SAP S/4HANAの導入やDX推進が多くの企業の課題となる中、そのポテンシャルを最大限に引き出す鍵として「SAP BTP(Business Technology Platform)」が注目を集めています。
「BTPという言葉は聞くけれど、具体的に何ができるのかよく分からない」「自社のビジネスにどう役立つのかイメージが湧かない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SAP BTPの基礎知識から具体的な活用法、導入メリット、成功事例までを、初心者の方にも分かりやすく網羅的に解説します。
この記事で分かること
結論から言うと、SAP BTPは既存のSAPシステムという強固な基盤を活かしつつ、変化の激しいビジネス環境へ迅速かつ柔軟に対応するための「ビジネス変革プラットフォーム」です。
この記事を最後までお読みいただくことで、SAP BTPが貴社のデータ活用や業務改革をいかに加速させ、競争優位性を高めるか、その具体的な道筋を明確に理解いただけるはずです。
SAP BTP(Business Technology Platform)とは、ドイツに本社を置くSAP社が提供する、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるためのクラウドプラットフォームです。
業務アプリケーションの開発、データの統合・分析、AIなどの最新技術の活用といった、企業の変革に必要な機能を一つの環境に集約して提供するPaaS(Platform as a Service)に分類されます。
多くの企業では、基幹システムであるERP(Enterprise Resource Planning)を中心に、様々な業務システムが稼働しています。しかし、市場の変化や新たなビジネス要請に応えるため、ERPに独自の機能追加(アドオン開発)を繰り返した結果、システムが複雑化・肥大化し、身動きが取れなくなっているケースは少なくありません。バージョンアップが困難になったり、維持管理コストが増大したりと、本来ビジネスを支えるはずのITが足かせとなってしまうのです。
SAP BTPは、このような課題を解決するために生まれました。ERP本体は標準機能を維持したまま(これを「クリーンコア」と呼びます)、必要な追加機能や他システムとの連携部分をSAP BTP上で開発・実行することで、柔軟性と俊敏性を両立したIT基盤の実現を支援します。
クラウドサービスには、提供されるサービスの範囲によって主に3つの形態(IaaS, PaaS, SaaS)があります。SAP BTPが分類される「PaaS」は、アプリケーションを開発・実行するための土台(プラットフォーム)を提供するサービスです。
これにより、企業はサーバーやOSといったインフラの管理にリソースを割くことなく、本来注力すべきビジネス価値の創出、つまり新しいアプリケーションの開発やデータ活用に集中できるという大きなメリットがあります。
| 分類 | 提供範囲 | ユーザーの役割 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| IaaS (Infrastructure as a Service) | サーバー、ストレージ、ネットワークなどのインフラ | OS、ミドルウェア、アプリケーションの開発・管理 | Amazon EC2, Google Compute Engine |
| PaaS (Platform as a Service) | インフラに加え、OS、ミドルウェアなどの実行環境 | アプリケーションの開発・管理 | SAP BTP, Microsoft Azure App Service, Google App Engine |
| SaaS (Software as a Service) | インフラからアプリケーションまで全て | サービスの利用と設定 | Microsoft 365, Google Workspace, Salesforce |
前述の通り、SAP BTPの価値を最大限に引き出す上で、ERP、特にSAP S/4HANAとの連携は極めて重要です。SAP社が提唱する「クリーンコア」というアプローチは、ERPの基幹部分を標準機能のままクリーンに保ち、各企業に固有の要件や機能拡張はSAP BTPのような外部プラットフォームで開発する考え方です。
このアプローチにより、以下のようなメリットが生まれます。
つまり、ERPが企業の安定した「守りのIT」を担う一方で、SAP BTPはビジネスの成長を牽引する「攻めのIT」の役割を担います。この二つを適切に連携させることが、DX時代を勝ち抜くための鍵となるのです。
SAP BTPは、単なる技術基盤(PaaS)にとどまらず、企業の競争力を根底から支え、持続的な成長を可能にするビジネス変-革のエンジンです。
多くの企業が抱える経営課題に対し、SAP BTPは具体的な解決策を提示し、これまでにない価値を創出します。ここでは、SAP BTPを導入することで企業が得られる3つの具体的なメリットを、ビジネスの視点から詳しく解説します。
多くの企業では、部門ごとにシステムが最適化された結果、データが各所に点在する「データのサイロ化」が深刻な課題となっています。この状態では、経営状況をリアルタイムに把握することが困難であり、市場の変化に対応するための迅速な意思決定の妨げとなっていました。
SAP BTPは、これらの課題を解決するための強力なデータ活用基盤を提供します。
SAP BTPが提供するデータおよび分析ソリューションを活用することで、社内に散らばった販売、在庫、財務といった様々なデータを統合し、一元的に管理することが可能になります。
これにより、全社横断でのリアルタイムなデータ分析が実現し、経営層は常に最新の状況に基づいた的確な意思決定を下せるようになります。勘や経験に頼った経営から脱却し、データという客観的な事実に基づいた「データドリブン経営」へのシフトを強力に支援します。
市場のニーズやビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、企業のIT基盤にはこれまで以上の俊敏性(アジリティ)が求められます。
しかし、長年の追加開発(アドオン)によって複雑化・肥大化した従来の基幹システムは、少しの改修にも多大な時間とコストを要し、ビジネスの足かせとなるケースが少なくありません。SAP BTPは、この硬直化したIT基盤の問題を解決します。
SAP BTPを活用することで、企業の根幹を支えるERPのコア機能は標準化を維持したまま(クリーンコア)、業務に必要な追加機能やアプリケーションをBTP上で迅速に開発・拡張することが可能になります。
この「Side-by-Side拡張」と呼ばれる手法により、ERP本体に影響を与えることなく、市場の変化や新たなビジネス要件にスピーディに対応できる柔軟なIT基盤を構築できます。
これにより、将来のアップグレードも容易になり、ITシステムがビジネス成長を阻害するのではなく、むしろ加速させる原動力へと変わります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる一方で、多くの企業がその推進に課題を抱えています。
特に、既存システムへの長年の投資や、全面的なシステム刷新に伴う莫大なコスト、業務停止のリスクなどが大きな障壁となっています。SAP BTPは、こうした課題に対して現実的かつ効果的なアプローチを提供します。
SAP BTPの大きな特長の一つに、その優れた連携機能が挙げられます。SAP製のシステムはもちろんのこと、他社製のクラウドサービスや、自社で独自に構築したオンプレミスのシステムともシームレスに連携することが可能です。
これにより、既存のIT資産を無駄にすることなく、それらを有効活用しながら段階的にDXを推進できます。全てを一度に入れ替える「ビッグバンアプローチ」ではなく、スモールスタートで成果を確かめながら着実に変革を進めることができるため、リスクを最小限に抑えたDXの実現が可能となります。
SAP BTP(Business Technology Platform)は、一言で表すと「ビジネスの成長と変革を加速させるための、クラウド上の技術基盤」です。
具体的には、アプリケーションの開発、データ分析、システム連携、AI活用といった、現代の企業経営に不可欠な様々な機能を、一つの統合された環境で提供するPaaS(Platform as a Service)に分類されます。
従来のように、機能ごとにサーバーやソフトウェアを個別に用意する必要はありません。SAP BTPというプラットフォーム上で、必要なサービスを自由に組み合わせて利用することで、迅速かつ柔軟にビジネス課題を解決する仕組みを構築できます。
SAP BTPが提供するサービスは、大きく以下の5つの領域に分類されます。
| サービス領域 | 概要 |
|---|---|
| アプリケーション開発・自動化 | 業務に必要なアプリケーションを迅速に開発・拡張するための環境です。専門知識が少なくてもアプリを構築できるローコード/ノーコードツールや、定型業務を自動化するRPA機能などが含まれます。 |
| データと分析 | 社内外に散在する膨大なデータを統合・管理し、経営の意思決定に役立つ知見を引き出すための機能です。リアルタイムでのデータ分析や将来予測を可能にします。 |
| 統合(インテグレーション) | SAPのシステムはもちろん、他社のクラウドサービスやオンプレミスのシステムなど、様々なシステムをシームレスに連携させるための機能です。これにより、企業全体の情報が繋がり、業務プロセスが円滑になります。 |
| 人工知能(AI) | AIや機械学習といった最新技術を、自社のアプリケーションや業務プロセスに容易に組み込むことができます。例えば、需要予測の精度向上や、問い合わせ対応の自動化などに活用できます。 |
| データベース | インメモリデータベースであるSAP HANA Cloudをはじめ、様々なデータを効率的に管理・処理するためのデータベース機能を提供します。 |
多くの企業にとって、ERPは会計、販売、生産といった基幹業務を支える「守りのIT」の中核です。しかし、市場の変化に迅速に対応し、新たなビジネス価値を創造する「攻めのIT」を実現するためには、ERP単体では限界があります。そこで重要になるのが、SAP BTPとの連携です。
連携の鍵となるのが、「Keep the Core Clean(キープ・ザ・コア・クリーン)」という考え方です。これは、ERPの中核部分(コア)は標準機能を維持し、各社固有の要件や機能追加(アドオン)はERPの外側で行うというアプローチを指します。
従来のオンプレミスERPでは、業務に合わせてコアに直接アドオン開発を重ねることが一般的でした。しかし、この方法はシステムの複雑化やブラックボックス化を招き、結果として以下のような課題を生み出していました。
SAP BTPは、この「Keep the Core Clean」を実現するための最適なプラットフォームです。ERP本体に手を加えることなく、SAP BTP上でアプリケーションを開発・連携させる「Side-by-Side拡張」という手法を用いることで、ERPの安定性を損なわずに、ビジネスの変化に柔軟に対応できるシステム環境を構築できます。
つまり、ERPは「標準化された業務プロセスの実行」という本来の役割に徹し、差別化や競争力強化につながる独自の機能は、SAP BTPが担う。この適切な役割分担こそが、ERPとSAP BTPを連携させる最大の理由であり、持続的な成長を目指す企業にとって不可欠なIT戦略と言えるでしょう。
SAP BTPは単なる技術基盤ではなく、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を力強く推進し、新たなビジネス価値を創出するための「ビジネス変革プラットフォーム」です。
ERPを導入・刷新する上で、将来のビジネス変化に柔軟に対応できる拡張性を確保することは、経営層にとって重要な課題といえるでしょう。
SAP BTPは、その中核を担う存在です。ここでは、SAP BTPが持つ多岐にわたる機能の中から、特にビジネス価値の最大化に直結する5つの活用法を、具体的なシーンを交えながら解説します。
多くの企業では、ERPシステム内のデータに加え、営業支援システムや顧客管理システム、さらには各部門が独自に管理するExcelファイルなど、重要なデータが社内に点在しています。
これらのデータは個別に最適化されている一方で、全社的な視点でのデータ活用を阻む「サイロ化」という課題を生み出しています。 SAP BTPは、これらの散在するデータを一元的に統合し、分析するための強力な基盤を提供します。これにより、これまで見過ごされてきたデータ間の関連性や新たなビジネスチャンスを発見し、データドリブンな意思決定を可能にします。
市場の動向や顧客ニーズが目まぐるしく変化する現代において、過去のデータに基づいた月次報告や年次報告だけでは、迅速な経営判断は困難です。
SAP BTPは、ERPや関連システムからデータをリアルタイムに収集・分析する環境を構築できます。例えば、販売実績や在庫状況をダッシュボードでリアルタイムに可視化することで、機会損失や過剰在庫のリスクを即座に把握し、迅速な対策を講じることが可能になります。
これにより、経営層は常に最新の状況に基づいた、精度の高い意思決定を行えるようになります。
多くの企業では、請求書の処理や各種申請・承認業務など、いまだに手作業に依存した非効率な業務プロセスが数多く残っています。これらの業務は、ヒューマンエラーを誘発しやすいだけでなく、業務の属人化を招き、内部統制上のリスクにもなり得ます。
SAP BTPは、こうした定型的な業務プロセスを自動化・標準化するための多彩な機能を提供します。これにより、従業員はより付加価値の高い創造的な業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上とガバナンス強化を実現します。
例えば、経費精算ワークフローを考えてみましょう。従来は、申請者がExcelで作成した申請書を印刷し、上長が押印、経理部門が内容を確認してシステムに入力するといった、時間と手間のかかるプロセスが一般的でした。
SAP BTPを活用すれば、スマートフォンアプリから領収書の写真をアップロードするだけで申請が完了し、あらかじめ設定された承認ルートに従って自動的にワークフローが進行、承認されれば会計システムにデータが連携される、といった一連の流れを自動化できます。
これにより、申請から承認、精算までのリードタイムが大幅に短縮され、全従業員の業務効率が向上します。
ビジネスの現場では、日々の業務の中で「もっとこうだったら便利なのに」といった改善のアイデアが生まれています。
しかし、従来のシステム開発では、IT部門に依頼してからアプリケーションが完成するまでに長い時間とコストがかかるため、現場のニーズに迅速に応えることが困難でした。
SAP BTPは、プログラミングの専門知識が少ない業務部門の担当者でも、直感的な操作でアプリケーションを開発できる「ローコード/ノーコード開発」の環境を提供します。
これにより、現場のアイデアをスピーディに形にし、業務改善や新たなビジネス価値の創出を加速させることができます。
近年、多くの企業が業務効率化や顧客満足度向上のために、様々なクラウドサービス(SaaS)を導入しています。その一方で、基幹業務を支えるERPシステムは、依然としてオンプレミス環境で運用されているケースも少なくありません。このように、オンプレミスとクラウドのシステムが混在し、それぞれが独立して稼働している状態では、データが分断され、業務プロセス全体の最適化は困難です。
SAP BTPは、オンプレミス・クラウドを問わず、社内外の様々なシステムやサービスをAPI(Application Programming Interface)を介してシームレスに連携させるハブとしての役割を果たします。
これにより、システム間のデータをリアルタイムに同期させ、エンドツーエンドでの業務プロセスの自動化やデータの一元管理を実現します。
AI(人工知能)や機械学習は、もはや一部の先進企業だけのものではなく、あらゆる企業にとって競争優位性を確立するための重要な技術となっています。
しかし、AIを自社のビジネスに活用するには、高度な専門知識や膨大なデータ、そしてそれを処理するための計算資源が必要となり、多くの企業にとってハードルが高いのが実情です。
SAP BTPは、需要予測や異常検知、自然言語処理(チャットボットなど)といった、ビジネスですぐに活用できるAIサービスをあらかじめ組み込んでいます。
これにより、企業は自社でAI開発の専門家を抱えることなく、最新のAI技術を自社の業務プロセスやサービスに容易に組み込み、ビジネスの高度化を図ることが可能になります。
SAP BTPが持つ可能性をより具体的にご理解いただくために、ここではBTPを活用してビジネス課題を解決した企業の成功シナリオを2つご紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、BTP導入後の姿をイメージしてみてください。
多くの製造業や卸売業、小売業にとって、在庫の最適化は経営の根幹を揺るがす重要な課題です。欠品は販売機会の損失に直結し、一方で過剰在庫は保管コストの増大やキャッシュフローの悪化を招きます。このシナリオでは、SAP BTPを活用してサプライチェーン全体の可視性を高め、在庫の最適化を実現したケースを見ていきましょう。
この企業では、販売部門、生産部門、倉庫部門がそれぞれ異なるシステムで在庫情報を管理していました。そのため、全社で統一された正確な在庫状況をリアルタイムに把握できず、以下のような問題が発生していました。
そこで、SAP BTPを導入し、既存の基幹システム(ERP)と各部門のシステムを連携させる新たなデータ活用基盤を構築しました。具体的には、SAP BTPが持つデータ統合機能とアプリケーション開発機能を活用し、以下の仕組みを実現しています。
この仕組みの導入により、企業は全社の在庫情報をリアルタイムかつ正確に把握できるようになりました。その結果、データに基づいた迅速な意思決定が可能となり、ビジネスに大きなインパクトをもたらしました。
| 改善項目 | 導入後の成果 |
|---|---|
| 欠品率の削減 | 販売機会損失が大幅に減少し、売上向上に貢献。顧客からの信頼も向上した。 |
| 在庫日数の短縮 | 過剰在庫が削減され、保管コストの圧縮とキャッシュフローの大幅な改善を実現した。 |
| 業務効率の向上 | これまで手作業で行っていた在庫確認や発注業務が自動化され、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになった。 |
次に、BtoB(企業間取引)ビジネスにおける顧客エンゲージメントの強化にSAP BTPを活用したシナリオをご紹介します。従来の電話やメールを中心としたアナログな顧客対応から脱却し、デジタル接点を設けることで、顧客満足度の向上と業務効率化を両立させた事例です。
この企業では、顧客からの注文、納期確認、製品に関する問い合わせのほとんどを、営業担当者が電話やメールで個別に対応していました。
そのため、担当者によって対応の質にばらつきがあり、顧客を待たせてしまうことも少なくありませんでした。また、顧客側も「注文した製品の納期をすぐに知りたい」「過去の取引履歴を確認したい」といったニーズを手軽に満たせず、不満を抱えていました。
この課題を解決するため、SAP BTPのアプリケーション開発機能(SAP Build Appsなど)と連携機能を活用し、顧客向けのポータルサイトを短期間で構築しました。
このポータルサイトは、バックエンドで稼働する基幹システム(ERP)とシームレスに連携しています。
ポータルサイトの導入により、顧客は必要な情報へいつでもアクセスできるようになり、顧客体験(CX)が飛躍的に向上しました。同時に、これまで問い合わせ対応に追われていた営業担当者の負担が大幅に軽減され、より戦略的な活動に時間を使えるようになりました。
| 改善項目 | 導入後の成果 |
|---|---|
| 顧客満足度の向上 | セルフサービスによる利便性向上が評価され、顧客満足度アンケートのスコアが大幅に改善。顧客との関係性が強化された。 |
| 業務効率化 | 電話やメールによる問い合わせ件数が激減し、営業担当者およびカスタマーサポート部門の業務負荷を大幅に削減できた。 |
| 新たなビジネス機会の創出 | パーソナライズされた製品推奨により、クロスセルやアップセルが促進され、顧客単価の向上に繋がった。 |
これらのシナリオからわかるように、SAP BTPは単なる技術基盤ではなく、企業のDXを加速させ、具体的なビジネス価値を生み出すための強力なプラットフォームです。既存のIT資産を活かしながら、変化に強い柔軟なシステムを構築できる点が、多くの企業に選ばれる理由と言えるでしょう。
SAP BTPは、企業のデータ活用、業務プロセスの自動化、アプリケーション開発、システム連携、AI活用などを実現するためのクラウドプラットフォームです。既存のSAP ERPなどと連携し、企業のDXを推進する基盤として機能します。
一部の高度な開発や連携には専門知識が必要ですが、ローコード・ノーコードでアプリケーションを開発できるツールも提供されており、IT部門だけでなく現場の担当者も活用しやすくなっています。
SAP S/4HANAが企業の基幹業務データを管理するのに対し、SAP BTPはそのデータを活用して新しいアプリケーションを開発したり、外部システムと連携させたりする役割を担います。両者を連携させることで、基幹システムに影響を与えずに最新技術を活用できます。
SAP BTPの料金体系は、利用するサービスや使用量に応じた従量課金制が基本です。そのため、スモールスタートで小さく始めて、ビジネスの成長に合わせて利用を拡大していくことが可能です。
個別のツールを組み合わせてDXを進めることも可能ですが、SAP BTPを利用することで、SAP製品との親和性が高い環境で、データ連携やアプリケーション開発、プロセス自動化などを一貫して行えるため、より効率的かつ安全にDXを推進できます。
本記事では、SAP BTPの概要から具体的な活用法、導入メリットまでを解説しました。SAP BTPは、単なる技術基盤ではなく、企業のDXを加速させ、ビジネスに変革をもたらす戦略的なプラットフォームです。
SAP BTPが提供する「データ活用」「プロセス改革」「アプリ開発」「システム連携」「AI活用」といった機能は、既存のERP資産を最大限に活かしながら、経営の見える化や変化に強いIT基盤の構築を実現します。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応し、新たなビジネス価値を創出することが可能になります。
そして、SAP BTPの価値を最大化する上で欠かせないのが、企業の中心で稼働するERPとの連携です。特にSAP S/4HANAのような次世代ERPが持つリアルタイムの経営データをSAP BTPで活用することで、より精度の高い意思決定や、顧客への新たな価値提供が実現します。
もし、貴社がDXの推進やデータ活用に課題を感じているのであれば、まずはその土台となるERPの在り方を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。最新のERPは、業務効率化だけでなく、企業の競争力を根底から支える経営基盤となります。SAP BTPとERPの連携は、その可能性を無限に広げる第一歩となるでしょう。