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ガバナンスと内部統制の違いとは?経営層が知るべき関係性と強化のポイントを解説

 クラウドERP導入ガイド編集部

「ガバナンスの強化が必要だ」と同時に「内部統制を整備しなければならない」といった言葉を耳にする機会は多いでしょう。どちらも健全な企業経営に不可欠な要素であることは間違いありませんが、この二つの言葉の違いを明確に説明できるでしょうか。

「どちらも『管理体制』のことだろう」「結局、同じような意味ではないか」と感じている経営者や管理職の方も少なくないかもしれません。

しかし、ガバナンスと内部統制は、似て非なる明確な違いがあり、その関係性を正しく理解することは、企業の持続的な成長戦略を描く上で極めて重要です。この違いを曖昧にしたままでは、実効性のある組織運営は実現できません。

本記事では、ガバナンスと内部統制の決定的な違いから、両者がどのように連携して企業価値を高めるのか、そして強化していくための具体的なポイントまでを、経営層の皆様に向けて体系的に解説します。

ガバナンスと内部統制の決定的な違いとは?

「ガバナンス」と「内部統制」。この二つの概念を理解する上で最も重要なのは、その目的と対象、そして主体が異なるという点です。結論から言えば、ガバナンスは「経営者を監視する仕組み」であり、内部統制は「経営者が従業員を管理する仕組み」であると大別できます。

「経営の監視」と「業務の管理」:目的・対象・主体の違い

両者の違いをより明確に理解するために、以下の比較表をご覧ください。

項目 コーポレートガバナンス(企業統治) 内部統制
目的 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の最大化 ①業務の有効性・効率性向上 ②財務報告の信頼性確保 ③法令遵守 ④資産の保全
主な対象 経営者(代表取締役、取締役など) 従業員(経営者自身も含む全構成員)
主な主体 株主、取締役会(特に社外取締役)など 経営者(取締役会、代表取締役)
関係性 経営の監督・監視を行う大きな枠組み ガバナンスを機能させるための具体的な手段・プロセス

このように、ガバナンスは「誰が経営を監督するのか」という経営レベルの大きな枠組みを指すのに対し、内部統制はその枠組みの中で「どのように業務を適正に遂行させるか」という、より具体的で実践的なルールやプロセスを指します。両者は主従関係にあり、有効な内部統制なくして、実効性のあるガバナンスは成り立ちません。

改めて理解する「ガバナンス」と「内部統制」の定義

比較によって輪郭を掴んだところで、それぞれの定義を改めて確認しましょう。

コーポレートガバナンスとは、企業の不正や不祥事を防ぎ、株主をはじめとする多様なステークホルダーの利益を守りながら、企業価値を最大化していくための「経営の監視・規律の仕組み」です。社外取締役の設置や取締役会の機能強化などが、その代表的な取り組みに当たります。

一方、内部統制とは、企業が自らの事業目的を達成するために、組織の内部で定められるルールや業務プロセスのことです。財務報告の信頼性を確保したり、法令を遵守したりするための具体的な手続きやチェック体制の構築がこれに該当します。

より詳細な定義や背景については、以下の記事もご参照ください。
関連記事:ガバナンスとは?経営層が知るべき意味と、企業価値を高める強化方法を解説
関連記事:内部統制とは?企業が守るべき重要なルールと仕組みを簡単に解説

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「守り」と「攻め」の関係性:なぜ両輪で考えるべきなのか?

ガバナンスと内部統制は、単に定義が違うだけでなく、企業経営において果たす役割が異なります。この関係性を「守り」と「攻め」という観点から理解することが、両者を効果的に機能させる鍵となります。

内部統制:健全な事業活動を支える「守りの経営基盤」

内部統制が担うのは、まさに「守りの経営」の基盤を築く役割です。日々の業務プロセスに潜むリスク(不正、ミス、情報漏洩など)を管理し、事業活動が定められたルール通りに、適正かつ効率的に行われることを保証します。例えば、厳格な承認フローがなければ経費の不正利用が発生するかもしれませんし、受注から請求までのプロセスが標準化されていなければ売上の計上ミスが起こるかもしれません。こうした日々の業務における綻びを防ぎ、足元を固めるのが内部統制です。この強固な「守り」があって初めて、企業は安定した事業活動を継続できるのです。

ガバナンス:企業価値を最大化する「攻めの企業統治」

強固な内部統制という「守り」の基盤の上に成り立っているのが、ガバナンスです。ガバナンスは、その安定した経営基盤を活かして、いかにして企業価値を中長期的に高めていくかという「攻めの企業統治」の役割を担います。透明性の高い経営を行い、ステークホルダーに対して適切な情報開示と説明責任を果たすことで、社会的な信用を獲得します。この信用は、資金調達を有利にしたり、優秀な人材を惹きつけたり、新たなビジネスチャンスを呼び込んだりと、企業の成長を加速させる強力なエンジンとなります。つまり、ガバナンスは、内部統制によって築かれた信頼を、企業価値という形で最大化していくための戦略的な枠組みなのです。

ガバナンスの実現に、有効な内部統制は不可欠

ここで重要なのは、両者の序列です。優れたガバナンスは、必ず有効な内部統制を前提としています。 いくら立派な経営戦略を取締役会で議論しても、現場の業務プロセスが統制されておらず、信頼できるデータが上がってこなければ、その意思決定は砂上の楼閣に過ぎません。逆に、内部統制がしっかりしていても、それを監督し、より大きな企業価値向上へと繋げるガバナンスの視点がなければ、組織は内向きになり成長が鈍化してしまうでしょう。ガバナンスと内部統制は、まさに企業の持続的成長を支える車の両輪なのです。

ガバナンスの土台を築く、内部統制の目的と構成要素

ガバナンスが「経営の監督」という大きな枠組みであるのに対し、内部統制はその実効性を担保するための具体的な仕組みです。ここでは、内部統制が何を目指し(目的)、何から成り立っているのか(構成要素)を理解することで、両者がいかに密接に連携しているのかを明らかにします。

内部統制が達成すべき「4つの目的」とガバナンスへの貢献

内部統制は、以下の4つの目的を達成するために整備・運用されます。これらは単なる業務改善目標ではなく、それぞれがガバナンスの健全性に直結しています。

  1. 業務の有効性及び効率性
    経営資源を無駄なく活用し、事業目的を達成することです。これが担保されて初めて、経営陣はガバナンスの観点から「より少ない資源で、より大きな企業価値を生み出す」という戦略的な議論に移行できます。
  2. 財務報告の信頼性
    これはガバナンスの根幹です。取締役会が正確な経営判断を下すためには、その判断材料となる決算情報が絶対に信頼できるものでなければなりません。内部統制は、その信頼性を足元から支える役割を担います。
  3. 事業活動に関わる法令等の遵守
    コンプライアンスの徹底です。法令違反は企業の存続を揺るがす最大のガバナンス・リスクであり、内部統制はそれを防ぐための具体的な防衛線となります。
  4. 資産の保全
    不正や誤謬から企業の資産を守ること。これも、株主から預かった資産を適切に管理・運用するという、ガバナンスにおける経営陣の基本的な責務を果たすための大前提です。

内部統制を機能させる「6つの基本的要素」

上記の4つの目的は、以下の6つの要素が有機的に連携することで実現されます。これらは、ガバナンスという大きな理念を、日々の業務レベルで実践するための具体的な「道具立て」と考えることができます。

  1. 統制環境
    企業の倫理観や誠実性、経営者の意向など、組織全体の気風を決定づける最も基礎的な要素です。これがなければ、どんな精緻なルールも形骸化してしまいます。
  2. リスクの評価と対応
    目標達成を阻害するリスクを識別・分析し、適切な対応策を選択するプロセスです。これにより、ガバナンスが対処すべき経営上の重要リスクが明確になります。
  3. 統制活動
    権限の付与や職務の分掌、承認プロセスといった、具体的な管理活動です。経営の意思決定が、現場で正しく実行されることを担保します。
  4. 情報と伝達
    必要な情報が組織内外に正しく伝えられ、関係者間で共有される仕組みです。透明性の高いガバナンスに不可欠な血流とも言えます。
  5. モニタリング
    内部統制が有効に機能しているかを継続的に評価・是正するプロセスです。これにより、内部統制の有効性が自己満足に終わることを防ぎます。
  6. ITへの対応
    業務を支えるITシステムの適切な利用と統制です。現代の内部統制において、その実効性を左右する重要な要素です。

内部統制の4つの目的、そして6つの基本的要素(COSOフレームワーク)について、より深く理解したい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

内部統制の強化が、いかにしてガバナンスを支えるか

内部統制の目的と要素を理解すると、それがガバナンスにとっていかに重要であるかが見えてきます。内部統制を強化する具体的な活動が、ガバナンスという大きな枠組みを実質的に支えているのです。

信頼性の高い財務報告が、健全な経営判断を可能にする

ガバナンスの中核を担う取締役会が最も重要な責務の一つは、企業の財産状況を正確に把握し、それに基づいて経営判断を下すことです。内部統制によって財務報告の信頼性が確保されていれば、取締役会は正確なデータに基づいた議論ができます。例えば、売上や利益が正確に計上されているという前提があるからこそ、新たな投資の是非を判断したり、不採算事業からの撤退を決定したりできるのです。もし財務データが信頼できなければ、ガバナンスの根幹である経営判断そのものが揺らいでしまいます。

業務上のリスク管理が、戦略的な意思決定を促進する

企業が直面するリスクには、日々の業務から生じる「業務上のリスク」と、市場の変化や競合の動向といった「戦略的なリスク」があります。内部統制は、主に前者の「業務上のリスク」を管理・低減させる役割を担います。例えば、製造プロセスの品質管理を徹底することで製品リコールのリスクを減らし、情報セキュリティ対策を講じることで情報漏洩のリスクを減らします。このように業務レベルのリスクが適切にコントロールされていれば、取締役会はより重要度の高い「戦略的なリスク」の議論に集中でき、より大胆かつ的確な意思決定を促進することができます。
※具体的な内部統制の強化策については、こちらの記事もご参照ください。

ガバナンスと内部統制を機能させる「仕組み」の作り方

これまで見てきたように、ガバナンスと内部統制は企業の健全な成長に不可欠な両輪です。しかし、これらの仕組みを構築しても、多くの企業が共通の課題に直面します。それは、仕組みを「実効性あるもの」として動かし続けることの難しさです。

なぜルールや体制だけでは不十分なのか?「形骸化」の罠

内部統制のルールを文書化し、ガバナンス体制を組織図に落とし込んでも、日々の業務がExcelによる手作業や、部署ごとに分断されたシステム(情報のサイロ化)に依存していては、その実効性は著しく損なわれます。例えば、販売部門の売上データと経理部門の請求データが一致しているかを確認するのに、担当者が手作業で突合しているようでは、ミスや不正の発見は困難であり、多大な工数がかかります。これでは、承認プロセスやモニタリングといった統制活動が形骸化してしまい、その上で議論する取締役会も、遅れて出てくる不正確な情報をもとに判断を下さざるを得ません。

【訴求】ERPが実現する「統制が組み込まれた」経営基盤

この「手作業と情報のサイロ化」という根深い課題を解決し、内部統制とガバナンスを実効的に機能させる経営基盤こそが、ERP(Enterprise Resource Planning)です。ERPは、会計、販売、購買、在庫といった企業の基幹情報を一つのシステムで一元管理します。

ERPを導入することは、単なるシステム刷新ではありません。それは、内部統制そのものを業務プロセスに組み込む(ビルトインする)ことに他なりません。例えば、システム上で設定された承認ルートを経なければ発注ができない「ワークフロー機能」は「統制活動」を自動化します。役職に応じてデータへのアクセス権限を厳密に設定できる「権限管理機能」は「統制環境」を強化します。そして、すべての操作履歴が記録される「監査証跡機能」は「モニタリング」を容易にします。

このようにERPは、内部統制を人の頑張りに頼るものから、システムで担保された仕組みへと昇華させます。そして、その信頼性の高いリアルタイムな情報を経営陣に提供することで、ガバナンスの中核である迅速かつ的確な意思決定を強力に支援するのです。
※ITを活用した内部統制のポイントや、内部統制システムそのものについては、以下の記事でさらに深掘りしています。
関連記事:ITを活用した内部統制強化とは?リスク低減と業務効率化の実現方法を解説
関連記事:内部統制システムとは?効率的な管理を実現するシステムの役割

まとめ

本記事では、「ガバナンス」と「内部統制」という、企業経営における二つの重要な概念について、その違いと密接な関係性を解説してきました。

改めて要点を整理すると、ガバナンスは「経営者を監督する」ための大きな枠組みであり、内部統制はそのガバナンスを実効的に機能させるための「具体的なルールや業務プロセス」です。内部統制という強固な「守り」の土台があってこそ、ガバナンスという「攻め」の企業統治が機能し、持続的な企業価値の向上が実現します。

そして最も重要なことは、ガバナンスはルールや組織図といった「形」だけでは機能しないということです。それを実務レベルで支え、実効性のあるものにするためには、ERPを中核とした強固な「経営基盤」の構築が鍵を握ります。

本記事が、貴社のガバナンスと内部統制のあり方を見つめ直し、より強固な経営体制を築くための一助となれば幸いです。

ストーリーでわかる!ERP基礎知識と導入のポイント
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