この記事で分かること
- ERPの定義と基幹システムとの違い
- 導入によるメリットと業務効率化の効果
- SAPなど代表的な製品の種類と選び方
DX推進や業務効率化の鍵として、ヒト・モノ・カネといった経営資源を一元管理する「ERP software」の重要性が高まっています。しかし、SAPをはじめとする海外製品から国産のクラウド型まで種類は多岐にわたり、自社に最適なシステムの選定は容易ではありません。本記事では、ERPの定義から導入メリット、主要機能、そして失敗しない選び方までを網羅的に解説します。正しい知識を身につけ、データドリブンな経営判断を実現する第一歩を踏み出しましょう。
ERP softwareとは何か
ERP software(Enterprise Resource Planning)とは、日本語で「企業資源計画」と訳され、企業の持つ資金や人材、設備、資材、情報といったあらゆる経営資源を一つのシステムで統合的に管理・活用する考え方、およびそのためのソフトウェアを指します。一般的には「統合基幹業務システム」とも呼ばれています。
かつて製造業における生産管理手法として生まれたMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)の概念を、企業全体の経営資源管理へと発展させたものがERPの起源です。現在では、製造業に限らず小売、サービス、商社などあらゆる業種において、経営の効率化と意思決定の迅速化を実現するための不可欠なITインフラとして定着しています。
ERPの定義と基幹システムとの違い
ERPの導入を検討する際、従来の「基幹システム」と何が違うのかという疑問を持つ経営者や担当者は少なくありません。両者の最大の違いは、システムの「統合性」とデータの「一元管理」にあります。
従来の基幹システムは、会計システム、販売管理システム、人事給与システム、生産管理システムなどが、それぞれの業務部門ごとに個別最適化された状態で導入されているケースが一般的でした。これに対しERPは、これら全ての業務アプリケーションを単一の統合データベース上で稼働させます。
基幹システムとERPの違いを整理すると以下のようになります。
| 比較項目 | 従来の個別基幹システム | ERP software |
|---|---|---|
| データの管理方法 | システムごとにデータベースが分散 | 統合データベースで一元管理 |
| データ入力の手間 | 部門間で転記や二重入力が発生しやすい | 一度の入力で全業務にリアルタイム反映 |
| 情報の整合性 | タイムラグや転記ミスによる不整合のリスク | 常に整合性が保たれた「唯一の正しい情報」 |
| 経営情報の把握 | 各システムのデータを集計・加工する時間が必要 | リアルタイムに全社の経営数値を可視化 |
このように、従来のシステムが「業務処理の効率化」を主眼に置いていたのに対し、ERPは業務処理だけでなく、経営資源全体の最適化と経営判断のスピードアップを目的としている点が定義上の大きな特徴です。
経営資源を統合管理する仕組み
ERPが経営資源を統合管理できるのは、すべての業務モジュール(機能)が共通のデータベースを参照・更新する仕組みになっているからです。
例えば、販売部門で製品の受注入力を行うと、その情報は即座に在庫管理モジュールに反映され在庫が引き当てられます。同時に、生産管理モジュールでは生産計画が必要に応じて修正され、会計モジュールでは売掛金が発生し、将来的には財務諸表へと自動的に集計されます。
- 販売管理:受注データ入力
- 在庫管理:在庫情報の自動更新・引当
- 生産管理:所要量計算と製造指図の連携
- 会計管理:売上・売掛金の自動仕訳作成
この仕組みにより、部門間での電話やメールによる在庫確認、Excelデータのバケツリレー、月末の締め処理におけるデータ突合といった非効率な作業が不要になります。組織の壁を越えて情報がシームレスに流れることで、業務プロセスの標準化と全体最適が実現されるのです。
なぜ今ERP softwareが必要とされるのか
近年、多くの中堅・大企業でERPの新規導入や刷新が加速している背景には、ビジネス環境の激しい変化とDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応があります。
経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」でも指摘されている通り、老朽化・複雑化した既存のレガシーシステム(ブラックボックス化したシステム)を使い続けることは、維持管理コストの高騰だけでなく、新しいデジタル技術の導入を阻害し、企業競争力を低下させる要因となります。DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格展開~(経済産業省)
市場の変化スピードが上がっている現代において、月次決算が締まるまで経営状況が分からないというタイムラグは致命的です。経営層が正しい意思決定を行うためには、今この瞬間の売上、利益、キャッシュフローを正確に把握する必要があります。
また、働き方改革やリモートワークの普及に伴い、場所を選ばずに業務を行える環境構築も急務です。こうした課題に対し、クラウド型ERPをはじめとする最新のERP softwareは、リアルタイムな経営情報の可視化と柔軟な業務環境を提供できる基盤として、その必要性が再認識されています。
企業がERP softwareを導入するメリット
企業がERP software(統合基幹業務システム)を導入する最大の目的は、単なる業務処理の効率化にとどまらず、経営基盤そのものを強化することにあります。特に、年商規模が拡大し組織が複雑化した中堅企業においては、部門ごとに最適化されたシステムやExcelによる管理が限界を迎えつつあるケースが少なくありません。
ERPを導入することで、企業内に散在するヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を一元管理し、全体最適を実現することが可能になります。ここでは、経営層や事業責任者が押さえておくべき、ERP導入による具体的な3つのメリットについて解説します。
経営情報の可視化とリアルタイムな意思決定
多くの企業では、会計、販売、在庫、人事といったデータが異なるシステムで管理されており、経営会議のたびに各部門からデータを集め、Excelで加工・集計するといった作業が発生しています。この「バケツリレー」方式では、数字が確定するまでにタイムラグが生じ、また手作業によるミスのリスクも排除できません。
ERP softwareを導入する最大のメリットは、これら全てのデータが単一のデータベースに統合される点にあります。販売部門が受注を入力すれば、即座に在庫情報や売上予測、会計データへと反映されます。経営層は、今まさに起きている企業の状況をリアルタイムかつ正確に把握し、データに基づいた迅速な意思決定を下すことができるようになります。
市場環境の変化が激しい現代において、月次決算を待たずに日次単位で損益状況をモニタリングできる環境は、競争優位性を保つための強力な武器となります。
業務標準化による全社的な生産性の向上
長年事業を継続している企業ほど、業務プロセスが属人化し、特定の担当者しか処理内容が分からないといった「ブラックボックス化」が進んでいる傾向があります。また、部門ごとに独自のルールでシステム運用を行っているため、全社的な業務フローの連携がスムーズにいかないという課題も散見されます。
ERPパッケージには、多くの先進企業で採用されている効率的な業務プロセス(ベストプラクティス)があらかじめ実装されています。ERPの導入に合わせて自社の業務フローを見直し、システムに合わせて標準化することで、無駄な業務や二重入力を削減できます。
- 部門間でのデータ転記作業の削減
- 承認プロセスの電子化とスピードアップ
- 属人化の解消による業務引き継ぎの円滑化
このように業務プロセスを標準化することは、単なる工数削減だけでなく、人材の流動性を高め、組織全体の生産性を底上げする効果も期待できます。
ガバナンス強化と内部統制への対応
企業規模が拡大し、IPO(新規株式公開)を目指す段階や、社会的責任が増す中堅企業においては、内部統制の強化が避けて通れない課題です。Excelや個別のレガシーシステムでは、誰がいつデータを修正したかの履歴(ログ)が残りにくく、データの改ざんや情報漏洩のリスク管理が困難な場合があります。
ERP softwareは、ユーザーごとの細かいアクセス権限設定や、操作ログの自動記録、承認ワークフローの強制といった機能を標準で備えています。これにより、不正会計やデータ改ざんを未然に防ぐ仕組みを構築できます。
| 項目 | 従来の個別システム・Excel管理 | ERP software導入後 |
|---|---|---|
| データ整合性 | 部門間で数値が合わず、調整に時間がかかる | 統合DBにより常に整合性が保たれる |
| セキュリティ | ファイル単位での管理で持ち出しリスクが高い | 一元的な権限管理とログ監視が可能 |
| 監査対応 | 資料収集や証跡確認に膨大な工数を要する | システム上の証跡により監査対応がスムーズ |
また、法改正への対応もベンダー側でサポートされることが多いため、コンプライアンス維持のコストを抑えつつ、堅牢なガバナンス体制を構築し、対外的な信用力を高めることができる点も大きなメリットです。
ERP softwareの主な機能一覧
ERP software(統合基幹業務システム)は、企業の経営資源を一元管理するために、複数の業務アプリケーションが統合されたシステムです。個別の業務パッケージソフトとは異なり、すべてのデータが単一のデータベースに集約されている点が最大の特徴です。
これにより、ある業務で入力されたデータは即座に他の業務機能へ反映され、部門をまたぐ情報連携がシームレスに行われます。ここでは、ERPを構成する主要な機能と、それらが経営にもたらす価値について解説します。
会計管理と財務管理機能
会計管理はERPの中心となる機能であり、企業の金銭的な活動を記録・管理します。従来の会計ソフトとの大きな違いは、販売や購買、給与といった他部門のシステムから、仕訳データが自動的に連携される点です。
例えば、販売管理機能で売上が計上されると、同時に会計機能で売掛金と売上の仕訳が自動生成されます。これにより、経理担当者がデータを再入力する手間や転記ミスが排除され、決算処理の早期化が実現します。
財務会計と管理会計のリアルタイム連携
ERPの会計機能は、外部報告用の「財務会計」だけでなく、経営判断のための「管理会計」においても強力な効果を発揮します。部門別、プロジェクト別、製品別といった詳細なセグメントで損益をリアルタイムに把握できるため、経営層は月次決算を待たずに現状を分析し、迅速な意思決定を行うことが可能になります。
- 財務会計(一般会計、債権債務管理、固定資産管理など)
- 管理会計(予算管理、原価管理、部門別損益管理など)
- グローバル対応(多通貨、多言語、各国の税制対応)
販売管理と在庫購買管理機能
企業の収益源である販売活動と、それに伴うモノの流れを管理する機能です。見積もりから受注、出荷、売上計上、請求までの一連のプロセスを管理します。ERPにおいては、これらが在庫管理や購買管理と密接に連動していることが重要です。
サプライチェーン全体の最適化
受注データが在庫データとリアルタイムに連動するため、営業担当者は正確な納期を即答でき、機会損失を防げます。また、在庫が不足しそうな場合には、購買管理機能を通じて自動的に発注勧告が出されるなど、適正在庫の維持に貢献します。部門間でExcelによる在庫管理表が乱立している状況を解消し、全社的な在庫の見える化を実現します。
| 機能 | 主な役割 | ERP導入による効果 |
|---|---|---|
| 販売管理 | 見積、受注、出荷、請求の管理 | 在庫・生産状況を踏まえた正確な納期回答 |
| 在庫管理 | 受払、在庫移動、棚卸の管理 | 実在庫と帳簿在庫の差異削減、過剰在庫の防止 |
| 購買管理 | 発注、入荷、仕入検収の管理 | 生産計画や受注に基づいた適時適量の調達 |
人事給与管理機能
従業員の属性情報、勤怠、給与計算、社会保険などを管理する機能です。ERPでは、単なる事務処理の効率化にとどまらず、人材を経営資源として活用する「人的資本経営」の基盤としての役割が期待されています。
タレントマネジメントと工数管理の統合
従業員のスキルや資格、経歴を一元管理することで、最適な人員配置や育成計画の立案が可能になります。また、プロジェクト管理機能と連携し、従業員の作業時間をプロジェクトごとの原価として配賦することで、正確な労務費管理を実現します。これにより、プロジェクトごとの採算性が明確になり、より精度の高い経営判断に寄与します。
生産管理とプロジェクト管理機能
製造業においては生産管理、ITや建設などのプロジェクト型ビジネスにおいてはプロジェクト管理が、業務の中核を担います。これらの機能は、原価管理や工程管理の精度を左右する重要な要素です。
原価の見える化と工程の進捗管理
生産管理機能では、生産計画に基づき、所要量計算(MRP)を行って必要な材料を手配し、製造工程の進捗を管理します。ERPを導入することで、予定原価と実際原価の差異をリアルタイムに分析できるようになります。
プロジェクト管理機能では、プロジェクトごとの予算と実績(売上、原価、利益)を対比して管理します。進行中のプロジェクトの採算悪化を早期に検知できるため、赤字プロジェクトの発生を未然に防ぐ対策が打てるようになります。経営資源を統合管理することで、部分最適ではなく全社最適の視点から生産性向上を図ることができます。
ERP softwareの種類と提供形態
ERP softwareを導入する際は、自社の課題解決や経営戦略に合致したシステムを選定することが重要です。ERPは大きく分けて「提供形態」「機能の範囲」「開発手法」の3つの観点から分類できます。それぞれの特徴を理解し、予算や運用体制に見合った種類を選ぶことが、導入プロジェクトを成功させるための第一歩となります。
クラウド型ERPとオンプレミス型ERP
システムの提供形態、つまり「どこにデータやシステムを置いて運用するか」によって、クラウド型とオンプレミス型に分けられます。近年では、導入スピードの速さや運用負荷の軽減といったメリットから、クラウド型を選択する企業が増加しています。
クラウド型ERP
インターネットを経由して、ベンダーが管理するサーバー上のシステムを利用する形態です。自社で物理的なサーバーを持つ必要がないため、初期費用を大幅に抑えられ、短期間での導入が可能です。法改正への対応やセキュリティ対策、機能のアップデートはベンダー側で実施されるため、社内のIT人材リソースをコア業務に集中させることができます。また、インターネット環境があれば場所やデバイスを選ばずにアクセスできるため、テレワークや多拠点展開にも柔軟に対応します。
- 初期投資が少なく、月額利用料での運用が一般的
- サーバー保守やメンテナンスの手間が不要
- 常に最新の機能やセキュリティ環境を利用可能
オンプレミス型ERP
自社内のサーバーにソフトウェアをインストールして運用する形態です。自社のセキュリティポリシーに基づいた厳格なデータ管理が可能であり、工場内の特殊なシステムとの連携や、独自の業務プロセスに合わせた高度なカスタマイズを行いやすい点が特徴です。一方で、サーバー機器の購入やネットワーク構築に多額の初期投資が必要となり、導入までの期間も長くなる傾向があります。また、システムの保守・運用を自社で行う必要があるため、専門知識を持った人材の確保が求められます。
| 比較項目 | クラウド型ERP | オンプレミス型ERP |
|---|---|---|
| 初期費用 | 安価(月額課金が主流) | 高額(サーバー構築・ライセンス購入) |
| 導入期間 | 短い(数ヶ月〜) | 長い(半年〜1年以上) |
| カスタマイズ性 | 制限がある場合が多い | 高い(柔軟に対応可能) |
| 運用・保守 | ベンダーが実施 | 自社で実施 |
統合型ERPとコンポーネント型ERP
ERP softwareがカバーする「業務機能の範囲」による分類です。全社的な改革を一気に進めるのか、優先度の高い課題から解決するのかによって選択が分かれます。
統合型ERP(オールインワン型)
会計、販売、在庫、生産、人事・給与など、企業の基幹業務に必要な機能を網羅的に備えているタイプです。すべてのデータが単一のデータベースで統合管理されるため、部門間のデータ連携作業が不要になり、リアルタイムな経営情報の可視化が実現します。経営資源を全体最適化し、業務プロセスの標準化を全社規模で推進したい場合に適しています。
コンポーネント型ERP(業務ソフト型)
「会計と販売のみ」「在庫管理のみ」といったように、必要な業務機能(モジュール)を選択して導入できるタイプです。特定の部門や業務に緊急の課題がある場合や、予算を抑えてスモールスタートしたい場合に有効です。また、既存のシステムを残しつつ、老朽化した部分だけをERPに置き換えるといった柔軟な導入も可能です。必要に応じて後から機能を追加し、段階的に適用範囲を広げていくこともできます。
パッケージ型とスクラッチ開発
システムを「どのように構築するか」という開発手法による違いです。かつては大企業を中心にスクラッチ開発が行われていましたが、現在ではパッケージ型の採用が一般的です。
パッケージ型
多くの企業で共通して使える汎用的な機能をあらかじめ備えた既製品のソフトウェアを利用する方法です。ERPベンダーが蓄積した各業界の「ベストプラクティス(成功事例に基づく最適な業務プロセス)」が実装されています。システムに合わせて自社の業務フローを見直すことで、業務の標準化や効率化を短期間で実現できます。ゼロから開発する必要がないため、品質が安定しており、導入コストと期間を大幅に圧縮できるのがメリットです。
スクラッチ開発(フルスクラッチ)
自社の業務に合わせて、システムをゼロから独自に開発する方法です。独自の商習慣や特殊な業務プロセスに完全にフィットしたシステムを構築できる反面、膨大な開発コストと期間がかかります。また、システムの仕様が複雑になりやすく、開発担当者が不在になるとメンテナンスが困難になる「属人化」のリスクも伴います。現在では、変化の激しいビジネス環境に迅速に対応するため、パッケージ型を採用して業務を標準化する「Fit to Standard」の考え方が主流となっています。
自社に合ったERP softwareの選び方
ERP softwareの導入は、企業にとって決して小さくない投資です。導入に成功すれば業務効率の劇的な向上や経営判断の迅速化といった大きなリターンが得られますが、選定を誤れば現場の混乱やコストの増大を招きかねません。
特に年商100億〜2000億円規模の中堅企業においては、大企業のような潤沢なリソースがあるわけではなく、一方で小規模企業よりも業務プロセスが複雑であるため、システム選定の難易度が高くなりがちです。自社の身の丈に合い、かつ将来の成長を支えてくれる最適なERPを選ぶためには、機能の有無だけでなく、導入の目的やベンダーの信頼性、コスト構造などを多角的に検討する必要があります。
ここでは、数あるERP製品の中から自社に最適なソリューションを選定するための重要なポイントを解説します。
自社の課題と導入目的の明確化
ERP選定の第一歩は、カタログを集めることでもデモを見ることでもなく、「なぜERPを導入するのか」という目的を明確にすることです。多くの企業が陥りがちな失敗として、現行の業務プロセスをそのままシステムに置き換えようとしてしまうケースが挙げられます。
しかし、ERP導入の本質的な価値は、業務の標準化と全体最適化にあります。現在の業務課題を洗い出し、あるべき姿(To-Be)を描いた上で、それを実現するための手段としてERPを選定するという順序が重要です。
現状分析と課題の洗い出し
まずは社内の各部門にヒアリングを行い、現状のシステムや業務フローにおける課題を可視化します。「二重入力が発生している」「在庫データがリアルタイムで反映されない」「部門ごとにExcelでの管理が乱立している」といった具体的な痛みをリストアップしましょう。
その上で、それらの課題を解決するためにERPに何を求めるのか、優先順位をつけます。全ての要望を満たすシステムは存在しないか、存在したとしても莫大なカスタマイズ費用がかかります。経営戦略上、譲れない要件と妥協できる要件を明確に切り分けておくことが、スムーズな選定の鍵となります。
RFP(提案依頼書)の作成
要件が固まったら、それをRFP(Request For Proposal:提案依頼書)として文書化し、ベンダーに提示します。RFPを作成することで、社内の意思統一が図れるだけでなく、ベンダー側も貴社の課題を正確に理解し、適切な提案ができるようになります。
RFPには主に以下の項目を盛り込みます。
- 導入の背景と目的
- 解決したい経営課題・業務課題
- 対象となる業務範囲(会計、販売、生産など)
- 必要な機能要件と非機能要件(セキュリティ、性能など)
- 予算規模と導入スケジュール
ベンダーのサポート体制と拡張性
ERPは一度導入すると、5年、10年と使い続ける基幹システムです。そのため、製品そのものの機能だけでなく、それを提供するベンダーやパートナー企業が信頼できるかどうかも極めて重要な選定基準となります。
拡張性とカスタマイズの柔軟性
ビジネス環境は常に変化しています。導入時点では最適だったシステムも、事業の拡大や新規事業の立ち上げ、法改正などによって、機能不足に陥る可能性があります。
そのため、将来的な変化に対応できる「拡張性」を持っているかを確認しましょう。例えば、外部システムと連携するためのAPIが充実しているか、アドオン開発(追加開発)が容易に行えるアーキテクチャになっているか、といった点です。
また、中堅企業においては、パッケージ標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」の考え方が推奨されますが、独自の競争力の源泉となる業務についてはカスタマイズが必要になる場合もあります。パッケージの標準機能を活かしつつ、必要な部分だけ柔軟に拡張できる製品が理想的です。
サポート体制とパートナーシップ
導入プロジェクトが成功するかどうかは、導入を支援するベンダー(導入パートナー)の力量に大きく左右されます。特に初めてERPを導入する場合や、大規模な刷新を行う場合は、単にシステムの操作方法を教えるだけでなく、業務改革(BPR)の視点を持って伴走してくれるパートナーが必要です。
以下の表は、ベンダー選定時に確認すべき主なポイントを整理したものです。
| 評価項目 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 業界知識・実績 | 同業種・同規模の企業への導入実績が豊富にあるか。 業界特有の商習慣や課題を理解しているか。 |
| サポート体制 | 導入後の保守・運用サポートは充実しているか。 トラブル時の対応フローや窓口は明確か。 |
| 提案力・コンサル力 | 要望をそのまま聞くだけでなく、プロの視点からより良い業務フローを提案してくれるか。 |
| 企業の安定性 | 長期的に付き合っていける経営基盤があるか。 製品の継続的なバージョンアップが計画されているか。 |
費用対効果とランニングコストの試算
ERPの導入には多額の費用がかかりますが、それを単なる「コスト」としてではなく、将来の利益を生み出すための「投資」として捉える視点が必要です。しかし、無尽蔵に予算をかけられるわけではありませんので、費用対効果(ROI)をシビアに見極める必要があります。
TCO(総保有コスト)の観点
費用の比較検討を行う際は、初期導入費用(ライセンス費、ハードウェア費、導入支援費、カスタマイズ費など)だけでなく、運用開始後にかかるランニングコスト(保守費、サーバー利用料、バージョンアップ対応費、社内運用人件費など)を含めた、TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)で比較することが重要です。
一般的に、オンプレミス型は初期費用が高くランニングコストが低い傾向にあり、クラウド型は初期費用を抑えられる反面、月額の利用料が発生し続けます。5年〜7年程度のスパンで総額がどのようになるかを試算しましょう。
ROI(投資対効果)の検証
コストの算出と同時に、ERP導入によって得られる効果も定量的に試算します。
- 業務効率化による残業代の削減効果
- 在庫適正化によるキャッシュフローの改善効果
- システム維持管理費の削減効果(旧システムの撤廃による)
- ペーパーレス化による印刷・保管コストの削減
これらの定量的な効果に加え、「経営情報のリアルタイム化による意思決定のスピードアップ」や「ガバナンス強化」といった定性的な効果も加味し、投資に見合うだけのリターンが得られるかを経営視点で判断することが求められます。安さだけで選ぶのではなく、自社の成長戦略に寄与する価値ある投資となるシステムを選定してください。
ERP softwareに関するよくある質問
ERP softwareと一般的な会計ソフトの違いは何ですか?
会計ソフトは主に財務会計や経理業務のみを管理するものですが、ERP softwareは会計に加え、人事、販売、在庫、生産など、企業の基幹業務全体のデータを統合的に管理するシステムです。
クラウド型ERPとオンプレミス型ERPはどちらを選ぶべきですか?
初期費用を抑えて短期間で導入したい場合はクラウド型が適していますが、自社独自の業務フローに合わせた高度なカスタマイズが必要な場合はオンプレミス型が選ばれる傾向にあります。
ERP softwareの導入にはどのくらいの期間が必要ですか?
導入する製品の種類や企業の規模によりますが、クラウド型であれば数ヶ月程度、大規模なオンプレミス型やスクラッチ開発の場合は1年以上の期間を要することが一般的です。
中小企業でもERP softwareを導入するメリットはありますか?
はい、あります。中小企業向けの安価なクラウド型ERPも増えており、導入によって業務の属人化を防ぎ、限られた人員での生産性を最大化する効果が期待できます。
導入費用の相場はどのくらいですか?
クラウド型であれば月額数万円から利用できるものもありますが、大規模なパッケージ型やカスタマイズを含む場合は数百万円から数千万円規模になることもあり、製品や要件によって大きく異なります。
まとめ
ERP softwareは、ヒト・モノ・カネといった経営資源を一元管理し、迅速な意思決定や全社的な業務効率化を実現するための重要な基盤です。導入には経営情報の可視化やガバナンスの強化といった明確なメリットがありますが、成功の鍵は自社の課題にマッチした製品選定にあります。
SAPをはじめとする多機能な製品から、特定の業種に特化したものまで種類は様々です。まずは自社の導入目的と予算を明確にし、最適なERPの選定に向けて情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。
執筆者
クラウドERP導入ガイド編集チーム
メッセージ
クラウドERPや基幹システムに関する情報を整理し、導入を検討している方に向けて分かりやすく解説しています。



