SAP HANAとは?SAP S/4HANAとの違いやメリットを解説

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この記事で分かること

  • SAP HANAとは何か、特徴や仕組み
  • SAP HANAとSAP S/4HANAの違い
  • SAP HANAを導入するメリット
  • SAP HANAの導入事例

SAP HANAは、SAP社が提供するデータベースシステムです。データの高速処理とリアルタイム分析に優れ、大規模データ解析やSAP S/4HANAのERP基盤として利用されています。業務効率化や迅速な意思決定にあたっては、SAP HANAのようなデータベースシステムの活用がポイントです。

本記事ではSAP HANAの概要、特徴、名称が類似するソリューションである「SAP S/4HANA」との違い、SAP HANAを導入するメリットや企業の導入事例を解説します。

SAP HANAとは?特徴を解説

SAP HANA(エスエイピー ハナ)とは、ドイツのSAP社が提供するデータベースシステムです。データを主にメインメモリ上で処理するインメモリデータベースを採用しています。

通常のデータベースがハードディスクやSSD上でデータを処理するのに対し、SAP HANAはデータをメインメモリ上で管理・処理します。そのため、従来のデータベースが抱えていた、ハードディスクへの書き込みや変更処理の長時間化という課題を、高速なデータ処理で克服しています。

ほかにもどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

SAP HANAの歴史

SAP HANAは、SAPが開発したインメモリ型のデータベースで、現在はSAPの基幹システムを支える土台になっています。SAPのERPの進化とともに、役割が広がってきました。

時期 出来事
2010年 SAP HANAを発表
2015年2月 SAP HANA上でのみ動くERP、SAP S/4HANAを発表
2016年11月 SAP HANA 2を発表
2019〜2020年 クラウド版のSAP HANA Cloudを提供開始

最初はデータを高速に分析するための基盤として登場し、S/4HANAの登場で、ERPそのものを動かすデータベースになりました。

インメモリ型データベース

SAP HANAの特徴の1つが、インメモリ型データベースであることです。インメモリデータベースとはメインメモリ(RAM)上にデータを保持し、処理を完結させるデータベースを指します。

ハードディスクやSSDなどの補助記憶装置にデータを保持するという従来の方法に比べ、処理の高速化を実現したことは大きな利点です。これにより、データの分析・表示にかかる時間や各種処理の時間の短縮が期待できます。

カラム型のデータベース

SAP HANAは、従来のロー(行)指向型ではなく、カラム(列)指向型のデータベースを採用しています。カラム(列)指向型を採用することで、高いデータ圧縮効率を実現しています。

また、ストレージ使用量を削減し、高速なデータ処理が可能になる点も特徴です。

統合管理型プラットフォーム

SAP HANAは分析処理やアプリケーションを1つのプラットフォームで実現できます。リアルタイムで収集されるデータを活用することで、ビジネスの高速化や最適化の推進が可能です。

また、全てのデータをメモリ上に保持するインメモリデータベースを基盤としています。そのため、リアルタイムに処理されるデータを用いて、機械学習で分析・活用することも可能です。

クラウド・オンプレミスの両対応

SAP HANAはオンプレミスとクラウドの双方での利用に対応しています。

オンプレミス型とは、サーバーやハードウェアを自社内で運用する形態のことです。自社の要件に応じてシステム環境やセキュリティ対策を設計しやすい点が特徴です。

一方で、クラウド型は自社でサーバーを用意せず、インターネットを利用してデータ保存やシステム運用を行う仕組みです。初期費用を抑えやすく、導入期間も短くしやすい傾向にあります。

SAP HANAは企業の状況や目的により、オンプレミスとクラウドから選択できます。どちらの方法にもメリットデメリットがあるため、自社に最適な方法を選ぶと良いでしょう。

従来のデータベースとの違い

SAP HANAと従来のデータベースの大きな違いは、データを置く場所と並べ方です。従来のデータベースはデータをディスクに保存して行単位で扱うのに対し、SAP HANAはデータをメモリ上に置き、列単位で扱います。

項目 従来のデータベース SAP HANA
データを置く場所 ディスク(HDD・SSD) メインメモリ
データの並べ方 行単位(行指向) 列単位(列指向)が中心
業務処理と分析 別々のシステムで行うことが多い 1つのデータベースで両方を行える
集計用のデータ 分析用に集計テーブルを別に作る その都度、元のデータから集計できる
データの容量 圧縮が効きにくい 列単位のため圧縮しやすい

業務処理と分析を1つのデータベースで行える

従来は、受注や会計などの業務処理(OLTP)と、売上分析などの分析処理(OLAP)を別々のシステムで行うのが一般的でした。分析用のシステムには夜間にまとめてデータを移すため、分析できるのは前日までのデータになります。

SAP HANAは両方を1つのデータベースで処理できるため、入力されたばかりのデータもすぐに分析に使えます。これがリアルタイム経営を支える仕組みです。

集計用のテーブルが不要になる

従来のデータベースでは、分析を速くするために、あらかじめ集計したテーブルを別に用意していました。データが二重に持たれるため、管理の手間と容量が増えます。

SAP HANAは元のデータから高速に集計できるため、集計用のテーブルを持つ必要が減ります。データの構造がシンプルになり、S/4HANAでもこの考え方がデータモデルの簡素化につながっています。

SAP HANAの提供形態

SAP HANAは、自社で運用するオンプレミス版と、SAPが運用するクラウド版から選べます。自社でサーバーを管理するか、運用をSAPに任せるかが主な違いです。

提供形態 特徴 向いている企業
オンプレミス版 自社またはデータセンターのサーバーで運用する。認定されたハードウェアを使う 自社で細かく管理したい、既存の設備を活かしたい企業
SAP HANA Cloud SAPが運用するデータベースのサービス(DBaaS)。容量を必要に応じて増減できる サーバーの管理をなくしたい、必要な分だけ使いたい企業

SAP HANA Cloudは、現在SAP Business Data Cloudの一部として位置づけられており、SAPの業務データとAIを組み合わせて使う基盤にもなっています。最新の位置づけと機能はSAP公式サイトで確認してください。

SAP S/4HANAとは

SAP S/4HANAは、SAP HANA上で動くSAPのERP(統合基幹業務システム)です。会計、販売、購買、在庫、生産などの業務を1つのシステムで管理し、そのデータをリアルタイムで経営に活かせるように作られています。2015年2月に、SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の後継として発表されました。

SAP S/4HANAの特徴

S/4HANAの特徴は、SAP HANAの高速な処理を前提に、システムの作りそのものが見直されている点です。

特徴 内容
データ構造がシンプル 集計用のテーブルを持たず、元のデータから直接集計する
リアルタイムで分析できる 入力されたデータをすぐに経営指標や分析に使える
画面が使いやすい SAP Fioriにより、ブラウザやスマートフォンから役割ごとの画面で操作できる
AIを業務に組み込める SAPのAIアシスタント(Joule)などを業務の中で使える

SAP ECCからS/4HANAへのスムーズなアップグレード手順

SAP HANAとSAP S/4HANAの違い

SAP社はSAP HANAと名称の類似する「SAP S/4HANA(エスエイピー エスフォーハナ)」というソリューションを提供しています。どちらにも同じ「HANA」という名称が含まれていますが、両者はまったく別のソリューションです。

SAP HANAとSAP S/4HANAのおおまかな違いは、以下の表に示すとおりです。

項目 SAP HANA SAP S/4HANA
構築環境 クラウド/オンプレミス/ハイブリッド クラウド/オンプレミス/ハイブリッド
メイン機能 データベース SAP HANAを基盤としたERPソリューション
その他の機能 分析処理
アプリケーション開発
アナリティクス
データ仮想化
業務プロセスの統合
リアルタイム分析
SAP Fioriによる高度なUX

具体的にどのような点で異なっているのかを解説します。

役割が異なる

SAP HANAとSAP S/4HANAでは、システムとしての役割が異なります。SAP HANAは、大量のデータを高速に処理・分析するためのデータベースです。

一方、SAP S/4HANAは、SAP HANAをデータベース基盤として利用するERPです。財務会計や販売、購買、生産など、企業の基幹業務を統合的に管理できます。

利用目的が異なる

SAP HANAは、データの保存・処理・分析を高速化するための基盤として利用されます。

一方、SAP S/4HANAは、企業の業務プロセスを統合し、経営や現場の業務を支援することを目的としたERPです。

SAP S/4HANAはSAP HANAの性能を活用している

SAP S/4HANAはSAP HANAを基盤としているため、高速なデータ処理を活用できます。また、従来のSAP ERPと比べてデータモデルがシンプルになっており、SAP Fioriによる新しいUIも採用されています。

SAP ERP 6.0ユーザーとSAP HANAの関係(2027年問題)

SAP ERP 6.0(ECC 6.0)を使っている企業にとって、SAP HANAへの移行は避けて通れません。後継のSAP S/4HANAはSAP HANA上でしか動かないためです。

SAP ERP 6.0の標準保守は2027年末に終わります。S/4HANAへ移行する場合は、データベースもSAP HANAへ移すことになります。今ほかのデータベースでSAP ERP 6.0を動かしている企業は、データベースの移行も含めて計画を立てる必要があります。

保守期限と対策の詳細は、以下で解説しています。

SAP HANAのメリット

インメモリ・カラム型のデータベースで、分析処理やアプリケーション開発も可能であるSAP HANAを導入することで、企業はどのようなメリットを享受できるのでしょうか。

データ処理が高速になる

SAP HANAは従来に比べ高速なデータ処理が可能です。オンライン分析処理とオンライントランザクション処理を統合することにより、高速処理を可能にしています。

データ処理が高速になることで、業務の効率化が期待できます。また、迅速な意思決定の支援にもつながるでしょう。

データ分析を高度化できる

SAP HANAを活用することで、構造化データだけでなく、非構造化データを含むデータを処理・分析し、データ分析の高度化につなげられます。分析精度の向上や、新たなインサイトの発見につながるでしょう。

非構造データとは、文書や画像、動画のように特定の構造をもたないデータのことです。このようなデータから必要な部分だけを取り出し、分析に使用することで、より幅広いデータを分析に活用できます。

システム運用の最適化ができる

部門ごとに運用・管理していた業務システムを一元管理することで、システム運用の最適化ができます。データ連携がスムーズになり、煩雑だった処理を解消できるでしょう。

また、データ圧縮機能などを活用することで、メモリ容量を節約しながらデータを効率的に管理できます。管理コストの削減にもつなげられるでしょう

意思決定の速度向上につながる

経営陣の意思決定に必要なデータを迅速に処理・分析できるため、意思決定の速度向上につながります。DX化に伴い情報量も増加するため、必要なデータを即座に取り出せる仕組みは重要です。

SAP HANAはリアルタイム性のある情報を収集できる点もポイントです。品質の高いデータを集めることで、より迅速な意思決定を支援します。

SAP HANAの導入事例

SAP HANAはデータベースの最適化や業務効率の向上など、さまざまな用途で多くの企業に利用されています。自社の課題を解決するソリューションとして、SAP HANAを導入した企業の事例を紹介します。

Hyundai Elevator 社の事例

エレベーターなどの産業機械の製造を行うHyundai Elevator社では、データを管理するシステムが部署や地域ごとに孤立し、連携できないサイロ化された状態となっていました。

そのため、重要な意思決定の根拠となるデータの正確性やリアルタイム性が欠如しており、意思決定への影響が課題となっていました。同社は課題解決のために統合されたデータベース基盤の構築を目指し、SAP HANA Cloudの導入を決定します。

導入の際は、SAP HANAをアプリケーションの1つであるSAP Datasphereとも連携させることで、外部データソース、ERPシステム、購買管理システムを接続したデータアクセスの一元化を実現しました。

一元化によりデータの分析や視覚化、レポートなどを行うSAP Analytics Cloudともスムーズに連携でき、データのトレンドやインサイト分析のリアルタイム性も向上しました。

その結果、課題となっていたデータの整合性と正確性が改善され、分析にかかる時間の短縮も実現しています。

同社はSAP HANAの導入により、部門や地域ごとに独立した非効率なデータ基盤から脱却し、データの量、品質、用途を組み合わせたデータによる価値創出の基盤の構築に成功しています。

Centrica 社の事例

電力・エネルギー事業を手掛けるイギリスのCentrica社では、小規模発電を行う顧客が発電したエネルギーを買い取る国内の取り組みであるSmart Export Guaranteeを運用する仕組みに課題を抱えていました。

具体的には、定期保守の際にシステムをオフラインにしなくてはならないことや、人材の不足、顧客の管理コストが課題となっていたのです。

同社はこのような課題を解決するため、拡張性の高いクラウドデータベースへの以降の手段として、他社データベースからSAP HANA Cloudデータベースへの移行を選択しました。

SAP HANA Cloudの導入により、同社では請求シミュレーションなどの操作に必要なデータへのアクセスデータ処理手順の高速化が可能になりました。

またSAP HANA Cloudから取得した請求データを、支払い処理や顧客への連絡文書作成などの関連業務に連携するフローの円滑化も実現しました。

結果として、クラウド移行により約2,600万円のコストと毎年約540万円のハードウェア費用の削減に成功しました。業務ダウンタイム時間も78%削減し、異常なシステムエラーの発生率も13.5%低下、顧客からのクレームも48%削減しています。

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SAP HANAを導入するときの注意点

SAP HANAは高速に動く一方で、メモリを多く使うため、導入前の見積もりと準備が重要です。主な注意点は3つあります。

必要なメモリ量を正しく見積もる

SAP HANAはデータをメモリ上に置くため、必要なメモリ量が費用と性能を左右します。データ量の増え方も見込んで見積もらないと、稼働後に容量が足りなくなります。SAPが提供するサイジングのツールや、導入パートナーの支援を使って見積もるのが一般的です。

既存のアドオンやデータの移行を確認する

ほかのデータベースからSAP HANAへ移る場合、データベースに依存した処理やアドオンが、そのままでは動かないことがあります。移行前にアドオンを棚卸しし、修正が必要なものを洗い出しておきます。

運用の体制を決めておく

オンプレミス版では、バックアップやパッチの適用などを自社で行う必要があります。運用を任せたい場合は、SAP HANA Cloudや、RISE with SAPのようなクラウドでの提供形態も検討します。

まとめ

SAP HANAとは、データをメインメモリ上で管理・処理するマルチモデルデータベースです。従来よりもデータ処理を高速に行うことができるようになりました。

これにより、以下のようなメリットが期待できます。

  • 高速なデータ処理による業務効率化
  • データ分析の精度向上
  • システム運用の最適化
  • 迅速な意思決定

導入企業の事例からも、サイロ化したデータベースの統合、データアクセスの円滑化やリアルタイム分析、クラウド移行によるシステム運用効率の向上やコスト削減など、企業のさまざまな課題解決に活用できることがうかがえます。

これらの課題を抱えている企業にとって、SAP HANAの導入は有効な解決策となるでしょう。次世代データベースへの刷新を考えている企業は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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よくある質問

SAP HANAとは何ですか?

SAP HANAは、SAPが開発したインメモリ型のデータベースです。データをメモリ上に置き、列単位で扱うことで、大量のデータを高速に処理・分析できます。SAPのERPであるSAP S/4HANAの土台として使われています。

SAP HANAとSAP S/4HANAの違いは何ですか?

SAP HANAはデータベース、SAP S/4HANAはSAP HANA上で動くERPです。SAP HANAがデータを保存して処理する土台で、S/4HANAは会計や販売、生産などの業務を行うアプリケーションです。

SAP HANAはSAP以外のシステムでも使えますか?

使えます。SAP HANAはデータベースなので、SAP以外のアプリケーションのデータを扱うこともできます。対応範囲や条件は製品や契約によって異なるため、SAPまたは導入パートナーに確認してください。

SAP ERP 6.0を使っていますが、SAP HANAへの移行は必要ですか?

S/4HANAへ移行する場合は必要です。S/4HANAはSAP HANA上でしか動かないためです。SAP ERP 6.0の標準保守は2027年末に終わるので、データベースの移行も含めて早めに計画を立ててください。

SAP HANAの費用はどのくらいかかりますか?

費用は、必要なメモリ量、オンプレミスかクラウドか、契約の形態によって大きく変わります。一律の目安はないため、データ量と使い方を整理したうえで、SAPまたは導入パートナーに見積もりを依頼するのが確実です。

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