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業務フロー可視化の正しい進め方|『描くだけ』で終わらせない全社最適の視点

 クラウドERP導入ガイド編集部

「業務の属人化を防ぎたい」「非効率な業務を改善したい」といった課題から、多くの企業が「業務フローの可視化」に取り組んでいます。

しかし、時間をかけて業務フロー図を作成したものの、「現場の引き出しに眠ったまま活用されていない」「部分的な改善に留まり、大きな成果に繋がらない」といった経験はないでしょうか?

本記事では、業務フローを可視化する基本的な手法を解説しつつ、なぜ多くの取り組みが「描くだけ」で終わってしまうのか、その構造的な原因を解き明かします。そして、単なる可視化に留まらない、企業全体のパフォーマンスを最大化するための本質的な解決策を提示します。

業務フロー可視化とは?その目的と絶大なメリット

業務フロー可視化の定義:単なる「お絵描き」ではない

業務フロー可視化とは、業務の開始から終了までの一連の流れ、担当者(部門)、情報のやり取りなどを、誰が見ても理解できるように図や表で表現することです。

これは単なる「お絵描き」ではありません。その真の目的は、現状の業務プロセスを客観的に、かつ構造的に把握し、非効率な点や改善の糸口を科学的に見つけ出すことにあります。

可視化によって得られる3つの主要なメリット

正しく業務フローを可視化することで、企業は計り知れないメリットを享受できます。

  • メリット1:業務の属人化解消と標準化
    特定の担当者しか知らない、いわゆる「匠の技」や暗黙知となっている業務プロセスが、フロー図という形式知に変わります。これにより、担当者が変わっても業務品質を維持できるようになり、誰でも一定の品質で業務を遂行できる「標準化」の土台が築かれます。
  • メリット2:ボトルネックの特定
    業務全体の流れを俯瞰することで、特定の工程に時間がかかりすぎている、承認プロセスが多すぎる、手戻りが頻発している、といった非効率な部分(ボトルネック)が明確になります。問題箇所が特定できれば、具体的な改善策を検討することが可能になります。
  • メリット3:全社的な共通認識の醸成
    部門間の業務連携や情報の流れが明確になり、「隣の部署が何をやっているか分からない」という状況を解消できます。各部門が企業全体のプロセスの中でどのような役割を担っているのかを理解することで、組織としての一体感が生まれ、より円滑な連携が促進されます。
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業務フロー可視化の基本的な進め方と代表的な手法

まずは、読者の「やり方を知りたい」というニーズに応えるため、基本的な進め方と手法を解説します。

成功に導く4つのステップ

業務フローの可視化は、以下の4つのステップで進めるのが一般的です。

  • Step1:目的と対象範囲の明確化
    最も重要なステップです。「何のために、どの業務フローを可視化するのか」を最初に定義します。「新入社員向けの教育マニュアル作成のため」「請求書発行プロセスの時間短縮のため」など、目的が具体的であるほど、後の工程の精度が上がります。
  • Step2:関係者へのヒアリング
    実際に業務を行っている担当者から、詳細な手順、使用しているツールや帳票、判断基準、そして「実は非効率だと感じていること」などを徹底的に聞き出します。複数の担当者にヒアリングを行い、多角的な視点から情報を集めることが重要です。
  • Step3:フロー図の作成
    ヒアリング内容を基に、後述する手法を用いて図に落とし込みます。最初から完璧を目指すのではなく、まずはドラフトを作成し、関係者と認識をすり合わせながらブラッシュアップしていくのが成功のコツです。
  • Step4:レビューと改善策の立案
    作成したフロー図を関係者全員でレビューします。「この承認プロセスは本当に必要か?」「このデータ入力は自動化できないか?」といった議論を通じて課題を深掘りし、具体的な改善策を立案します。

代表的な可視化手法の紹介

業務フローの表現には、いくつかの標準的な手法が存在します。

  • フローチャート:
    JISなどで定められた記号(開始/終了、処理、判断など)を使い、プロセスの流れを表現する最も基本的な図法です。シンプルで分かりやすく、多くの場面で活用できます。
  • BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記):
    国際標準として定められている、より厳密な表記法です。誰が(スイムレーン)、何を(タスク)、どのように(ゲートウェイ)行うのかを詳細に表現でき、複雑な業務フローの可視化やシステム開発の要件定義にも適しています。

業務フロー可視化の「限界」:なぜ“描くだけ”で終わってしまうのか?

上記の手法で業務フローを可視化することは非常に重要ですが、多くの企業ではその取り組みが一過性のイベントで終わり、持続的な改善に繋がりません。なぜなら、従来の手法には構造的な「限界」があるからです。

限界1:分断された「点」の可視化しかできない

作成される業務フロー図は、あくまで特定の業務範囲を切り取った「点」の情報に過ぎません。

例えば、経理部門の「請求書発行フロー」、営業部門の「受注管理フロー」、製造部門の「生産計画フロー」はそれぞれ詳細に描くことができます。しかし、「営業の受注データが、どのように経理の請求データになり、製造の生産指示に繋がっているのか」という、部門間を流れる情報の連携までは表現しきれません。

結局、各部門のフローは可視化されても、部門間の連携は依然として手作業やExcelでのデータ受け渡しに依存したまま。これでは、組織全体の大きな非効率性は解消されません。

限界2:リアルタイム性に欠け、描いた瞬間から古くなる

業務フロー図は、作成した「時点」での業務を切り取った静的なスナップショットに過ぎません。

しかし、ビジネスは日々変化します。新しいツールの導入、組織変更、市場環境の変化、顧客からの新たな要求などによって、実際の業務フローは常に変わり続けます。時間と労力をかけて作成したフロー図も、描いた瞬間から少しずつ陳腐化が始まり、あっという間に実態と乖離してしまうのです。

限界3:「部分最適」な改善に留まり、全社的な効果が出にくい

可視化によって見つかった課題を改善しようとしても、その影響範囲は限定的になります。

ある部門でのフロー改善が、実は他部門の業務を圧迫していたり、全社的なコスト増に繋がっていたりしても、分断されたフロー図からはその影響を把握することができません。例えば、経理部門が承認プロセスを厳格化して内部統制を強化した結果、営業部門の申請工数が倍増し、顧客対応のスピードが落ちてしまう、といった「部分最適の罠」に陥りがちです。

「静的な可視化」から「動的な経営基盤」へ:ERPがもたらす本質的解決策

これらの「限界」を突破し、真の業務改善を実現するためには、発想の転換が必要です。それは、個別の業務フローを可視化するのではなく、企業全体の業務フローそのものを内包する「動的な経営基盤」を構築することです。その中核を担うのが、ERP(Enterprise Resource Planning)です。

ERPとは「常にリアルタイムで可視化された経営基盤」そのものである

ERPは、業務フローを可視化するための「ツール」ではありません。会計、販売、人事、生産といった企業の基幹業務プロセスそのものを内包し、常にリアルタイムで可視化し続ける「経営基盤」そのものと捉えるべきです。

ERPがもたらす3つの本質的価値

  • 価値1:分断された業務フローを「繋げる」
    ERPは、会計・販売・人事・生産などのデータを単一のデータベースで一元管理します。営業担当者が受注データを入力した瞬間、その情報は会計システムの売上見込や、製造部門の生産計画にリアルタイムで連携されます。これにより、これまで分断されていた各業務フローがデータで繋がり、企業全体の大きな一つの業務プロセスとして俯瞰できるようになります。
  • 価値2:静的なフロー図を「生きたデータ」に変える
    ERP上では、全ての業務がデータとして記録されるため、いつでも「今、現在の」業務フローの状況を正確に把握できます。描いて終わりではなく、経営状況をリアルタイムに反映した「生きた業務フロー」を常にモニタリングし、データに基づいた改善を継続的に行うことが可能になります。
  • 価値3:「部分最適」から「全社最適」へ
    ある業務の変更が、他部門のKPIや全社的な財務状況にどのような影響を与えるかを、データに基づいてシミュレーションできます。これにより、「部分最適」の罠を回避し、企業全体のパフォーマンスを最大化する、真に戦略的な業務改善が可能になるのです。

業務フロー可視化の真の目的:Fit to Standardによる業務改革

ERPという強力な経営基盤を手に入れたとき、業務フロー可視化の目的そのものが進化します。

ERP導入を成功に導く現代のアプローチ「Fit to Standard」とは

  • 旧来のアプローチ「Fit & Gap」との決別
    かつてのERP導入では、「Fit & Gap」という手法が主流でした。これは、まず自社の現行業務(As-Is)を可視化し、ERPの標準機能とのギャップ(Gap)を洗い出し、そのギャップを埋めるためにシステムを大規模に改修(アドオン開発)するアプローチです。しかし、これは現行の非効率な業務を温存する結果となり、コストと時間が膨らみ失敗の温床となってきました。
  • 「Fit to Standard」の定義
    これに対し、「Fit to Standard」は、自社の業務を、ERPに組み込まれた世界の優良企業のベストプラクティス(標準業務フロー)に合わせて変革していくという、全く逆の発想です。システムを自社に合わせるのではなく、自社をグローバル標準に合わせることで、抜本的な業務改革を実現します。

Fit to Standardにおける業務フロー可視化の新たな役割

このアプローチにおいては、業務フローの可視化は「現状(As-Is)をシステムで再現するため」に行うのではありません。

「ERPの標準フロー(To-Be)と自社の現状(As-Is)とのギャップを正しく認識し、そのギャップを埋めるための変革のロードマップを描くため」に可視化を行うのです。業務フローの可視化は、守るべき現状を描く作業から、目指すべき未来への地図を描く、極めて戦略的な活動へと昇華します。

Fit to Standardがもたらす具体的な経営メリット

このアプローチは、経営層にとって計り知れないメリットをもたらします。

  • 導入期間の短縮とコスト削減: 大規模なアドオン開発を抑制するため、プロジェクトの期間とコストを大幅に圧縮できます。
  • 継続的なアップデートの享受: システムが標準に準拠しているため、クラウドERPが提供する最新の法改正対応やテクノロジーの進化を、継続的に享受できます。システムが陳腐化しません。
  • グローバル標準の業務品質の獲得: 世界中の優良企業が実践する洗練された業務プロセスを自社に導入することで、内部統制の強化や業務品質の向上を実現できます。

まとめ:業務フローの可視化はゴールではなく、経営基盤を見直すスタート地点

本記事では、業務フロー可視化の基本的な進め方から、多くの企業が陥る「描くだけ」で終わってしまう限界、そしてその本質的な解決策までを解説しました。

業務フローの可視化は、業務の属人化解消や課題発見に有効な第一歩です。しかし、従来の手法だけでは「点の可視化」「静的な可視化」に留まり、根本的な解決には至りません。

真の業務改善と継続的な効率化を実現するためには、ERPという強固な経営基盤の上で、企業全体の業務フローを統合的に、かつリアルタイムに可視化することが不可欠です。そして、その変革を成功に導く現代的なアプローチが「Fit to Standard」です。

この記事をきっかけに、貴社の業務フロー可視化の取り組みが「描くだけ」で終わっていないか、今一度見直してみてはいかがでしょうか。それこそが、企業を新たな成長ステージへと導く、真の業務改革の第一歩となるはずです。

ストーリーでわかる!ERP基礎知識と導入のポイント
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