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ガバナンスとは?経営層が知るべき意味と、企業価値を高める強化方法を解説

 クラウドERP導入ガイド編集部

企業の不祥事に関するニュースが後を絶たない昨今、「ガバナンス」という言葉を耳にする機会が格段に増えました。多くの経営者や意思決定者の皆様にとって、もはや無視できない重要な経営課題であることは論を俟たないでしょう。

しかし、「言葉は知っているが、その本質や具体的な強化策については曖昧だ」「コンプライアンスと何が違うのか、明確に説明できない」と感じてはいませんか?また、「自社の管理体制は本当に万全だろうか?」「気づかぬうちに、企業価値を損なうリスクを抱えていないだろうか?」といった不安をお持ちの方も少なくないはずです。

ガバナンスの強化は、単なる「守り」のコンプライアンス活動ではありません。それは企業の透明性を高め、社会からの信頼を勝ち取り、ひいては企業価値そのものを向上させる「攻め」の経営戦略です。

この記事では、ガバナンスの基本的な意味から、具体的な強化ステップ、そしてその土台となる「強い経営基盤」の構築に至るまで、企業の持続的な成長を目指す全てのリーダーにとっての羅針盤となる知識を体系的に解説します。

今さら聞けない「ガバナンス」とは?その本質的な意味と目的

ガバナンス(企業統治)とは「健全な経営のための自己管理の仕組み」

「ガバナンス(Governance)」とは、直訳すると「統治」「管理」「支配」を意味する言葉です。ビジネスの世界、特に企業経営においては、一般的に「コーポレートガバナンス(Corporate Governance)」、日本語では「企業統治」と訳され、「企業の健全な経営を目指し、自らを律するための管理・監督の仕組み」と理解されています。

多くの人はガバナンスを「不正や不祥事を防ぐための監視体制」といった、いわばブレーキのような役割だと捉えがちです。もちろんそれは重要な側面の一つですが、本質はそれだけではありません。ガバナンスの最終的な目的は、「企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の最大化」にあります。

その目的を達成するために、経営者が暴走したり、一部の部署が独断で行動したりすることのないよう、株主、顧客、従業員、取引先といった多様なステークホルダー(利害関係者)の視点を経営に反映させ、透明性と公正性を確保する。それがガバナンスの核心です。つまり、不正を防ぐ「守りの側面」と、企業価値を高める「攻めの側面」の両方を併せ持つ、経営の両輪と言えるでしょう。

混同しやすい関連用語との違い(コンプライアンス・内部統制)

ガバナンスを理解する上で、しばしば混同されるのが「コンプライアンス」と「内部統制」です。この二つの言葉との関係性を整理することで、ガバナンスの立ち位置がより明確になります。これらは独立した概念ではなく、ガバナンスという大きな傘の下にある、相互に関連し合う要素と捉えるのが適切です。

まず、「コンプライアンス」は「法令遵守」と訳されます。これは、法律や社会規範、社内規程といった「定められたルールを守る」という行動そのものを指します。いわば、ガバナンスという仕組みが目指す状態を実現するための、最も基本的な「守り」の活動です。

一方、「内部統制」は、そのコンプライアンスを含む、より広範な業務プロセスを適切に管理するための仕組みです。企業の目的を達成するために、業務の有効性・効率性を高め、財務報告の信頼性を確保し、法令遵守を徹底するための社内ルールやプロセス全体を指します。

そして、「ガバナンス」は、その内部統制が正しく機能しているかを監督・監視する、さらに上位の経営レベルでの枠組みです。経営者が独善的な判断を下さないよう、取締役会などがチェック機能を果たす体制そのものがガバナンスと言えます。つまり、「ガバナンス(経営の監督体制)」が適切に機能することで、「内部統制(業務の仕組み)」が正しく運用され、その結果として「コンプライアンス(ルールの遵守)」が徹底される、という階層構造になっています。ガバナンスが経営全体の監督体制であるのに対し、内部統制はより具体的な業務プロセスのルールを指します。内部統制の基本的な考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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なぜ今、ガバナンス強化が経営の最重要課題なのか?

ガバナンスの強化は、もはや一部の大企業や上場企業だけのものではありません。企業の規模を問わず、すべての組織にとって避けては通れない経営課題となっています。その理由は、ガバナンス強化が単なるコストではなく、企業の未来を創るための重要な「投資」だからです。具体的には、以下のような経営メリットが期待できます。

【メリット1】企業価値と社会的信用の向上

ガバナンスが機能している企業は、経営の透明性が高いと評価されます。これは、投資家や金融機関にとって極めて重要な判断材料です。適切な情報開示が行われ、健全な経営体制が敷かれている企業は、信頼性が高く、投資対象としての魅力が増します。結果として、資金調達が有利に進んだり、M&Aの際に有利な条件を引き出せたりと、財務戦略において大きなアドバンテージを得ることができます。また、取引先や顧客からの信頼も厚くなります。「あの会社はしっかりしている」という評判は、何物にも代えがたいブランド価値となり、安定した取引関係の構築や、新規顧客の獲得にも繋がるのです。これは、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。

【メリット2】不正や不祥事を未然に防ぐリスク管理体制の構築

経営における最大のリスクの一つが、従業員の不正や情報漏洩といった内部から生じる不祥事です。一度こうした問題が発生すると、金銭的な損害はもちろんのこと、長年かけて築き上げてきた社会的信用を一瞬で失いかねません。ガバナンスの強化は、こうしたリスクを個人の倫理観だけに頼るのではなく、「仕組み」として未然に防ぐことを可能にします。例えば、職務権限を明確にし、承認プロセスを厳格化することで、特定の個人による不正な取引を防ぎます。また、定期的な内部監査や監視体制を構築することで、問題の早期発見・是正が可能となり、組織全体のリスク耐性を高めることができます。これは、予測不可能な時代を乗り切るための「守りの経営」の根幹と言えるでしょう。

ガバナンス強化を実現する3つの具体的ステップ

ガバナンスの重要性を理解した上で、次に知るべきは「具体的に何をすれば良いのか」という実践的なアクションです。ガバナンス強化は、以下の3つのステップで体系的に進めることができます。

ステップ1:内部統制の整備(ルールの明確化)

ガバナンス強化の土台となるのが、実効性のある内部統制です。これは、社内の業務プロセスにおけるルールを明確にし、誰もがそれに従って業務を遂行できる環境を整えることを意味します。具体的には、まず「誰が、何を、どこまで決定できるのか」を定めた職務権限規程を整備します。これにより、個人の独断による越権行為を防ぎます。次に、稟議フローの見直しも重要です。承認ルートを明確にし、適切な牽制機能が働くように設計することで、不適切な支出や契約を未然に防止できます。さらに、業務プロセスの標準化を進めることで、業務の属人化を防ぎ、担当者が変わっても品質を維持できる体制を構築します。これらのルール整備が、組織の隅々まで統制を行き届かせる第一歩となります。具体的な内部統制の強化策については、こちらの記事もご参照ください。

ステップ2:組織体制の見直し(監視機能の強化)

ルールを定めただけでは、それが守られているかをチェックする機能がなければ意味がありません。そこで重要になるのが、経営を客観的に監視する組織体制の構築です。その中核を担うのが取締役会です。取締役会が、経営の執行役と監督役の馴れ合いの場になるのではなく、健全な緊張感を保ち、適切な監督機能を発揮できるかが問われます。そのために、社外取締役監査役といった、社内の利害関係から独立した第三者の視点を取り入れることが極めて有効です。彼らは客観的な立場から経営陣の意思決定をチェックし、株主や従業員の利益が損なわれることのないよう監視する重要な役割を果たします。
※具体的なガバナンス体制の構築方法や、機関設計(監査役会設置会社と指名委員会等設置会社)の違いについては、別の記事で詳しく解説します。

ステップ3:情報開示(ディスクロージャー)の徹底(透明性の確保)

ガバナンスの最終的な目的の一つは、株主や投資家、顧客といったステークホルダーに対する説明責任を果たすことです。そのためには、企業の経営状況や財務状況、リスク情報などを、隠すことなく、公平かつ迅速に開示(ディスクロージャー)する姿勢が不可欠です。適切な情報開示は、企業の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼を醸成します。財務諸表の公開はもちろんのこと、経営戦略やリスク管理体制、取締役会の活動状況などを積極的に発信していくことが求められます。この透明性の確保こそが、外部からの正当な評価を可能にし、健全な企業経営を支える基盤となるのです。ガバナンス強化の具体的な取り組みについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。

もしガバナンスが機能していなければ?企業が直面する深刻なリスク

ガバナンス強化のメリットを理解することは重要ですが、同時に、もしガバナンスが機能不全に陥った場合に企業がどのようなリスクに直面するのかを知ることも、その重要性を実感する上で不可欠です。

意思決定の遅れが招く、致命的な機会損失

ガバナンスが効いていない組織では、しばしば責任の所在が曖昧になります。重要な経営判断を下すべき場面で、「誰が最終的な責任を取るのか」が不明確なため、関係部署間での責任の押し付け合いや、過度な忖度が横行し、意思決定が著しく遅滞します。変化の激しい現代の市場において、この「決められない」状態は致命的です。競合他社が迅速に市場の変化に対応し、新たなビジネスチャンスを掴む中、自社だけが時流に乗り遅れ、シェアを奪われるといった事態を招きかねません。適切なガバナンスは、迅速かつ合理的な意思決定を可能にするためのフレームワークであり、これがなければ企業は競争力を維持することさえ困難になるのです。

従業員の不正や情報漏洩による信用の失墜

監視の目が行き届かない組織は、不正の温床となります。例えば、経費の不正請求や架空発注、横領といった行為は、ガバナンスが脆弱な企業で頻発する問題です。これらの不正は直接的な金銭的損失だけでなく、企業の信用を根底から揺るがします。一度「不正を許す会社」というレッテルが貼られてしまえば、顧客や取引先からの信頼を回復するのは容易ではありません。さらに、情報管理体制の不備は、顧客情報や機密情報の漏洩といった重大なインシデントを引き起こす可能性があります。こうした事態は、損害賠償といった財務的ダメージに加え、企業のブランドイメージに計り知れない損害を与え、最悪の場合、事業の継続すら危うくする深刻なリスクとなるのです。

強いガバナンス体制の”土台”となる経営基盤とは?

ここまで、ガバナンス強化の重要性や具体的なステップを解説してきました。しかし、ここで一つ、多くの企業が陥りがちな落とし穴があります。それは、ルールや組織といった「形」だけを整えて満足してしまうことです。

ガバナンスは「仕組み」で実現する

どれほど立派な規程集を作成し、高潔な人物を社外取締役に迎えたとしても、それらが実務レベルで機能しなければ「絵に描いた餅」に過ぎません。例えば、承認フローは定められているものの、現場では緊急性を理由に形骸化している。職務権限は定義されているが、日々の業務データが各部署に散在しているため、リアルタイムなチェックが不可能になっている。このような状況では、ガバナンスが有効に機能しているとは到底言えません。
真に実効性のあるガバナンスは、個人の意識や頑張りといった精神論に頼るのではなく、ルール通りにしか業務が進まない「仕組み」、すなわち強固な「経営基盤」の上に成り立つのです。人の手によるアナログなチェックや、部署ごとに分断されたシステムでの管理には、限界があります。

経営の”コックピット”がもたらす迅速で透明な意思決定

強いガバナンス体制を支える経営基盤とは、どのようなものでしょうか。それは、パイロットが計器類を見て航空機の状態を正確に把握するように、経営者が会社の状況を一目で把握できる「経営のコックピット」のような仕組みです。
社内に散在している販売データ、在庫データ、会計データ、人事データといったあらゆる経営情報が、一つのシステムに統合・一元管理されている状態を想像してみてください。これにより、経営者はリアルタイムに、かつ正確に自社の経営状況を可視化できます。売上の急な変動、特定の製品の原価高騰、コンプライアンス違反の兆候などを即座に察知し、データに基づいた迅速かつ正確な意思決定を下すことが可能になります。この「情報の透明性」こそが、ガバナンスの要諦であるデータドリブンな経営判断を可能にするのです。

【訴求】ERPが実現する、実効性のあるガバナンス体制

前述した「経営のコックピット」とも言える、統合された経営基盤を構築するシステムが「ERP(Enterprise Resource Planning)」です。ERPは、企業の基幹業務(会計、販売、生産、人事など)を統合管理し、経営資源の最適化を図るための仕組みであり、その機能はガバナンス強化に直結します。

業務プロセスの標準化と自動化による内部統制の徹底

ERPを導入する過程で、既存の業務プロセスは見直され、全社最適の視点から標準化されます。これにより、部門間の壁がなくなり、非効率な業務や属人化が排除されます。さらに、ERPに搭載されているワークフロー機能や権限設定は、内部統制をシステム的に担保する上で絶大な効果を発揮します。「定められた承認ルートを通らなければ発注できない」「権限のない従業員は特定のデータにアクセスできない」といった統制が自動的に働くため、人為的なミスや意図的な不正行為のリスクを大幅に低減できるのです。ERPのような統合システムは、まさにITを活用して内部統制を実現する強力なツールです。ITを活用した内部統制のポイントや、内部統制システムそのものについては、以下の記事でさらに深掘りしています。
関連記事:ITを活用した内部統制強化とは?リスク低減と業務効率化の実現方法を解説
関連記事:内部統制システムとは?効率的な管理を実現するシステムの役割

会計からサプライチェーンまで。部門横断的なガバナンスの実現

ガバナンスは、経理部門だけの課題ではありません。購買、製造、在庫管理といったサプライチェーン全体にわたって統制を効かせることが、企業の競争力と信頼性を左右します。ERPは、部門ごとにサイロ化された情報をなくし、全社共通のプラットフォームで業務を行うことで、部門横断的なガバナンスを実現します。

まず、企業の根幹である会計ガバナンスにおいて、ERPは絶大な効果を発揮します。すべての取引データが一元的に管理されるため、二重入力やデータの改ざんが極めて困難になります。監査証跡機能は内部・外部監査において高い信頼性を提供し、常に法規制に準拠した会計処理を維持できます。

同様に、サプライチェーン・ガバナンスにおいてもERPは不可欠です。例えば、購買プロセスにおいて、承認された取引先からしか発注できないようシステムで制御したり、発注・検収・請求の3つのデータを自動で照合して不正な支払いを防いだりできます。また、全拠点の在庫をリアルタイムで可視化することで、過剰在庫のリスクを低減し、不正な持ち出しを防ぐことも可能です。このようにERPは、会計という点だけでなく、事業運営という線と面でガバナンスを機能させる経営基盤なのです。

まとめ

本記事では、ガバナンスの基本的な意味から、その重要性、そして具体的な強化策に至るまでを解説してきました。

ガバナンスとは、単に不正を防ぐための監視体制ではなく、企業の透明性を高め、社会からの信頼を獲得し、最終的には企業価値を持続的に向上させるための攻めの経営戦略です。その強化は、もはや一部の大企業だけのものではありません。企業の持続的な成長を目指すすべての組織にとって、不可欠な経営課題となっています。

そして最も重要なことは、ガバナンスはルールや組織図といった「形」だけでは機能しないということです。それを実務レベルで支え、実効性のあるものにするためには、ERPを中核とした強固な「経営基盤」の構築が鍵を握ります。

本記事が、貴社のガバナンス体制を見つめ直し、より強固な経営基盤を築くための一助となれば幸いです。

ストーリーでわかる!ERP基礎知識と導入のポイント
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