機関や投資家に対して、自社の事業の将来性と返済能力を客観的に示すための極めて重要な資料となります。
金融機関が融資を判断する際、過去の財務状況だけでなく、「将来的にどのように収益を上げ、返済していくのか」という未来の計画を重視します。論理的に組み立てられ、具体的な数値計画に裏付けされた経営計画書は、経営者のビジョンや事業の成長戦略を説得力をもって伝え、企業の信用力を大幅に高める効果があります。これにより、融資審査がスムーズに進んだり、より有利な条件での資金調達が可能になったりするのです。
経営計画書は、変化の激しい市場環境の中で、迅速かつ的確な意思決定を下すための判断基準となります。計画と実績を定期的に比較・分析(予実管理)することで、計画通りに進んでいる点と乖離している点が明確になり、経営上の課題を早期に発見できます。
問題点が可視化されることで、その原因を迅速に究明し、具体的な対策を講じることが可能になります。これにより、経営者は勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいた意思決定を行えるようになります。市場の変化や予期せぬトラブルが発生した際にも、経営計画という羅針盤があることで、進むべき方向を見失うことなく、的確な軌道修正を行うことができるのです。
経営計画書によって会社のビジョンや全社目標が明確になると、それを達成するための部門目標、さらには個人の業務目標へと具体的に落とし込むことができます。従業員一人ひとりが、自らの仕事が会社の大きな目標達成にどう貢献しているのかを実感できるようになり、仕事への意義や目的意識が高まります。
自分の役割が明確になることで、従業員は主体的に業務に取り組むようになり、パフォーマンスの向上が期待できます。また、計画に基づいた公正な評価制度を構築しやすくなるため、従業員の納得感も高まり、組織全体のモチベーション向上へとつながる好循環が生まれるのです。
事業承継は、多くの企業にとって重要な経営課題です。経営計画書は、この事業承継を円滑に進めるための「設計図」としての役割も果たします。後継者は経営計画書を通じて、企業の歴史や経営理念、事業の強み・弱み、そして将来のビジョンといった経営の根幹を体系的に理解することができます。
これにより、後継者は経営の現状と未来を深く把握した上で、安心して経営のバトンを受け取ることが可能になります。また、従業員や取引先、金融機関といったステークホルダーに対しても、会社の将来像を明確に示すことで、経営者が代わることへの不安を払拭し、継続的な信頼関係を維持することにも繋がるのです。
経営計画書は、企業の未来を切り拓くための羅針盤です。しかし、その作成方法が分からず、悩んでいる経営者の方も少なくありません。この章では、誰でも実践できる5つのステップに沿って、実用的な経営計画書の作り方を具体的に解説します。各ステップを着実に実行することで、企業の進むべき道が明確になり、組織全体が同じ目標に向かって進むための強固な土台を築くことができます。
経営計画書作成の第一歩は、自社の存在意義である「経営理念」と、将来の理想像である「ビジョン」を明確に言語化することです。これらは、すべての経営戦略や事業活動の根幹をなす、最も重要な要素です。なぜなら、明確な理念やビジョンがなければ、日々の業務は目先の利益や課題に追われるだけの場当たり的なものとなり、組織としての成長は望めません。従業員が「何のために働くのか」という目的意識を共有し、エンゲージメントを高めるためにも、経営理念とビジョンの再確認と明文化は不可欠なプロセスです。
既に理念やビジョンが存在する場合でも、それが形骸化していないか、現在の市場環境や企業の成長ステージに即しているかを改めて見直すことが重要です。経営層が自社の原点に立ち返り、未来への熱い想いを言葉に込めることから、実効性のある経営計画は始まります。
次に、自社を取り巻く状況を客観的に把握するための環境分析を行います。思い込みや感覚だけに頼った計画は、予期せぬ変化に対応できず頓挫するリスクを孕んでいます。客観的なデータと事実に基づいた現状認識こそが、精度の高い戦略立案の土台となります。環境分析は、自社の外に広がる「外部環境」と、自社の中にある「内部環境」の両面からアプローチすることが不可欠です。
環境分析を効率的かつ網羅的に行うためには、確立されたフレームワークの活用が有効です。代表的な手法として「PEST分析」と「SWOT分析」が挙げられます。
PEST分析は、自社ではコントロールが難しいマクロ環境の変化が、事業にどのような影響を与えるかを予測するためのフレームワークです。以下の4つの視点から分析を行います。
| 分析項目 | 分析内容の例 |
|---|---|
| Politics(政治) | 法改正、税制の変更、政権交代、国際情勢の変化など |
| Economy(経済) | 経済成長率、金利、為替レート、物価の変動など |
| Society(社会) | 人口動態の変化、ライフスタイルの多様化、環境意識の高まりなど |
| Technology(技術) | 新技術の台頭、DXの進展、イノベーションの動向など |
一方、SWOT分析は、外部環境と内部環境を「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」の4つの要素に整理し、自社の戦略的な選択肢を導き出すためのフレームワークです。各部門に散在するデータを統合し、客観的な事実に基づいて分析することが、この分析の精度を高める鍵となります。
| プラス要因 | マイナス要因 | マイナス要因 |
|---|---|---|
| 外部環境 | 機会 (Opportunity) 市場の拡大、競合の撤退、規制緩和など |
脅威 (Threat) 新規参入、代替品の登場、景気後退など |
| 内部環境 | 強み (Strength) 技術力、ブランド力、顧客基盤、人材など |
弱み (Weakness) コスト構造、人材不足、旧式のITシステムなど |
これらの分析を通じて、「自社の強みを活かして、どの市場機会を捉えるべきか」「外部の脅威に対して、自社の弱みをどのように克服するか」といった具体的な戦略の方向性を見出すことができます。
環境分析によって現状を把握したら、次はその分析結果に基づき、ビジョンを実現するための具体的な「経営目標」と、その目標を達成するための大局的な方針である「基本戦略」を策定します。これは、「どこへ向かうのか(目標)」と「どうやってたどり着くのか(戦略)」を明確にする、計画書の中核をなすプロセスです。
経営目標を設定する際には、「定性目標」と「定量目標」の両方をバランス良く設定することが重要です。
定性目標が組織の向かうべき北極星を示し、定量目標がそこへ至るまでの具体的なマイルストーンとなるのです。これらの目標を達成するための基本戦略として、「既存事業の深耕」「新規事業への進出」「海外展開の加速」「DXによる業務効率化」といった大きな方向性を定めます。
全社的な経営目標と基本戦略が定まったら、それを各部門(営業、製造、開発、マーケティング、人事、経理など)の具体的な行動計画に落とし込んでいきます。全社レベルの抽象的な目標を、現場の従業員が日々のアクションとして実行できるレベルまで分解する、極めて重要なステップです。
この段階で重要になるのが、全社目標と部門目標の連動性(アラインメント)です。例えば、全社目標が「新規顧客獲得数の20%増」であれば、営業部門は「新規アポイント数の目標設定」、マーケティング部門は「リード獲得数の目標設定」、開発部門は「新製品の市場投入計画」といったように、それぞれの役割に応じて具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定します。部門間のサイロ化を防ぎ、全社一丸となって目標達成に向かうためには、各部門の計画が互いに連携し、整合性が取れていることが不可欠です。このプロセスを通じて、経営計画は「経営層のもの」から「全従業員のもの」へと昇華されます。
経営計画の最終ステップは、これまでの戦略や計画を具体的な「数値」に落とし込み、その実現性を検証することです。どれほど崇高なビジョンや優れた戦略を描いても、それを裏付ける数値計画がなければ「絵に描いた餅」に終わってしまいます。数値計画は、計画全体の整合性を確認し、資金的な裏付けを持つための生命線です。
数値計画は、主に以下の3つの計画から構成されます。
これらの数値計画を策定し、最終的な着地点が明確になったら、それを達成するための具体的な「アクションプラン」を作成します。「いつまでに(When)」「誰が(Who)」「何を(What)」実行するのかを5W1Hで明確にし、計画の実行責任を明らかにすることで、経営計画の実現可能性は飛躍的に高まります。
経営計画書には法律で定められたフォーマットは存在しませんが、企業の進むべき道筋を社内外の関係者に明確に伝えるために、一般的に盛り込むべきとされる必須項目があります。これらの項目を網羅することで、論理的で説得力のある計画書を作成することが可能になります。本章では、それぞれの項目の役割と具体的な記入例を解説します。
会社の基本情報は、読み手が企業の全体像を最初に把握するための重要なセクションです。特に、金融機関や取引先などの外部関係者にとっては、企業の信頼性を判断する上での基礎情報となります。会社の「今」を正確に伝えることを意識し、簡潔にまとめましょう。
| 項目 | 記入例 | ポイント |
|---|---|---|
| 会社名 | 株式会社〇〇 | 正式名称を正確に記載します。 |
| 所在地 | 東京都千代田区〇〇町1-2-3 | 本社所在地の住所を記載します。 |
| 設立年月日 | 2005年4月1日 | 会社の設立日を記載します。 |
| 資本金 | 5,000万円 | 現在の資本金の額を記載します。 |
| 役員構成 | 代表取締役社長 〇〇 太郎 取締役 〇〇 次郎 監査役 〇〇 三郎 |
主要な役員の氏名と役職を記載します。 |
| 従業員数 | 150名(正社員120名、契約社員・パート30名) | 雇用形態別の人数も記載すると、より具体的になります。 |
| 事業内容 | 法人向けクラウドERPシステムの開発・販売・導入支援 | 主要な事業内容を具体的に記載します。 |
経営理念やビジョンは、企業の存在意義や目指すべき未来像を示す、経営計画全体の根幹をなす部分です。全ての戦略や計画は、この理念やビジョンを実現するために策定されます。従業員のモチベーションを高め、組織全体の一体感を醸成する役割も担います。抽象的な言葉で終わらせず、自社の想いが伝わる独自の表現を心がけましょう。
現在、自社がどのような事業を展開しているのかを客観的に説明する項目です。主力事業、収益構造、主要な顧客層、市場におけるポジションなどを具体的に記述します。事業ドメイン(事業領域)を「誰に」「何を」「どのように」提供するのかという視点で定義することで、自社の強みや事業の方向性がより明確になります。
記入例:
「当社は、年商100億~500億円の中堅製造業を主要顧客とし(誰に)、基幹業務の統合管理を実現するクラウドERPシステム(何を)を、サブスクリプションモデルで提供しています(どのように)。業界特有の商習慣に対応した柔軟なカスタマイズ性と、手厚い導入サポートを強みとしており、市場では〇〇の領域で高い評価を得ています。」
前の章で実施したPEST分析(外部環境)やSWOT分析(内部環境)の結果を要約して記載します。この分析結果が、後の経営戦略を策定する上での客観的な根拠となります。自社を取り巻く機会と脅威、そして自社の強みと弱みを正確に把握していることを、内外に示すことが重要です。
| 機会(Opportunity) ・DX化の加速 ・政府によるIT導入支援 |
脅威(Threat) ・競合の新規参入 ・IT人材の不足 |
|
|---|---|---|
| 強み(Strength) ・高い技術力と開発体制 ・豊富な導入実績 |
【積極化戦略】 強みを活かして機会を最大限に活用する。 (例:技術力を活かし、補助金活用をフックに新規顧客を開拓) |
【差別化戦略】 強みを活かして脅威を回避・克服する。 (例:導入実績をアピールし、競合との差別化を図る) |
| 弱み(Weakness) ・首都圏に偏った営業体制 ・ブランド認知度の低さ |
【改善戦略】 弱みを克服して機会を活かす。 (例:地方の販売パートナーを開拓し、全国展開を図る) |
【防衛・撤退戦略】 最悪の事態を回避する。 (例:特定領域に経営資源を集中させ、事業領域を再定義する) |
環境分析の結果を踏まえ、経営理念・ビジョンを実現するために、企業全体としてどのような方向性で進むのかを具体的に示すのが経営戦略です。全社戦略、事業戦略、機能別戦略(マーケティング、開発、人事など)の階層で整理すると、より明確になります。
記入例:
「環境分析の結果、DX化の波という『機会』を捉え、当社の『強み』である技術力を最大限に活かすことが最重要であると判断した。そこで、今後3年間は『製品開発力の強化による市場リーダーの地位確立』を全社戦略の柱とする。具体的には、AIを活用した需要予測機能の開発に経営資源を集中投下し、既存製品の優位性をさらに高める(事業戦略)。それに伴い、AIエンジニアの採用を強化し(人事戦略)、Webマーケティングによるリード獲得を倍増させる(マーケティング戦略)。」
経営戦略という大きな方向性を、「いつ」「誰が」「何を」「どのように」実行するのかという具体的な行動レベルにまで落とし込んだ計画がアクションプランです。この項目が具体的であるほど、計画の実行可能性は高まります。部門別、担当者別にタスクを分解し、それぞれの目標(KPI)と期限を明確に設定することが成功の鍵となります。
| 戦略目標 | 具体的な行動計画 | 担当部署 | 主要業績評価指標(KPI) | 実施期間 |
|---|---|---|---|---|
| 新規顧客の開拓 | Webマーケティング施策の強化(コンテンツSEO、Web広告) | マーケティング部 | 月間Webサイト経由の問い合わせ数:50件 | 2026年4月~2027年3月 |
| 製品開発力の強化 | AIを活用した需要予測機能のプロトタイプ開発 | 開発部 | プロトタイプの完成 | 2026年4月~2026年9月 |
| 顧客満足度の向上 | オンラインサポート体制の強化とFAQコンテンツの拡充 | カスタマーサポート部 | 顧客満足度アンケートの評点:4.5以上 | 2026年4月~継続 |
これまでに策定した戦略やアクションプランが、最終的にどのような財務的成果に結びつくのかを具体的な数値で示す、経営計画書の中核となる部分です。金融機関からの融資審査などでは特に重要視される項目であり、計画の実現可能性を客観的に示すための根拠となります。一般的には、今後3~5年間の損益計画、貸借対照表計画、資金繰り計画(キャッシュフロー計画)を作成します。
(単位:百万円)
| 勘定科目 | 前期実績 | 1年後予測 | 2年後予測 | 3年後予測 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,000 | 6,000 | 7,200 | 8,500 |
| 売上原価 | 1,000 | 1,200 | 1,440 | 1,700 |
| 売上総利益 | 4,000 | 4,800 | 5,760 | 6,800 |
| 販売費及び一般管理費 | 3,500 | 4,000 | 4,500 | 5,000 |
| 営業利益 | 500 | 800 | 1,260 | 1,800 |
※各数値の算出根拠(売上予測の前提条件、費用増加の見込みなど)を別途補足資料として添付することが望ましいです。
緻密に作り上げた経営計画書も、実行が伴わなければ「絵に描いた餅」で終わってしまいます。計画を確実に推進し、成果へと繋げるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。この章では、多くの企業が直面する課題を踏まえ、経営計画の実行力を飛躍的に高めるための3つの要諦を具体的に解説します。
計画倒れは、決して珍しいことではありません。その原因は多岐にわたりますが、多くの場合、いくつかの共通したパターンに分類できます。まずは、自社が陥りがちな罠を正確に理解し、事前に対策を講じることが重要です。
| 主な原因 | 具体例 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 目標の形骸化 | 経営層だけで策定され、現場の意見が反映されていない。目標が壮大すぎて、現実的なアクションに結びついていない。 | 計画策定のプロセスに各部門の責任者を巻き込み、現場の実態に即した目標設定を行う。全社目標を部門別、個人別の具体的なKPIにまで落とし込む。 |
| 現場との乖離 | 策定された計画が十分に共有・浸透しておらず、従業員が「自分ごと」として捉えられていない。 | 定期的な説明会の開催や、社内ポータルなどを活用し、計画の背景や目的を丁寧に共有する。従業員の役割と計画達成との関連性を明確にする。 |
| 進捗管理の不備 | 計画通りに進んでいるかを確認する仕組みがなく、問題が発生しても発見が遅れる。Excelなど属人的なツールでの管理に依存し、リアルタイムな状況把握ができていない。 | 定期的な進捗会議(週次・月次)を設定し、予実の差異を確認するプロセスを制度化する。客観的なデータに基づき進捗を可視化できる仕組みを導入する。 |
| 環境変化への未対応 | 一度策定した計画に固執し、市場や競合の動向といった外部環境の変化に柔軟に対応できていない。 | 市場の動向を常にモニタリングし、計画を定期的に見直す機会を設ける。状況に応じて戦略を柔軟に修正できる組織文化を醸成する。 |
計画倒れを防ぎ、着実に目標達成へと近づくための最も強力な武器が「予実管理」です。予実管理とは、計画(予算)と実績を比較・分析し、その差異の原因を突き止め、次の打ち手を考える一連のマネジメントサイクルを指します。これは、まさに経営におけるPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルそのものと言えるでしょう。
効果的な予実管理を行うには、その仕組み作りが不可欠です。多くの企業では、各部門からExcelファイルで数値を集計し、経営会議で報告するというプロセスを踏んでいますが、これには多くの課題が潜んでいます。
手作業による集計は時間がかかるだけでなく、入力ミスや計算間違いといったヒューマンエラーの温床となります。また、データがリアルタイムに更新されないため、経営陣が意思決定を行う時点では、すでに情報が古くなっているという事態も起こりかねません。精度の高い予実管理を実現するためには、各部門のデータをリアルタイムで収集し、一元的に管理できるIT基盤の構築が急務となります。
迅速かつ的確な経営判断を下すためには、経験や勘だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づくアプローチ、すなわち「データドリブン経営」への転換が不可欠です。そして、その実現の鍵を握るのが、企業の基幹情報を統合管理するIT基盤に他なりません。
会計、販売、購買、生産、人事といった企業の基幹業務データを一つのシステムで統合的に管理するERP(Enterprise Resource Planning)は、データドリブン経営を実現するための最適なソリューションです。部門ごとに散在していたExcelや個別の業務システムをERPに統合することで、全社の経営状況をリアルタイムかつ正確に可視化することが可能になります。
例えば、売上実績が計画を下回った場合、その原因が特定の製品にあるのか、特定の地域にあるのか、あるいは営業担当者の活動量に起因するのかを、多角的にドリルダウンして分析できます。これにより、問題の根本原因を迅速に特定し、的確な対策を講じることができるのです。ERPは単なる業務効率化ツールではありません。それは、経営計画の実行(予実管理)を強力に支援し、企業の持続的な成長を支える経営の神経系(セントラルナーバスシステム)と言えるでしょう。
本記事では、初心者の方でも実践できる経営計画書の作り方を、具体的な手順や記入例を交えて網羅的に解説しました。経営計画書は、企業の進むべき道を示す羅針盤であり、資金調達や組織力強化にも繋がる重要なツールです。しかし、多くの企業が「計画倒れ」に陥るのも事実。計画の実行力を高める鍵は、精度の高い予実管理にあります。ERPのような統合システムは、リアルタイムなデータに基づいた迅速な経営判断を可能にし、計画の実現性を飛躍的に高めます。まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。