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調達業務の効率化とは?コスト削減とガバナンス強化を実現する手順とシステムの選び方

 クラウドERP導入ガイド編集部

調達業務の効率化とは?コスト削減とガバナンス強化を実現する手順とシステムの選び方

原材料価格の高騰、急速な為替変動、そして地政学リスクによるサプライチェーンの混乱――。企業を取り巻く調達環境は、かつてないほど予測困難で厳しいものとなっています。
こうした状況下において、従来のような「経験と勘」や「アナログな手作業」に大きく依存した調達業務が続くと、結果としてコスト競争力の面で不利になりやすく、供給停止やコンプライアンス違反といった重大な経営リスクを招きかねません。

成長企業がいま取り組むべき「調達業務の効率化」とは、単に現場の作業を楽にすることではありません。それは、ムダなコストと時間を徹底的に削減し、そこで生まれたリソースを「戦略的な調達活動」へとシフトさせるための、経営基盤の強化そのものです。

本記事では、調達業務の本質的な役割から、効率化を阻むボトルネックの特定、そして全社最適を実現するためのシステム基盤(ERP)の活用方法まで、経営視点で詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 調達業務の定義と「購買」との決定的な違い
  • 調達業務の全体フローと各プロセスに潜む「ムダ」の正体
  • プロセス見直しやシステム化など5つの具体的な効率化手法
  • 法対応や品質維持など、調達改革を進める際の注意点
  • 全社最適を実現するシステム基盤(ERP)の重要性と導入ステップ

調達業務とは?「購買」との違いと経営における重要性

業務効率化に取り組む前に、まずは対象となる「調達業務」の範囲と、なぜそれが経営にとって重要なのかを定義します。言葉の定義があいままだと、現場と経営層の間で目的の不一致が生じる原因となります。

調達と購買の違い|戦略かオペレーションか

ビジネスの現場では混同されがちな「調達(Procurement)」と「購買(Purchasing)」ですが、役割と目的には明確な違いがあります。効率化を議論する上では、この区別が非常に重要です。

  • 購買(Purchasing):オペレーション業務
    日々の発注、納期管理、検収、請求書処理、支払いといった「定型的な執行業務」を指します。
    「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ確保する」ことがミッションであり、効率化の主な対象はこの領域です。
  • 調達(Procurement):戦略業務
    サプライヤーの探索・選定、価格交渉、市場分析、契約締結といった「方針決定と環境構築」を指します。
    購買の上位概念にあたり、「どのサプライヤーから、どのような条件で買うのが経営にとって最適か」を判断する戦略的な機能です。

調達業務の効率化の真の目的は、定型的な「購買(オペレーション)」を自動化・省力化し、空いたリソースを「調達(戦略)」に集中させることにあります。

直接材と間接材の管理特性

調達対象は大きく「直接材」と「間接材」に分類され、それぞれ効率化のアプローチが異なります。

  • 直接材: 原材料や部品など、製品に直接組み込まれるもの。品質と納期(安定供給)が最優先され、生産計画と連動した厳密な管理が求められます。
  • 間接材: 事務用品、PC、消耗品、修繕費など、製品には組み込まれないが業務に必要なもの。多種多様で発注頻度が高く、管理がおろそかになりがちです。

多くの企業では、直接材の管理には注力していますが、間接材は各部署がバラバラに発注しており、コスト削減や業務効率化の余地(ポテンシャル)が大きく残されています。

経営視点で見る調達業務のインパクト

調達業務の効率化は、企業の損益計算書(P/L)にダイレクトなインパクトを与えます。
製造業や卸売業において、売上高に占める外部調達コスト(売上原価)の割合は非常に大きいです。例えば、売上原価率が80%、 営業利益率が5%の企業が調達コストを1%削減できた場合、 営業利益は約16%改善する計算になります(※1)。 ただし、実際の効果は業種・企業規模・原価構造により大きく異なります。
※1 計算例:売上100、原価80、営業利益5の場合 →原価を1%(0.8)削減すると利益は5.8となり、16%改善

また、リードタイムが短縮されれば、在庫の回転率が向上し、 運転資金の効率化につながります。さらに、適正在庫の維持により 過剰な在庫投資を抑制できれば、キャッシュフローの改善にも 寄与する可能性があります。「調達」は単なるバックオフィス業務ではなく、利益を生み出す源泉なのです。

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調達業務の全体フローと各プロセスに潜む「ムダ」の正体

効率化に着手するためには、まず標準的な業務フローを整理し、どこで「非効率」が発生しているのかを可視化する必要があります。多くの企業でボトルネックとなっている3つのプロセスを見ていきましょう。

1. ソーシング(見積・契約):比較検討の工数と属人化

サプライヤーを選定し、価格を決める段階です。ここでのムダは「情報の散逸」に起因します。

  • 相見積もりの手間: 複数のサプライヤーに対して、メールや電話で個別に見積もりを依頼し、回収したExcelやPDFを手作業で比較表にまとめる作業は膨大な時間を要します。
  • 過去データの参照困難: 「前回の見積書はどこにあるか」「誰がどのような経緯でこの価格に決めたか」といった情報が担当者のメールボックスや個人のPCに埋もれており、ナレッジが共有されていません。

2. パーチェシング(発注・納期管理):アナログ作業の多発

実際に発注を行い、モノが届くまでを管理する段階です。ここでの最大の敵は「アナログ作業」です。

  • FAXや電話による発注: 一部の企業では、現在もFAXで注文書を送付し、電話で着荷確認を行っているケースが見られます。これらは通信コストがかかるだけでなく、送信ミスや言った言わないのトラブルの原因になります。
  • Excelでの納期管理: 発注残や納期回答をExcelで管理していると、最新のステータスがわからず、生産現場からの問い合わせ対応に追われることになります。また、手入力による転記ミスも多発します。

3. 支払・検収(請求書処理):照合の煩雑さと不正リスク

納品されたモノを確認し、代金を支払う段階です。ここでは「照合(突合)」の負担が課題となります。

  • 3点照合の手間: 「発注書(控え)」「納品書」「請求書」の3つの内容が一致しているかを、紙の書類を並べて目視で確認する作業は、経理部門と現場の双方にとって大きな負担です。
  • データの分断: 購買システムと会計システムが連携していない場合、請求書の内容を会計ソフトへ手入力する必要があり、二重入力のムダが生じます。

調達業務の効率化を阻む3つの壁とリスク

業務フローの中で見えてきた非効率の根本原因を深掘りすると、多くの成長企業が直面している「3つの壁」が浮かび上がります。これらを放置することは、単なる効率の低下にとどまらず、重大な経営リスクにつながります。

業務の属人化とブラックボックス化

「この部品の適正価格は〇〇さんしか知らない」「このサプライヤーとの交渉経緯はあの人の頭の中にしかない」という属人化は、組織にとって大きなリスクです。
担当者が退職や休職をした瞬間に業務が停止するだけでなく、特定のサプライヤーとの癒着や不正発注といったコンプライアンス違反の温床にもなりかねません。業務プロセスを透明化し、誰でも一定のレベルで業務ができる標準化が急務です。

アナログな業務フロー(紙・FAX・Excel)の弊害

紙やハンコ、FAXを前提とした業務フローは、物理的な場所の制約を受けます。これはテレワークや多拠点展開の妨げになるだけでなく、書類の紛失や情報漏洩のリスクを高めます。
また、Excelによるバケツリレー(メールでのファイル送受信)は、版数管理(どれが最新ファイルか不明)の混乱を招き、意思決定の遅れにつながります。

情報の分断による「全体最適」の欠如

調達部門、製造部門、経理部門がそれぞれ異なるシステムやExcelでデータを管理している「サイロ化」の状態です。
例えば、例えば、調達部門が価格のみを重視して大量発注を行い、 製造現場の実需要と乖離した結果、過剰在庫となるといった 「部分最適の弊害」が発生する可能性があります。また、経営層が「現在の正確な原価」を知りたくても、データの集計に時間がかかり、リアルタイムな経営判断ができないという問題も生じます。

調達業務を劇的に効率化する5つの具体的手法

課題とリスクを理解したところで、それらを解消し、効率化を実現するための5つの具体的なアプローチを紹介します。これらは段階的に取り組むことで、より大きな効果を発揮します。

1. 業務プロセスの可視化と標準化(マニュアル化)

システムを導入する前に、まずは「現状の業務(As-Is)」を整理します。「誰が・いつ・何の情報を・どう処理しているか」を洗い出し、無駄な承認フローや重複作業を削減します。
その上で、業務ルールを統一し、マニュアル化することで標準化を図ります。属人化を排除する第一歩は、業務を個人のスキルから組織のプロセスへと昇華させることです。

2. サプライヤーの集約と関係強化(SRM)

取引先が分散しすぎていると、発注の手間や管理コストが増大します。似たような商材を扱っているサプライヤーを集約し、発注量をまとめることで、ボリュームディスカウントの交渉力を高めると同時に、管理工数を削減します。
SRM(サプライヤー・リレーションシップ・マネジメント)の視点を持ち、主要なサプライヤーとはシステム連携を含めた深い協力関係を築くことが効率化への近道です。

3. アウトソーシング(BPO)の活用

すべての業務を自社で行う必要はありません。特に間接材の購買や、単純な入力作業などの「ノンコア業務」については、外部の専門業者(BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に委託するのも一つの手です。
社内のリソースを戦略的な調達業務やコアビジネスに集中させることで、組織全体の生産性を高めることができます。

4. ペーパーレス化とデジタルツールの導入

紙の注文書や請求書をデジタルデータに置き換えます。Web発注システム(Web-EDI)を導入すれば、サプライヤーとクラウド上で注文情報のやり取りができ、FAX送信や電話確認の手間がなくなります。また、電子契約サービスを活用することで、印紙代の削減と契約締結までのリードタイム短縮が実現します。

5. AI・データ分析による需要予測と発注最適化

蓄積された過去の購買データや外部の市況データをAIで分析し、需要予測の精度を高めます。「いつ・どれくらい必要になるか」を正確に予測できれば、欠品を防ぎつつ、在庫を最小限に抑える最適な発注が可能になります。経験と勘に頼らないデータドリブンな発注は、調達業務の質を一段階引き上げます。

調達効率化を進める際の注意点|法対応と品質維持

効率化は重要ですが、スピードやコスト削減を優先するあまり、足元をすくわれないよう注意が必要です。経営層が意識すべきリスク管理の視点を解説します。

下請法・インボイス制度などの法令遵守

業務フローを変更したりシステムを導入したりする際は、関連法規への対応が必須です。
特に「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」では、発注書面の交付義務や支払期日の遵守が厳格に定められています。また、「インボイス制度」や「電子帳簿保存法」に対応したデータ保存形式や要件を満たしているかどうかも、システム選定時の重要なチェックポイントです。効率化を優先するあまり法令要件を見落とすと、企業として重大なリスクを抱えることになります。

過度なコスト削減による「品質リスク」と「供給リスク」

「安さ」だけでサプライヤーを選定したり、無理な値下げ要求を続けたりすると、納入品の品質低下や、サプライヤーの経営悪化による供給停止のリスクを招きます。
効率化の目的はあくまで「TCO(総保有コスト)の最適化」であり、品質や安定供給とのバランスを見極めることが重要です。BCP(事業継続計画)の観点から、重要品目については複数社購買(マルチソーシング)を維持するなどのリスクヘッジも忘れてはなりません。

現場の抵抗を減らすためのチェンジマネジメント

新しいツールやフローの導入は、慣れ親しんだやり方を変えることになるため、現場からの抵抗が予想されます。「なぜ変える必要があるのか」「現場にはどのようなメリットがあるのか」を丁寧に説明し、納得感を得ることが成功の鍵です。トップダウンの号令だけでなく、現場のキーマンを巻き込んだプロジェクト体制を作ることが推奨されます。

効率化の鍵は「全体最適」|SaaS型ERPが選ばれる理由

調達業務の効率化では、個別の「購買システム」や「電子見積ツール」を導入するだけでは全社最適には届かず、真に効果を引き出すためには基幹データが連携したシステム環境の構築が重要です。

調達システム単体運用の限界(データのサイロ化)

調達部門だけで独立したシステムを利用している場合、しばしば「データのサイロ化」という問題が発生します。
例えば、調達システムで発注を行っても、そのデータが会計システムや在庫管理システムと連携していなければ、経理担当者が請求書を見ながら会計ソフトに再入力したり、倉庫担当者が入出庫を手動で記録したりする必要があります。これでは、調達部門は効率化されても、全社的には二度手間やタイムラグ、入力ミスが発生し、トータルの生産性は上がりません。

ERPによるデータ連携がもたらすメリット

こうした課題に対する有力な解決策の一つが、「ERP(統合基幹業務システム)」の活用です。ERPは、調達、在庫、販売、会計などの基幹業務データを一つのデータベースで統合管理するシステムです。

  • 在庫との連動: 発注データに基づき入荷予定情報が自動で更新されるため、在庫管理が正確になり、欠品や過剰在庫の発生を抑制しやすくなります。
  • 会計との連動: 検収(受入)データに基づき、買掛金が自動計上され、支払予定が作成されます。請求書との照合業務が大幅に効率化されることで、運用次第では月次決算の早期化にもつながりやすくなります。
  • 原価管理の高度化: 仕入実績が即座に原価計算に反映されるため、製品ごとの正確な利益率をリアルタイムに把握できます。

成長企業に適した「SaaS型ERP」の柔軟性

かつてERPは大企業向けの高額なシステムでしたが、近年はクラウドベースの「SaaS型ERP」が主流となり、中堅・成長企業での導入が進んでいます。
SaaS型ERPは、初期コストを抑えてスモールスタートが可能であり、事業の拡大に合わせて機能を拡張できる柔軟性があります。また、法改正(インボイス制度など)への対応機能がベンダー側で 提供されるため、オンプレミス型と比較してシステム改修の 負担を軽減できます。ただし、法対応には企業側での設定変更や 運用ルールの見直しが必要となる場合もあります。

調達業務の効率化を成功させる4つのステップ

システムを導入して終わりではありません。現場に定着させ、成果を出し続けるためのロードマップを示します。

Step1:現状分析と課題の特定(As-Is)

まずは現状の業務フローを可視化し、定量的なデータ(処理件数、時間、コスト)と定性的な情報(現場の不満、リスク)の両面から課題を洗い出します。「どこがボトルネックなのか」を特定することがスタートラインです。

Step2:あるべき姿の策定と目標設定(To-Be)

課題を踏まえ、どのような状態を目指すのか(To-Be)を描きます。
「発注リードタイムを3日短縮する」「ペーパーレス化率を100%にする」「コストを年間5%削減する」といった具体的な数値目標(KPI)を設定します。これにより、システム選定の軸がブレなくなります。

Step3:最適なシステムの選定と導入

設定した目標を達成するために最適なシステムを選定します。機能要件だけでなく、操作性(UI/UX)、他システムとの連携性、サポート体制などを総合的に評価します。特に、全社最適の視点からERPの導入や連携を検討することをお勧めします。

Step4:運用定着と効果検証

導入後は、マニュアル整備や説明会を通じて現場への定着を図ります。運用開始後は定期的に効果を検証し、KPIの達成度を確認します。課題があれば運用ルールを見直すなど、PDCAサイクルを回し続けることで、継続的な効率化を実現します。

調達業務の効率化に関するよくある質問(FAQ)

調達改革を進めるにあたり、経営者や担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。

調達業務の効率化はどのくらいの期間で効果が出ますか?

ペーパーレス化やWeb発注による工数削減効果の実感時期は、 企業規模や導入範囲により異なりますが、小規模な導入であれば 運用開始後1〜3ヶ月程度で効果を感じる企業もあります。 一方、全社展開や複雑な業務フローの見直しを伴う場合は、 定着までに半年以上かかるケースもあります。

システム導入に反対する現場や取引先への対応は?

変化に対する抵抗はつきものです。現場に対しては「入力作業が減る」「残業が減る」といった具体的なメリットを提示しましょう。取引先に対しては、Web受注による「FAX誤送信防止」や「履歴確認の利便性」を説明し、まずは主要なサプライヤーから段階的に協力を仰ぐのがスムーズです。

中小企業でもERPのようなシステムは必要ですか?

事業規模や業種により異なりますが、成長を目指す中小企業において 必要性は高まっています。特に、複数拠点展開や製販在の連携が 重要なビジネスモデルの場合、ERPによる統合管理のメリットは大きいです。 ただし、小規模事業者の場合は、まず個別システムで業務を デジタル化してから、成長に応じてERPへ移行する段階的アプローチも有効です。

間接材と直接材、どちらから効率化すべきですか?

企業により優先順位は異なりますが、間接材は各部署が個別に 発注している場合が多く、集約による効果が見えやすいため、 初期の取り組みとして選ばれることがあります。一方、 製造業など直接材の比重が大きい企業では、金額インパクトの 大きい直接材から着手する戦略も有効です。

ペーパーレス化を進める際の法的な注意点は?

電子帳簿保存法(電帳法)の要件を満たすことが必須です。「真実性の確保(改ざん防止)」と「可視性の確保(検索機能など)」に対応したシステムを選定し、社内規定を整備する必要があります。

まとめ:調達業務の効率化は企業の競争力を高める経営戦略

調達業務の効率化は、単なる「コスト削減」や「事務作業の自動化」にとどまりません。それは、現場の疲弊を解消して本来注力すべき「戦略業務」へのリソースシフトを実現し、企業の利益構造を強くするための土台作りです。

アナログで分断された業務プロセスを放置することは、成長企業にとって大きなリスクとなります。まずは自社の業務フローを可視化し、ムダを特定することから始めてみてください。そして、その解決策として、部分的なツール導入ではなく、ERPを活用して全社のデータをつなぎ、変化に強い調達基盤を構築することが、企業の次の成長を加速させる原動力となるはずです。

ストーリーでわかる!ERP基礎知識と導入のポイント
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