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ERPを用いた製造業の課題解決!他ツールとの違いも併せて解説

作成者: クラウドERP導入ガイド編集部|2025/06/20

「製造業でもERPを導入して課題を解消したい」

製造業でERPを導入することで、高騰するコストの削減、サプライチェーン間の連携強化に加え、製造業特有の課題解消にも貢献します。ERPは人事や財務のイメージがあるかもしれませんが、製造業においても生産管理や在庫管理機能があるため、幅広い業務に対応可能です。

製造業でERPを導入すべき理由や、ERP以外の製品との違いを確認しておきましょう。

製造業における業務の課題

世界的な競争の激化や社会構造の変化により、日本の製造業には、これまで以上に柔軟かつ効率的な業務運営が求められています。大きな課題には、以下の3点があります。

  • 高騰するコストへの対応
  • 部門やサプライチェーン間の連携不足
  • 製造業特有の課題

高騰するコストへの対応

製造に必要なコストが年々高騰しており、収益の確保が難しくなっています。

近年、原材料費やエネルギーコストが上昇しており、製造自体のコストが収益を圧迫しています。加えて日本国内では最低賃金の引き上げ、人手不足に伴う採用コストの増加など、人件費も増加傾向です。

収益を確保するためには、目先のコスト削減や販売価格の引き上げだけではなく、長期的にコストを削減する取り組みが必要です。例えば、コスト構造の可視化、プロセスの改善や自動化の検討などがあります。これらの取り組みによる無駄の排除が急務といえるでしょう。

部門やサプライチェーン間の連携不足

社内の部門間や、サプライチェーン間の連携が不足しがちなことも製造業の課題です。

製造業は製品の企画から設計、調達、生産、販売、アフターサービスまで、多くの部門、企業が連携します。

しかし、部門ごとに異なるシステムやツールを使用していることは珍しくありません。そのため情報が分断され、連携ミスや手戻り、在庫過剰・欠品などの問題が発生しやすいです。
これは機会損失につながります。

逆に考えると、部門・サプライチェーン間でリアルタイムに情報共有できると、需要変動への対応が早まり、ビジネスチャンスの獲得につながります。

製造業特有の課題

製造業には、他業種にはない固有の難しさもあります。

製造業特有の課題として以下があります。

  • 多品種少量生産や短納期への対応
  • 製品別・工程別の原価把握や在庫管理が複雑

いずれも需要予測の精度向上や、柔軟な工程管理のために必要です。

製造業ではこれらが日々求められていますが、現場の負担を増大させる要因にもなっています。属人的な管理体制では限界があるため、ITの活用や標準化の進め、DX化を推進していく必要があります。

製造業におけるERPの必要性・メリット

上記で挙げた製造業の課題に対応するためにはERP (Enterprise Resource Planning)の導入が効果的です。

ERPは、企業の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を効率的に管理し、企業全体で最適化を進めるための考え方、またはそれを実現するシステムを指します。

製造業において、ERP導入のメリットには以下があります。

  • データに基づく経営判断の実現
  • 部門間の情報連携の強化
  • 発注や在庫の最適化によるコスト削減
  • グローバル展開のサポート
  • 製造業特有の課題を解消

データに基づく経営判断の実現

ERPの導入により、経営層や現場がリアルタイムで統一されたデータを参照できます。

ERPを導入すると、売上や原価、在庫などの指標をダッシュボードで可視化できます。これにより、業績の傾向や問題点を早期に把握できるようになります。

また過去データと現在の動向を基にした予測分析機能により、需要の変化や市場の動向を掴みやすいです。読み取った動向に先回りした対応ができると、中長期的な経営戦略にも有利に働きます。

製造業でERPを導入することで、迅速かつ精度の高い意思決定が実現が可能です。

部門間の情報連携の強化

ERPの導入により、部門間やサプライチェーン間の情報連携が強化されます。

課題で述べた通り、情報連携不足は機会損失につながります。ERPは、部門間やサプライチェーン間の業務システムを一元的に統合し、同じ情報をリアルタイムに参照・更新できる環境を実現します。

例えば、生産部門と販売部門が在庫や出荷状況をリアルタイムに共有することで、精度の高い生産計画を立てられます。また、設計・調達・会計などの情報統一されるため、業務プロセスの整合性が保たれ、ミスや手戻りを大幅に削減できます。

さらに、組織やシステムの分断で起こりがちな「データの整合性を確保しにくい」という問題も、組織間で同一のERPを使うことで減らせます。

ERPの導入は、組織内の分断を解消し「最適化」を実現します。

発注や在庫の最適化によるコスト削減

ERPの導入により、発注や在庫の最適化が可能です。

ERPには発注や在庫最適化のための多くの機能が備わっています。例えば、在庫・購買管理機能の活用により、リアルタイムで在庫状況を把握し、仕入れの過不足や在庫管理の手間、ミスの発生リスクを削減可能です。

需要予測機能や発注・生産管理機能による計画の連携で、適正な在庫レベルを維持することで、在庫管理業務の工数を減らせます。さらに、在庫管理を担当していた従業員を別の業務に回すことができ、人材配置の最適化も実現するでしょう。

ERPの導入は、在庫コストや保管コストの削減が実現すると同時に、資金繰りやキャッシュフロー、人材配置の改善にも貢献します。

グローバル展開のサポート

ERPの導入はグローバル展開の支援にもつなげやすくなります。

海外拠点を持つ企業や、サプライチェーンの一部が海外にある場合、国や地域ごとに異なる会計基準、言語、通貨に対応することが大きな負担です。ERPは多言語・多通貨・多国対応を標準で備えていることが多く、グローバルな業務プロセスの統一・標準化を支援します。

例えば、ヨーロッパ、アジア、北米の拠点間で同一のERPを利用すれば、グローバルでの業務可視化やデータ連携がスムーズに行えるようになります。

さらに、国際的なサプライチェーン全体の動きを把握しやすくなり、リスクへの迅速な対応やコストの最適化が可能です。

ERPはグローバルスタンダードとして利用できることが強みといえます。
関連記事:グローバルスタンダードとは|具体例や問題点をわかりやすく解説

製造業特有の課題を解消

ERPは先述した製造業特有の課題解消につながります。

ERPは生産計画、原価、在庫などを一元的に管理できるツールです。

これにより、多品種少量生産や短納期といった変化対応力が求められる現場でも、柔軟な計画変更や部材調達が可能です。また原材料から完成品までの流れを追跡できるトレーサビリティ機能により、万が一の品質トラブルにも迅速な対応ができ、顧客満足度とブランド信頼性の向上につながります。

業務の属人化を防ぎ、知識やノウハウを組織全体で共有できる点も、ERP導入のメリットです。継続的な改善の取り組みや、経営判断のスピードアップにつながるでしょう。

ERPにより製造業特有の課題が解消できれば、業界内での優位性を獲得できます。

製造業向けERPの機能

製造業向けERPシステムは、一般的なERPの機能である会計や人事の機能はもちろん、以下の機能によって製造業特有の業務プロセスを強力にサポートできます。

特に以下の製造業の中核を成す機能は、企業の競争力強化に直結する重要な要素です。これらの機能が会計・販売・調達などの基幹システムと緊密に連携することで、全社的な業務効率化とデータに基づく経営判断が可能になります。

  • 需要予測
  • 生産管理
  • 在庫管理
  • 設計管理
  • 原価管理
  • 品質管理
  • サプライチェーン管理

需要予測

ERPの需要予測機能は、在庫の最適化や生産計画の精度向上を実現する機能です。

需要予測機能により、過去の販売実績や季節変動、顧客の購買傾向、市場の変化などのデータを基に、将来の需要を高精度で予測できます。

需要予測機能を活用すると、以下の効果があります。

  • 仕入れ量や在庫の最適化
  • 調達・生産のリードタイムを考慮した計画立案

ERPの需要予測機能により、需要に応じた柔軟な対応が可能になるため、結果的にキャッシュフローの健全化が可能です。

生産管理

ERPの生産管理機能は、製造工程の可視化と効率化を実現する機能です。

生産管理機能によって製造工程を逐次確認し、改善点を見つける活動や、現場でのPDCAサイクルの促進にもつながります。

生産管理機能は以下をリアルタイムで把握できます。

  • 各工程の進捗状況
  • 作業スケジュール
  • 設備の稼働状況
  • 仕掛品の状態など

生産管理機能で、製造ラインのボトルネックの特定や、資材の不足や工程の遅延の通知もできます。これにより納期遅延の防止や歩留まりの改善、全体の生産性向上が可能です。

在庫管理

ERPの在庫管理機能は、在庫の最適化を支援する機能です。

具体的な在庫管理の機能として以下があります。

  • 原材料・製品などの在庫状況をリアルタイムで可視化
  • 入出庫履歴やロット情報、保管場所、使用期限などの一元管理
  • 需要予測や生産計画との連携

上記により在庫の適正化と棚卸業務の効率化、在庫回転率の向上を実現します。在庫管理機能により無駄のない調達・供給体制を構築でき、キャッシュフローの改善が可能です。

関連記事:ERPの導入で在庫管理の課題を解決!さらなる業務効率化へできることは?

設計管理

ERPの設計管理機能は、BOM(部品表)や図面、仕様書などの設計情報を一元管理できる機能です。

設計管理機能を用いると設計変更の履歴や影響範囲も追跡可能です。

これにより、設計部門と製造部門の連携がスムーズになり、設計ミスによる手戻りや品質トラブルの防止に寄与します。多品種少量生産においても、柔軟で正確な設計情報の共有が生産性と品質の両立をサポートするでしょう。

製造業では製品設計と製造プロセスの整合性が重要なため、不整合による手戻りを防ぐ効果を期待できます。

原価管理

ERPの原価管理機能は、製品ごとの製造原価や間接費を正確に把握できる機能です。

原価管理ができると、コスト構造の可視化と改善施策の立案がしやすくなります。

原価管理機能により、材料費、人件費、製造間接費をリアルタイムで集計し、部門別・工程別・製品別の原価分析が可能です。利益率の高い製品への経営資源の集中など、戦略的な意思決定にもつなげやすくなります。

原価管理機能により、収益性を可視化することで、経営の健全化にも大きく貢献します。

品質管理

ERPの品質管理機能は、不良品の発生や品質トラブルを未然に防ぐための情報基盤を整備する機能です。

品質管理機能で扱う情報として、以下があります。

  • 検査記録
  • クレーム対応履歴
  • 工程異常など

上記の一元管理により、トレーサビリティの確保が実現します。

品質管理機能により品質データをリアルタイムで分析することで、異常傾向の早期発見や迅速な是正措置も可能です。

品質管理機能を用いると、品質改善につながりやすくなるため、結果として、顧客満足度の向上やブランド信頼の維持に寄与します。

サプライチェーン管理

ERPのサプライチェーン管理機能は、仕入先の納期、在庫状況、販売予測などをリアルタイムで把握できる機能です。

サプライチェーン管理機能は、調達、生産、物流、販売といった供給網全体の情報を統合・可視化します。これにより、計画精度や対応力の大幅な向上が可能なため、最適な意思決定が可能になります。

特にグローバルな供給網を持つ企業では、拠点間の調整やリスク対応が重要です。納期遵守率の向上、在庫最適化、機会損失の回避など、経営全体の意思決定のスピード、安定性が欠かせません。

ERPのサプライチェーン管理機能で、迅速かつ安定した意思決定をサポートします。

ERPとほかの製造業向けシステムとの違い

ERPとよく似た製品として以下があります。

  • 生産管理システム
  • MES
  • PSI

それぞれの違いは業務スコープ、管理対象などがあります。ERPとそれぞれの違いを詳しく確認し、どちらを導入すべきかの判断に役立ててください。

ERPと生産管理システムの違い

ERPと生産管理システムの違いは利用できる業務のスコープです。

生産管理システムは、生産計画の立案や工程の進捗管理、製造指示など、工場内の生産活動に特化したシステムです。部品の手配、製造スケジュール、作業工程の管理など、製造現場の運用効率化を目的に利用します。

一方、ERPは生産管理システムの機能に加え、会計、人事、販売、在庫、調達などの情報も統合的に管理します。

つまり、生産管理システムが工場の中にフォーカスしているのに対し、ERPは工場を含む企業全体の最適化が可能な統合プラットフォームです。

ERPとMESの違い

ERPとMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の違いは管理対象です。

MESは、生産現場で実際に起きている作業をリアルタイムに把握・管理するためのシステムです。作業者の稼働、設備の状態、不良品の数などをリアルタイムで収集・分析し、生産活動を可視化します。

一方、ERPは戦略的な判断や経営計画に役立つデータを提供します。MESは「現場」の作業効率や品質を直接コントロールする役割と考えると分かりやすいでしょう。

まとめるとERPは経営層に向けた上位システムで、MESは現場に密着した下位システムです。ERPとMESを連携させることで、さまざまなメリットが得られます。

関連記事:ERPとMESの違いとは?製造業で役立つそれぞれの役割・連携メリットを徹底解説

ERPとPSIの違い

ERPとPSIの違いは利用できる業務のスコープです。

PSIは、Production(生産)、Sales(販売)、Inventory(在庫)を統合的に管理するシステムです。主に製造や販売のデータを基に、適正な在庫を維持しつつ、効率的な生産・販売を実現します。

一方でERPはPSIの3軸だけでなく、財務・会計・人事・購買などを含め、全社的な視点で情報を統合します。

PSIは、生産・販売・在庫に特化したシステムであり、ERPの一部機能を担うものと考えるとよいでしょう。

製造業のERP導入事例

ニチバン株式会社は、医療材からオフィス用品まで多岐にわたる製品を製造している企業です。従来は会計・購買・販売などの基幹システムがそれぞれパッケージを導入して利用、あるいは作成したシステムを用いていたため、連携が難しく、全社統一での効率化が難しい状況でした。

同社は海外市場への進出も見据えて、スピーディーにグローバル展開できるSAPソリューションを導入しました。

結果として、全社のデータが蓄積、整理され、意思決定の迅速化に貢献しています。

関連記事:ERP導入事例15選!事例から学ぶERP導入と活用の勘所を紹介

まとめ

製造業でERPを用いることで、DXの推進を実現できるだけでなく、製造業特有の課題の解消にもつながります。製造業でERPを導入する場合はランニングコストや、現場のシステムとの連携性に注意が必要です。

提供しているクラウドERPは従来のERPとは異なり、初期費用やハードウェア、セキュリティのコストを抑えやすいメリットがあります。

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