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リソースプランニングの本質とは|成長企業の経営者が知るべきERPの重要性

 クラウドERP導入ガイド編集部

鳴り物入りで始まった全社的なDXプロジェクトが、いつの間にか失速している。原因を探ると、各部署のエース級人材が既存業務との兼務で手一杯になり、誰もプロジェクトにコミットできていない状態だった…。

これは、多くの企業で実際に起こっている話です。「リソースプランニング」は、プロジェクトを成功に導くために不可欠なプロセスですが、多くの経営者やプロジェクト責任者の方々から、「計画は立てるものの、いつも形骸化してしまう」「予期せぬリソース不足で現場が混乱する」といった悩みを耳にします。

なぜ、多くのリソースプランニングは失敗に終わるのでしょうか。

本記事では、多くの企業が見落としがちなリソースプランニング失敗の根本原因を解き明かし、プロジェクト単位の計画から一歩進んだ、企業全体の成長を加速させるための「経営資源計画」という新たな視点と、その実現を支える経営基盤の重要性について深く掘り下げていきます。

そもそもリソースプランニングとは何か?

まず、基本的な定義から確認しましょう。リソースプランニングとは、特定の目標(主にプロジェクト)を達成するために必要なリソース(資源)を特定し、確保し、割り当てるための一連の計画プロセスを指します。

計画の対象となる主な経営リソース

計画の対象となる経営資源は、伝統的に「ヒト・モノ・カネ」と言われてきましたが、現代経営においては「情報」が決定的に重要です。

  • 人的リソース(ヒト)
    プロジェクトメンバーのスキル、経験、稼働時間など。最も重要かつ、管理が難しいリソースです。個々のスキルセットや成長意欲といった定性的な要素まで考慮する必要があります。
  • 物的リソース(モノ)
    設備、機械、ソフトウェア、オフィススペースなど。業務を遂行するための物理的な資源です。遊休資産を生まない効率的な活用が鍵となります。
  • 財務リソース(カネ)
    プロジェクトの予算、キャッシュフローなど。資金がなければプロジェクトは動きません。どのタイミングでどれだけの資金が必要になるかという時間軸での管理が求められます。
  • 情報リソース(情報)
    顧客データ、販売実績、在庫状況、財務諸表、業務ノウハウなど。これらは現代経営における最も価値のある無形資産であり、意思決定の質を決定づける源泉です。しかし皮肉なことに、この最も重要な『情報』というリソースが、多くの企業で最も管理されておらず、その価値を全く活かしきれていないのが実情です。

優れたプランニングとは、これら4つの有限なリソースをいかに最適に組み合わせるかにかかっています。

プロジェクト管理における一般的な手順

一般的に、プロジェクト管理におけるリソースプランニングは、以下のステップで進められます。ここでは「新商品の市場投入プロジェクト」を例に見ていきましょう。

  1. 目標とスコープの定義
    「新商品Xを6ヶ月以内に市場投入し、初年度売上目標1億円を達成する」といった具体的な目標と、そのために実施する作業範囲(開発、マーケティング、営業活動など)を明確にします。
  2. 必要リソースの洗い出し
    目標達成に必要なリソースをリストアップします。「開発エンジニア3名、マーケティング担当者2名、過去の販売データ、競合製品の市場分析レポート、広告宣伝費5,000万円…」といった具合です。
  3. リソースの確保と調達
    各部門長と交渉し、必要な人員を確保します。外部委託が必要な場合は、パートナー企業を選定し契約します。
  4. タスクへの割り当て
    WBS(作業分解構成図)などを用いてタスクを細分化し、各タスクに最適なリソース(担当者、予算など)を割り当てます。
  5. 進捗の追跡と調整
    ガントチャートなどを用いて計画と実績の差異を常に監視します。遅延が発生した場合は、リソースの再配分などを行い、計画を修正します。

このプロセス自体は非常に論理的ですが、現実はこの通りに進まないことがほとんどです。その原因は、プロジェクトの「外」、すなわち企業全体の構造に根差しています。

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なぜ多くのリソースプランニングは失敗するのか?見落とされがちな3つの根本原因

多くの企業でリソースプランニングが機能不全に陥る原因は、計画手法の問題ではなく、その土台となる企業の「経営基盤」の脆弱性にあります。

原因1:データが分断され、正確なリソース状況を把握できない

これはまさに、経営の根幹である『情報リソース』が機能不全に陥っている状態と言えます。成長企業の多くは、事業の拡大に合わせて部門ごとにシステムを導入してきた歴史があります。その結果、「情報のサイロ化」という深刻な問題に直面します。

  • 経理は「会計パッケージ」で確定した過去の数字を管理
  • 営業は「顧客管理ツール(CRM)」で未来の受注見込みを管理
  • 人事は「勤怠管理システム」で社員の稼働時間を管理
  • 現場は「無数のExcelファイル」で独自に進捗を管理

このような状態では、プロジェクトマネージャーが計画を立てようにも、信頼できるデータが存在しません。「A部署のBさんは本当に来月からアサイン可能なのか?」「現時点でのプロジェクトの正確な予算執行額はいくらなのか?」といった基本的な情報すら、各部署に問い合わせてExcelで集計しなければ分からず、その作業に数日を要します。

データの鮮度は落ち、二重入力によるミスも頻発します。分断された不正確なデータに基づいた計画は、スタート時点から大きなリスクを抱えているのです。

原因2:「部分最適」が全社的なリソースの奪い合いを生む

企業全体の視点が欠如していると、各部門が自身の目標達成を最優先する「部分最適」の罠に陥ります。特に、優秀な人材や限られた予算といった希少なリソースは、部門間の綱引きの対象となります。

例えば、「全社の未来を担う花形の新事業プロジェクト」と「地味だが経営基盤の安定に不可欠な基幹システムの刷新プロジェクト」が同時に走っていたとします。経営層からの明確な優先順位付けがなければ、声の大きい部門や目先の利益に繋がりやすいプロジェクトに、優秀な人材が優先的に割り当てられてしまうでしょう。

これは、全社のリソース状況を誰も俯瞰して見ることができず、戦略的な優先順位付けができていないことに起因します。水面下で繰り広げられるリソースの奪い合いは、組織の結束力を削ぎ、企業全体の成長を阻害するのです。

原因3:リアルタイム性が欠如し、ビジネスの変化に対応できない

ビジネス環境の変化は、ますます速くなっています。「競合が突然、主力商品の大幅な値下げキャンペーンを打ってきた。すぐに対抗策を打ちたいが、正確な原価データと最新の在庫状況が分かるのは、来週の会議を待たなければならない…」

このような意思決定の遅れは、致命的な機会損失に繋がります。しかし、多くの企業では、経営状況を正確に把握できるのは月次決算が締まった後です。リアルタイム性に欠ける経営基盤では、市場の変化やプロジェクトで発生する予期せぬ事態に対して、迅速かつ的確な対応を取ることができません。リソースの再配分や予算の組み替えといった重要な判断が後手に回り、プロジェクトの遅延や失敗を招いてしまうのです。

解決の鍵は「経営レベルのリソースプランニング」=ERPにある

プロジェクト単位でのリソースプランニングの限界が見えてきたところで、視点を一段引き上げてみましょう。これらの課題を根本から解決するアプローチが、経営レベルでのリソースプランニング、すなわちERP(Enterprise Resource Planning)の導入です。

ERPとは単なるITシステムではなく「企業資源計画」という経営思想

ERPは単なるITシステムではなく、その名の通り「企業資源計画」という経営思想そのものです。その起源は、製造業で「いかに無駄なくモノを作るか」を追求したMRP(資材所要量計画)にあります。この生産性向上の知恵が、会計、販売、人事など企業のあらゆる領域に応用され、発展したのがERPです。

その根底にあるのは、企業の持つリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理し、経営全体の視点から最適配分することで、企業のパフォーマンスを最大化するという思想なのです。これまで見てきたプロジェクト単位の「リソースプランニング」が、まさに企業全体(エンタープライズ)の規模で行われるのがERPと言えます。

ERPが実現する「真のリソースプランニング」とは

ERPを経営基盤として導入することで、リソースプランニングは劇的に変わります。脆弱だった経営基盤が強固なものへと刷新され、これまで理想論でしかなかった戦略的かつダイナミックなリソースプランニングが現実のものとなるのです。

  • 信頼できる唯一のデータ基盤(Single Source of Truth)の確立
    ERPは、会計、販売、人事、生産といった基幹業務のデータを単一のデータベースで一元管理します。これにより、これまで社内に散在し、分断されていたデータが統合され、初めて「情報」が信頼できる経営資源へと昇華するのです。経営者もプロジェクトマネージャーも、全社のリソース状況をリアルタイムかつ正確に、同じデータを見て把握できるようになります。
  • 全社最適視点でのリソース配分の実現
    全社のリソースが可視化されることで、戦略的な優先順位に基づいたリソース配分が可能になります。もはや部門間のリソースの奪い合いではなく、企業全体の目標達成に向けた協調が生まれます。
  • 変化に即応する俊敏な意思決定の促進
    経営状況がリアルタイムに把握できるため、市場やプロジェクトの変化に対して、データに基づいた迅速な意思決定(リソースの再配分、追加投資など)が可能になります。これにより、組織全体の俊敏性が向上します。

ERP導入は「業務改革プロジェクト」であると心得る

ここで最も重要な点をお伝えします。これほどの変革をもたらすERPの導入は、「単なるシステム入れ替えプロジェクト」として進めては絶対に成功しません。

ERP導入が失敗する典型的なパターンは、情報システム部門が主体となり、「現行の業務フローを、いかに新しいシステムで再現できるか」という視点で進めてしまうことです。これでは、非効率な業務プロセスが新しいシステムにそのまま移植されるだけで、経営改革には繋がりません。

真の価値を引き出すためには、経営層が自らオーナーシップを持ち、「ERP導入を、聖域なき全社的な業務見直しの絶好の機会と捉える」ことが不可欠です。ERPに凝縮された世界の優良企業のベストプラクティスに合わせて、自社の業務をどう変革すべきか。この問いこそが、プロジェクトの核心です。ERP導入は、ITプロジェクトではなく、全社を巻き込んだ「業務改革プロジェクト」なのです。

まとめ:企業の成長は、経営基盤の刷新から始まる

本記事では、多くの企業が直面するリソースプランニングの課題と、その根本的な解決策について解説しました。

プロジェクトを成功させるためには、精緻なリソースプランニングが不可欠です。しかし、その計画が砂上の楼閣とならないためには、ERPを中核とした、信頼できるデータが一元管理される強固な「経営基盤」が何よりも重要です。

もし、貴社が「リソース計画がうまくいかない」「データのサイロ化で意思決定が遅い」といった課題を抱えているのであれば、それは個々のプロジェクトの問題ではなく、経営基盤そのものを見直すサインなのかもしれません。

この記事が、貴社のリソースプランニングを「日々の火消し作業」から「未来への戦略的投資」へと昇華させる一助となれば幸いです。まずは、自社の経営基盤について、より深く情報を収集することから始めてみてはいかがでしょうか。

ストーリーでわかる!ERP基礎知識と導入のポイント
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