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リソース不足でも勝てる!
中小企業ならではの新規事業の作り方と成功事例

 クラウドERP導入ガイド編集部

リソース不足でも勝てる!中小企業ならではの新規事業の作り方と成功事例

市場環境の急激な変化や顧客ニーズの多様化に伴い、多くの中小企業において既存事業のみでの収益維持が難しくなっています。企業の持続的な成長を図るためには「新規事業」の創出が不可欠ですが、一方で「人手不足で現場に余裕がない」「資金やノウハウといったリソースが足りない」といった課題から、具体的な一歩を踏み出せずにいる経営者様も少なくありません。

しかし、リソースが限られている中小企業だからこそ、意思決定のスピードや柔軟性を武器に、ニッチな市場で優位性を築くことが可能です。成功の鍵は、自社の強み(コアコンピタンス)を深く理解し、スモールスタートで仮説検証を繰り返すこと、そしてIT基盤を活用してリソースを最大限に効率化することにあります。特に、どんぶり勘定を脱却し、ERP(統合基幹業務システム)などを活用して正確なデータに基づいた迅速な判断を行う体制を整えることが、リソース不足を補う強力な武器となります。

本記事では、中小企業がリソース不足を克服し、新規事業を成功させるための具体的なプロセスと、それを支える社内環境の整備について解説します。製造業やサービス業における実際の成功事例も交えながら、貴社の新たな収益の柱を作るための実践的なノウハウをご提示します。

この記事で分かること

  • 中小企業が新規事業に取り組むべき理由と得られるメリット
  • リソース不足でも実践できる新規事業立ち上げの5つのステップ
  • 成功確率を高めるための社内体制とERP等のIT活用法
  • 製造業やサービス業における中小企業の新規事業成功事例

中小企業が新規事業に取り組むべき理由とメリット

現代のビジネス環境において、中小企業や中堅企業が現状維持にとどまることは、緩やかな衰退を意味すると言っても過言ではありません。国内市場の成熟化やグローバル競争の激化など、企業を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。

年商100億〜2000億円規模の中堅企業であっても、既存の主力事業一本に依存し続けることは大きなリスクを伴います。ここでは、なぜ今、中小・中堅企業が新規事業に取り組むべきなのか、その本質的な理由とメリットについて解説します。

市場環境の変化に対応し企業の持続的成長を図る

かつてのように「良いモノを作れば売れる」という時代は終わりを告げました。顧客のニーズは多様化・細分化し、製品やサービスのライフサイクルは短縮化しています。このような市場環境の中で、企業が持続的に成長するためには、変化への適応力が不可欠です。

特に、既存事業の市場が成熟期あるいは衰退期に入っている場合、新たな収益の柱を構築することは急務です。新規事業への挑戦は、単なる売上アップのためだけではなく、企業の新陳代謝を促し、組織全体に革新の風を吹き込むという重要な意味を持ちます。

市場環境の変化に対応するために意識すべき点は以下の通りです。

  • 国内人口の減少に伴う既存市場の縮小への対策
  • デジタル技術の進化による産業構造の変化(DXの進展)
  • 顧客の価値観の変化と「モノ消費」から「コト消費」への移行
  • 予期せぬ外部環境の変化(パンデミックや地政学リスク)へのリスク分散

複数の事業を持つことは、経営のリスクヘッジにもつながります。一つの事業が不調でも、他の事業でカバーできる体制、いわゆるポートフォリオ経営を確立することで、企業としての生存確率は飛躍的に高まります。

ただし、事業が多角化すればするほど、経営管理は複雑になります。各事業の状況を正確に把握し、迅速な意思決定を行うためには、全社のデータをリアルタイムで可視化できる基盤が不可欠となることも忘れてはなりません。

既存事業の強みや技術を活かした多角化経営

「新規事業」というと、ゼロから全く新しいものを作り出すスタートアップのようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、中小・中堅企業における新規事業の最大の武器は、これまでに培ってきた「既存事業のリソース」にあります。

長年の事業活動で蓄積された技術力、ノウハウ、顧客基盤、ブランドへの信頼、そして安定したキャッシュフロー。これらは、ゼロから立ち上げるスタートアップにはない強力な資産です。これらを活用しない手はありません。

中小企業が新規事業を展開する際のアドバンテージを整理すると、以下のようになります。

比較項目 一般的なスタートアップ 中小・中堅企業の新規事業
資金力 調達が必要で不安定 既存事業の収益を投資可能
顧客基盤 ゼロから開拓 既存顧客へのクロスセルが可能
信用力 実績がなく低い 長年の実績による社会的信用がある
人材・技術 採用難易度が高い 社内の熟練技術やノウハウを転用可能

例えば、製造業であれば、培った加工技術を活かして医療機器分野へ参入したり、卸売業であれば、物流ネットワークを活かしてEC物流代行を始めたりといった展開が考えられます。自社の「コアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)」を見極め、それを新しい市場や顧客に適用することで、成功確率は格段に上がります。

既存事業と新規事業のシナジー(相乗効果)を生み出すことができれば、単なる足し算ではなく、掛け算での成長が期待できます。そのためには、部門ごとの個別最適ではなく、全社最適の視点でリソース配分を行う経営判断が求められます。

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リソース不足を克服する新規事業の作り方5つのステップ

リソース不足を克服する新規事業 5つのステップ 01 自社の強み(コアコンピタンス)の棚卸し 02 市場機会の探索とターゲット設定 03 ビジネスモデルの仮説構築 04 スモールスタートによる検証(PoC) 05 事業化判断と組織体制の整備 分析 検証 実行

中堅・中小企業が新規事業を立ち上げる際、最大の課題となるのが「ヒト・モノ・カネ」のリソース不足です。豊富な資金を持つ大企業と同じアプローチを取れば、リソースは瞬く間に枯渇し、事業継続が困難になります。しかし、限られたリソースを逆手に取り、機動力を活かしたプロセスを踏むことで、勝機を見出すことは十分に可能です。

ここでは、リソース不足を克服し、着実に事業を育てるためのプロセスを5つのステップに分解して解説します。

  1. 自社の強み(コアコンピタンス)の棚卸し
  2. 市場機会の探索とターゲット設定
  3. ビジネスモデルの仮説構築
  4. スモールスタートによる検証(PoC)
  5. 事業化判断と組織体制の整備

自社のコアコンピタンスと市場ニーズの分析

新規事業の成功確率は、自社の既存リソースをどれだけ有効活用できるかに左右されます。全くの未知の領域へ飛び込むのではなく、自社の強みと市場のニーズが交差する領域を見極めることが、最初の2ステップとなります。

ステップ1:自社の強み(コアコンピタンス)の棚卸し

まずは、自社が持つ有形無形の資産を客観的に評価します。技術力や特許だけでなく、顧客データベース、物流ネットワーク、あるいは従業員の専門知識なども重要な資産です。特に中堅企業においては、長年蓄積された「現場のデータ」や「顧客との信頼関係」が、他社が模倣できない独自の強みとなるケースが多く見られます。

ステップ2:市場機会の探索とターゲット設定

次に、その強みが活きる市場を探します。成長市場であることは重要ですが、競合がひしめくレッドオーシャンでは資金力勝負になりがちです。ニッチであっても、自社の強みによって顧客の未解決の課題(ペインポイント)を解決できる市場を選定します。

以下の表は、自社のリソースを分析し、市場機会とマッチングさせる際の視点を整理したものです。

分析視点 具体的な確認項目 新規事業への活用イメージ
技術・ノウハウ 特許、製造プロセス、専門資格保有者 既存技術の転用による新製品開発
顧客基盤 取引先数、業界シェア、顧客属性データ 既存顧客へのクロスセル、新サービスの提供
オペレーション 物流網、生産体制、品質管理基準 他社製品のOEM受託、プラットフォーム化
データ資産 受発注履歴、稼働データ、顧客の声 データ分析に基づくコンサルティングサービスの展開

スモールスタートでの仮説検証と改善サイクル

リソースが限られている場合、最初から完璧な製品やサービスを目指すのはリスクが高すぎます。最小限の機能を持ったプロダクト(MVP:Minimum Viable Product)で市場に参入し、顧客の反応を見ながら修正を繰り返すアプローチが不可欠です。

ステップ3:ビジネスモデルの仮説構築

「誰に」「何を」「どのように」提供し、どうやって収益を上げるかというビジネスモデルの仮説を立てます。この段階では、収益性だけでなく、既存事業のリソースをどの程度流用できるか、コスト構造を詳細にシミュレーションしておく必要があります。

ステップ4:スモールスタートによる検証(PoC)

構築した仮説を検証するために、小規模な実証実験(PoC)を行います。例えば、特定のエリアや既存の優良顧客のみを対象にテスト販売を行うなどが挙げられます。このフェーズでの目的は、売上を上げることではなく、「顧客はお金を払ってでもその課題を解決したいと思っているか」を確認することです。

  • 顧客の反応は想定通りか(定性・定量データの収集)
  • 提供コストは予算内に収まるか
  • オペレーション上のボトルネックはどこか
  • 既存事業への悪影響(カニバリズム等)はないか

このサイクルを高速で回し、撤退ラインを明確にしておくことで、致命的な失敗を防ぎつつ、事業の精度を高めることができます。

意思決定のスピードを最大化する組織体制の構築

検証フェーズを経て、いよいよ本格的な事業化へと進む段階です。ここで重要になるのが、迅速な意思決定を可能にする組織体制と、それを支える情報基盤です。

ステップ5:事業化判断と組織体制の整備

新規事業は不確実性の塊です。既存事業と同じ評価軸や決裁フローを適用すると、意思決定が遅れ、市場の変化に追いつけなくなる恐れがあります。そのため、新規事業部門には一定の権限委譲を行い、トライアンドエラーを許容する柔軟な組織設計が求められます。

また、事業拡大のフェーズでは、正確な経営判断を下すために、リアルタイムな数値管理が欠かせません。部門ごとにデータが散在している状態では、全社的なリソース配分の最適化が困難になります。

新規事業を成功させるためには、どんぶり勘定を脱し、事業ごとの収益性や進捗を可視化する仕組みが必要です。これにより、経営層は「投資を継続すべきか、撤退すべきか」をデータに基づいて即座に判断できるようになります。次章では、こうした環境を実現するための具体的な社内環境とIT基盤について解説します。

新規事業を成功に導くための社内環境とIT基盤

新規事業成功のためのIT基盤シフト 従来の課題 (Before) 営業 製造 経理 「情報のサイロ化」 部門間の連携不足 Excel手作業 どんぶり勘定 意思決定の遅れ・機会損失 (過去の数字での判断) システム統合 ERP導入後 (After) ERP 一元管理 営業 製造 経理 「全社での情報共有」 リアルタイムな連携 正確な数値 迅速な経営判断 (新規事業の成功率向上)

新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるためには、優れたアイデアや市場の選定だけでは不十分です。変化の激しい市場環境において、スピーディーかつ的確な意思決定を行うための「社内環境」と「IT基盤」の整備が不可欠となります。

特に、年商規模が数十億から数百億円の中堅・中小企業においては、組織が拡大する過程でシステムが部門ごとに個別最適化され、データの連携が取れていないケースが散見されます。本章では、新規事業を成功させるために必要な情報共有の仕組みと、それを支えるIT基盤について解説します。

部門間の壁を取り払い全社で情報を共有する

新規事業の創出において最も避けるべきは、組織の縦割りによる「情報のサイロ化」です。既存事業の部門と新規事業チームの間で情報共有がなされていないと、社内のリソースを有効活用できないばかりか、顧客へのアプローチが重複するなど、機会損失を招く恐れがあります。

例えば、営業部門が持つ顧客の潜在ニーズや、製造部門が持つ技術的な知見は、新規事業にとって貴重な資産です。これらを部門を超えてリアルタイムに共有できる環境を作ることで、全社一丸となって新規事業を推進する体制が整います。

  • 既存事業の顧客データを新規事業のマーケティングに活用する
  • 開発、製造、営業が連携し、顧客フィードバックを即座に製品改善へ反映する
  • 部門ごとの利害対立を防ぎ、全社最適の視点でリソース配分を行う

組織の壁を取り払うことは、単なる精神論ではなく、情報をシームレスに流通させる仕組み作りと言えます。

どんぶり勘定からの脱却とリアルタイムな数値管理

新規事業は不確実性が高いため、撤退ラインの判断や追加投資の意思決定を迅速に行う必要があります。しかし、多くの企業では、各部門からExcelで集めたデータを経理部が手作業で集計しており、経営層の手元に月次決算が届くまでにタイムラグが発生しています。

「どんぶり勘定」や「遅れた数値」での判断は、新規事業においては致命傷になりかねません。どの事業がどれだけの利益を生み出しているのか、あるいは赤字なのかを、プロジェクト別や部門別にリアルタイムで把握できる体制が必要です。

中小企業基盤整備機構の調査においても、DXに期待する成果として「データに基づく意思決定」が挙げられており、直感や経験だけでなく、客観的な数値に基づく経営判断の重要性が高まっています。

経営判断を加速させるERP活用の重要性

前述した「全社的な情報共有」と「リアルタイムな数値管理」を同時に実現するための有効な手段が、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)の導入です。

従来、会計、販売、在庫、人事などのシステムがバラバラに稼働していた状態から、ERPを用いてこれらを一つのデータベースに統合することで、経営資源の状況を「見える化」できます。これにより、経営者は「今、会社で何が起きているか」を即座に把握し、次の一手を打つことが可能になります。

Excelによる個別管理と、ERPによる統合管理の違いを整理すると以下のようになります。

比較項目 Excelや個別システムによる管理 ERPによる統合管理
データの整合性 転記ミスやバージョンの不一致が起きやすい 一元管理され、常に最新かつ正確なデータ
情報の鮮度 集計に時間がかかり、過去の数字になりがち 入力と同時に反映され、リアルタイムに把握可能
部門間の連携 データの受け渡しに手間がかかり、断絶しやすい 部門を跨いでデータが自動連携される
経営判断の速度 会議のための資料作成に時間を要する ダッシュボード等で瞬時に状況を確認できる

特に新規事業においては、市場の反応を見ながら柔軟に計画を修正する「アジャイルな経営」が求められます。老朽化したレガシーシステムや、属人化したExcel管理から脱却し、ERPを中核としたデジタル基盤を構築することは、企業の持続的成長を支える投資と言えるでしょう。

また、中小企業庁の中小企業白書でも指摘されている通り、デジタル化による業務効率化は、人手不足の解消だけでなく、高付加価値業務へのシフトを可能にします。ERPによって定型業務を自動化・効率化し、空いたリソースを新規事業の企画や顧客対応などのコア業務に集中させることが、成功への近道です。

中小企業における新規事業の成功事例

中小企業における新規事業の成功モデル 事例1:製造業の転換 変革前:モノ売り 情報の分断・サイロ化 変革後:コト売り 全社統合DBで連携 IoT活用・予知保全 ストック収益の確保 事例2:食品業の拡大 変革前:アナログ管理 紙・Excel・どんぶり勘定 変革後:D2C進出 基幹システム刷新 原価・在庫の見える化 売上構成比3割へ急成長 成功の共通鍵 社内データの統合と、迅速な意思決定を行えるデジタル基盤の整備

新規事業の立ち上げは、多くの企業にとって容易なことではありません。しかし、リソースに限りがある中小・中堅企業であっても、自社の強みを正しく理解し、適切なデジタル基盤を整えることで大きな成功を収めている事例は数多く存在します。

ここでは、既存のビジネスモデルを変革し、新たな収益の柱を構築した2つの成功事例を紹介します。共通しているのは、単なるアイデア勝負ではなく、社内のデータを統合し、迅速な意思決定を行える環境を整備したことが成功の鍵となっている点です。

製造業から高付加価値サービス業へ転換した事例

ある中堅産業機械メーカーでは、長年「高品質な製品を作って売る」というモノ売りビジネスを展開してきました。しかし、市場のコモディティ化が進み、価格競争が激化する中で、利益率の低下という課題に直面していました。

そこで同社は、製品販売後の「保守・メンテナンス」に着目し、単なる修理対応ではなく、IoTを活用した予知保全や稼働最適化提案を行う「サービス業」への転換(サービタイゼーション)を新規事業として立ち上げました。

  • 顧客ごとの機械稼働データをリアルタイムで収集
  • 過去のメンテナンス履歴と設計データを紐づけて分析
  • 故障前に部品交換を提案するサブスクリプションモデルの導入

この新規事業を成功させるためには、従来分断されていた「製造部門」「営業部門」「サポート部門」の情報をシームレスに連携させる必要がありました。部門ごとに管理されていたExcelや個別システムを廃止し、統合データベースへ移行したことで、顧客の状況を全社でリアルタイムに把握できるようになったのです。

その結果、顧客満足度の向上とともに、安定したストック収益の確保に成功しました。この事例は、部門間の壁を取り払い全社で情報を共有する体制がいかに重要かを示しています。

比較項目 変革前(モノ売り) 変革後(コト売り)
収益モデル 製品販売時の売り切り型
(スポット収益)
保守契約・サブスクリプション
(ストック収益)
データ管理 部門ごとの個別管理
(情報のサイロ化)
全社統合管理
(リアルタイム共有)
顧客関係 トラブル発生時の受動的対応 データに基づく能動的提案

アナログ管理からデジタル化で事業拡大した事例

次に、老舗の食品加工・卸売企業の事例を紹介します。この企業では、長年特定の地域や問屋への卸売りを中心としてきましたが、市場ニーズの変化に対応するため、新たにD2C(消費者への直接販売)ブランドの立ち上げを計画しました。

しかし、当時の社内体制は、受発注や在庫管理を紙の伝票や担当者個人のExcelで行う「どんぶり勘定」に近い状態でした。このままでは、多品種少量生産が求められるD2C事業において、在庫ロスや欠品、配送遅延が多発することは明白でした。

そこで経営陣は、新規事業の開始に合わせて基幹業務システムの刷新を決断しました。生産管理、在庫管理、販売管理、会計を一つのシステムで統合し、原価や利益率をリアルタイムで見える化することに取り組んだのです。

  • 原材料の賞味期限と在庫数を正確に把握し、廃棄ロスを削減
  • ECサイトからの受注データと生産計画を自動連携
  • 製品ごとの正確な原価計算により、収益性の高い商品を特定

正確な数値管理が可能になったことで、経営陣は「どの商品に投資すべきか」「撤退すべきラインはどこか」を即座に判断できるようになりました。結果として、新規事業であるD2Cブランドは急成長し、全社の売上構成比の3割を占めるまでに拡大しました。

この事例からわかるように、新規事業を軌道に乗せるためには、直感や経験だけに頼るのではなく、正確なデータに基づいた経営判断を可能にするIT基盤(ERPなど)が不可欠です。リソースが限られる中堅・中小企業だからこそ、デジタル活用による業務の効率化と経営の見える化が、競争優位性の源泉となります。

中小企業の新規事業に関するよくある質問

中小企業が新規事業に活用できる補助金にはどのようなものがありますか?

代表的なものとして、事業再構築補助金やものづくり補助金などが挙げられます。これらは新規事業の立ち上げに伴う設備投資やシステム開発費用の負担を軽減するために活用可能です。各補助金には申請要件や公募期間が定められているため、中小企業庁や支援機関の最新情報を確認することをおすすめします。

新規事業のアイデアが思いつかない場合はどうすればよいですか?

自社の強みや保有技術であるコアコンピタンスを棚卸しし、それを解決できていない市場の課題と組み合わせる方法が有効です。また、既存顧客からの要望やクレームの中に新しいビジネスのヒントが隠されていることも多いため、営業担当者やカスタマーサポートの声を集めることから始めてみてください。

リソース不足の中で新規事業を成功させるためのポイントは何ですか?

最初から大規模な投資を行わず、スモールスタートで始めることが重要です。最小限の機能やサービスで市場に出し、顧客の反応を見ながら改善を繰り返すことで、リスクを抑えながら事業を育てることができます。また、不足しているリソースについては、外部のパートナー企業やフリーランスへの委託も検討してください。

新規事業の撤退基準はどのように決めるべきですか?

撤退基準は事業を開始する前に明確な数値で設定しておく必要があります。例えば、特定の期間内での売上目標未達や、許容できる赤字額の上限到達などを基準にします。事前にルールを決めておくことで、サンクコストにとらわれず、客観的かつ迅速な撤退やピボットの判断が可能になります。

新規事業の立ち上げ段階からシステム導入は必要ですか?

立ち上げ初期の検証段階では必須ではありませんが、事業が本格化する前には情報共有や数値管理の基盤を整えることが望ましいです。特に事業が拡大するにつれてデータ管理が複雑になるため、早期にデジタル環境を整備しておくことで、その後の意思決定スピードや業務効率に大きな差が生まれます。

まとめ

本記事では、リソースに限りがある中小企業が新規事業を成功させるためのステップや、成功事例、そして社内環境づくりの重要性について解説しました。変化の激しい市場環境において、企業の持続的な成長を図るためには、既存事業の強みを活かした多角化経営への挑戦が不可欠です。

中小企業が新規事業で勝つための鍵は、自社のコアコンピタンスを正しく理解し、スモールスタートで仮説検証を繰り返しながら、大企業にはないスピード感で意思決定を行うことにあります。そして、その迅速な判断を支えるのが、部門間の壁を取り払い、正確な数値をリアルタイムで把握できる社内体制です。

特に、どんぶり勘定から脱却し、事業ごとの収益性を精緻に管理するためには、ERP(統合基幹業務システム)の活用が非常に有効な手段となります。ERPによって全社のデータを一元管理することで、新規事業の予実管理が容易になり、経営判断の精度と速度を飛躍的に高めることができます。

新規事業を軌道に乗せ、さらなる企業成長を実現するための強固な基盤として、まずは自社の課題に合ったERPの情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。適切なIT基盤の構築は、挑戦する中小企業にとって強力な武器となるはずです。

3 つのインサイト:成長志向の組織における財務の拡大
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クラウドERP導入ガイド編集部
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